新たな仲間
洞窟を出て数時間が経ちオレ達五人はルーベルクへと帰ってきて、冒険者ギルドに戻って来ていた。
「リュウガさん早いですね。もしかしてもう依頼が終わったんですか?」
「ああ……赤狼の牙十本だ」
オレは依頼完了を報告する為に空間収納から依頼の素材を取り出した。
「はい、確かに赤狼の牙十本ですね。……それではこちら報酬の金貨3枚、銀貨2枚となっています」
「うん、ありがとうエルナ」
オレ達は報酬を受け取った。日本円で言うと約三万二千円。一日でこれだけ大金を稼げるのはかなり凄い事だ。
本来なら殆どの冒険者は依頼期限のギリギリまで掛かってしまうのだがオレ達は僅か半日も掛からず依頼をこなしたのだった。
ちなみにこの受付の女性の名前はエルナ。毎回彼女がオレ達の担当をしてくれているので何回も来ていたら自然と名前を覚えていたのだった。
「所でそちらの方は?」
「ああ、彼女はリリス。洞窟で赤鬼に襲われていた所を助けたんだ」
「……そうなんですね。まさかその赤鬼は倒したんですか?」
「ああ、真っ二つにしてやった」
一応リリスもこのギルドで依頼を受けているのだがエルナは担当した事がなかったらしくリリスの事は知らなかったそうだ。
「それとリリスも俺達のパーティに入れたいんだが登録の方を頼みたい」
「はい、畏まりました」
しばらくすると手続きの方が終わり正式にリリスがオレ達のパーティ〈ノンスタンダーズ〉のメンバーとなった。
今回はリリスがオレ達と同じくEランクだったのでよかったのだがもしリリスがFランクだった場合はEランクの昇格試験を受ける必要があった。
「じゃまた明日も来る」
オレ達は今日は疲れていたので明日の午前中まではゆっくりしてギルドには昼から来ようと思っていた。
「ええ。お待ちしております」
外に出ると辺りは太陽が沈んですっかり暗くなっていた。
オレ達はギルドを出て宿に向かって歩きながら話をしていた。
「で、宿の部屋はどうする?」
「昨日の時点で部屋はもう空いて無かったよな」
「まあ最悪の場合、来綺と俺が一緒の部屋で来綺が床で寝ればいいしな」
「何で俺が床で寝る事になってるんだよ!」
確かに部屋についての問題がある。リリスを仲間にしたのはいいが部屋が無いとなってはしっかりと休息を取れない。
そうこう話している内に宿へと着いた。オレ達は受付の方へと赴いた。
「部屋を追加でもう一部屋借りたいんだが空いてるか?」
「すいません。今は空いている部屋がもう無くて」
どうやら予期していた通り部屋が昨日と同じく一部屋も空いていなかった。
こうなってしまうとオレと来綺が一人部屋を一緒に使うしか方法が無くなってしまった。
「ちっ、仕方ない俺と来綺が同じ部屋になるしか無いな」
「そのようだな」
「ベッドは俺が使う。来綺は床で寝ろ」
「はぁ〜、絶対やだね。俺はベッドで無いと寝られないだよ」
オレと同じく来綺もベッドは譲れないそうだ。これは後で長いベッド争奪戦が繰り広げられそうだ。
「……うん、どうしたリリス」
来綺と言い合っているとリリスがオレの左手を強く握ってきた。
「私、リュウガと一緒の部屋がいい」
「……は……な…何言ってるんだ?リリス」
何とリリスがオレと一緒の部屋が良いと言い出したのだ。これにはさすがのオレも困惑していた。
「ヒュー。リュウガにもようやく春が来たのね」
「よかったじゃねぇか」
「何で俺だけ」
「なっ!そっそんなんじゃねぇーだろ」
この状況を瑠璃と宏太は楽しんでいた。彼女がいない来綺は一人悔しい表情を浮かべていた。
「まあ、別にいいんだけど本当にいいのか……俺と一緒の部屋で」
「うん。一人は少し怖いの。だからリュウガと一緒がいい」
