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【WEB版】無自覚な天才魔導具師はのんびり暮らしたい【コミカライズ連載中】  作者: 日之影ソラ
第三章

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63.呪いを砕け

「ラプラス!? 彼らがこの街に潜んでいるというのですか?」


 屋敷に到着して、私たちは領主様に事情を説明する。さすがにラプラスの存在は知っていたらしく、ひどく驚いていた。

 夜分遅くに突然やってきた私たちを快く招き入れてくれた領主様だったけど、ラプラスの名前を聞くと焦り、険しい表情を見せる。


「間違いありません。この文様はラプラスのものです。街に呪いをバラまいていたのはラプラスの構成員です」

「なんと……私が気づかぬ間に、恐ろしい組織が入り込んでいたなんて……」


 領主様は私とネロ君に視線を向け、改まって頭を下げる。


「お二人とも、見つけていただき感謝いたします」

「い、いえ、私は何もしていないので」

「捕らえることもできなかったしな。それに潜り込んでいる構成員は一人ではない」

「それでも、被害がこれ以上出る前に一つでも止められたのなら、それは大きな意味があります。領主として感謝します」


 領主様は深々と頭を下げている。本当に心から、街の人たちの安全を考えてくれている優しい領主様でホッとした。

 領主様は頭を上げて、真剣なまなざしでレストさんに言う。


「もちろん私も協力させていただきます。街にいる騎士たちに状況を伝達し、周辺の警備を強化しましょう」

「我々も今夜は警備に参加します」

「怪しい奴がいたら片っ端から捕まえればいいんだろ! ちまちま探すよりそっちのほうが性に合ってるぜ」

「やり過ぎちゃダメよ? また自爆するかもしれないんだから」

「恐ろしいっすよね。捕まったら自爆って」

「本人の意思ではない。そういう風に仕込まれている。おそらくは、あれも呪いの一種だ」


 ネロ君は軽く説明し、私に視線を向ける。


「フレア、ボクたちは警備には参加しない」

「え、どうして?」

「お前の役割はなんだ? 魔導具師だろう?」

「あ……そうだね」


 今ここで私がやるべきことは、ラプラスの構成員を捕まえることじゃない。私には戦うことはできないけど、この力で呪いに対処できる。


「ガルドさん、レストさん! 私は呪いを解呪する方法を探します」

「そのつもりでお願いしようと思っていました」

「おう! そうしてくれ。ラプラスのほうは俺たちに任せろ。おいネロ、ちゃんとフレアを守ってやれよ」

「言われるまでもない」

「よーし! そんじゃさっそく行動開始だ! フレアとネロ以外は街の騎士と協力して包囲網を作るぞ! レスト!」

「わかっていますよ。配置はこちらで決めておきます」


 それぞれの役割が決まったことで、私たちは行動を開始する。

 ガルドさんたちは屋敷に残り、私とネロ君は宿泊している部屋に戻ることにした。あそこに王都から持ってきた魔導具用の素材がある。

 一旦素材をかき集めて、私たちは領主様の屋敷に戻る。

 領主様の屋敷は広く、倉庫には使えそうな素材もいくつかあるそうで、自由に使ってもいいという許可を貰った。

 街の人たちを救うには、魔導具も数が必要になるだろうし、可能な限り広い部屋で作りたかったからちょうどいい。

 私たちは素材を運び、屋敷で作業を開始する。

 その頃にはちょうど日付が変わっていた。

 作業開始からすぐ、私は手を止めて頭を動かすことになる。


「呪いを解呪するって、実際どうすればいいのかな」

「呪いの解呪は大きく二つ。呪いをかけた本人を見つけ出し、呪いを相手に返す。呪いの根源を絶つ方法だな。もう一つは呪いそのものを強引に剥がすことだが、これはオススメしない。無理に解呪しようとすれば、逆に進行を速めてしまう危険がある」

「じゃあ解呪には、犯人を見つけるしかないってこと? それだと私たちにできることって……」


 ガルドさんたちがラプラスの構成員を見つけ出し、捕えるのを待つしかないということになってしまう。

 殿下と同じ症状の人もいるみたいだし、腕輪を量産して症状を抑えることくらいはできるけど、対処療法でしかない。

 それに同じ症状の呪いだけではなく、複数種類の呪いが街には広まっている。

 予測を立てるほど、私にできることはないように思えてしまった。そんな私に、ネロ君は素材をテーブルに並べながら説明する。


「今回に限れば、呪いの中心は人間ではない」

「え? どういうこと?」

「これだけ大規模、広範囲に呪いをかけている。実行役はただの枝葉だ。根本はおそらく別にあるだろう」

「それって、魔導具みたいに中心になっている装置があるってこと?」

「そういうことだ。装置かどうかはわからないがな。呪いは儀式的な意味合いが強い。祭壇……あるいは象徴がどこかにあるはずだ」


 呪いも元をたどれば魔法の一種ではある。魔導具師である私が、仮に呪いも扱うことができたら、呪いを込めた魔導具も作り出せるだろう。

 同じ要領で、呪いの根源を付与した何かを作り、それを街のどこかで隠している。ラプラスの構成員は、呪いを広げるための手足に過ぎない。

 ネロ君の予想が正しいとすれば、私たちの役目は一つだ。


「呪いの痕跡を辿ればいいんだね?」

「そういうことだ。俺でも呪いの気配には気づけても、正確な場所まではわからない。呪いの根源を見つける魔導具を作る。それから、呪いを封じ込める魔導具もいる」

「封じ込める?」

「そうだ。シンボルがあったとして、それを無暗に破壊すれば逆の呪いが拡散し、大惨事になる危険がある。呪いというのは複雑だ。シンボルの破壊が完全な発動条件だった場合の備えというわけだな」


 条件を満たすことで完全発動するのが呪いという力。私は殿下の一件で、ネロ君は自分自身の肉体で経験している。


「急ぐぞ。ボクたちにバレたことを奴らが察