その言葉を聞いてオレも流石に悟った。
あんな怖い目にあった後だ。しかももう少し助けが遅かったら殺されていたかもしれないのだ。まだ少し不安な気持ちが残っているのだろう。
「じゃあ分かった。それじゃあリリスは俺と一緒の部屋な」
オレが了承するとリリスは満面の笑みを浮かべ、オレの腕に抱きついて来た。
「そ、それじゃあリリスの歓迎会って事で今日はご馳走でも食べに行くか」
そう言うと皆「やったー」と声をあげた。
歓迎会の方は大いに盛り上がり五人共ご馳走をたらふく食べた。代金の方はかなり高くなったが今日の依頼分で何とか払いきれた。
そしてオレ達はそれぞれ宿の部屋に戻っていた。
「リリス先に風呂入っていいぞ」
「うん、じゃあお先に」
そう言うとリリスは風呂に入って行った。
(はぁ〜、まじでリリスと一緒の部屋で寝るのかよ)
これまで同年代の女性とあまり関わりがなかったオレはこういった場合どうすればいいのか分からないでいた。
オレは気を紛らわす為にいつも寝る前にやっている能力の確認を行っていた。
数十分後、リリスが風呂から上がって来た。
「リュウガ、風呂空いたよ」
「ああ」
オレは着替えを持って風呂に入った。風呂場に入りオレは手で胸を抑えながら顔を赤らめていた。
(やばい!……リリスが可愛いすぎる)
ここで初めてオレは自分がリリスに対して抱いている気持ちについて知った。そして初恋という感情に戸惑っていた。
数十分後、オレも風呂から上がった。風呂から上がるとリリスは椅子に座りながら待っていた。
「……リリス、待っててくれたのか?」
「うん、無理言って部屋を一緒にしてもらったのに先に寝るのは流石に出来ないから」
「そんなの気にしなくていいのに」
オレは風呂に浸かって多少落ち着いたのか何とか平常心を保てていた。
「よし、じゃあもう寝るか。俺は適当に床で寝るからリリスがベッドを使ってくれ」
「嫌、それは駄目。リュウガも一緒にベッドで寝て」
そう言うとリリスはオレの腕を取りベッドの方に引っ張って行こうとした。
「いやいや、流石にそれはまずいだろ」
オレはリリスの誘いを断った。
しかし、リリスはつぶらな瞳でオレのことを見つめ続け訴え掛けた。
「……ぐ……分かった、分かったから。一緒にベッドで寝るから」
流石のオレも惚れた女にあんな可愛い顔で見つめられ続けられたら断る事が出来なかった。
これから先もリリスには逆らえない。そんな気がしてならなかった。
オレは部屋の明かりを消して、リリスの入っているベッドへと体を潜り込ませた。
(こんな状況で寝れるわけねぇ〜だろ)
オレはこの状況、今までの人生の中で一番緊張しているかもしれない。
「ねぇリュウガ」
「うん、何だ?」
「リュウガ達は召喚者なんでしょ?リュウガ達のいた世界ってどんな所だったの?」
「ああ、そうだな。俺達のいた世界はそれはそれは平和な所だったよ」
そう言うとオレは話し出した。前の世界は魔力が無かった事、食べ物やこの世界には無い物の事などを話した。
およそ三十分程話したが、リリスは興味津々そうな顔で話しを聞いていた。
「まあ、大体こんな所かな。俺達のいた世界は」
「ねぇリュウガ。私もいつかその世界に行ってみたくなった」
「……そうか。いずれ連れてってやるよ」
「本当?約束だよ」
「ああ」
リリスは話しを聞いてオレ達のいた世界に行ってみたくなったようだった。
そしてオレはこの約束を必ず果たすと誓った。本来なら元の世界より今の世界にいる方が楽しいがリリスと一緒なら向こうでも楽しくやっていけるそんな気がした。
ほどなくして二人は眠りに着いた。明日は午前中は休みにしているが昼からはまた冒険者としての活動だ。しっかりと身体を休めておきたい。




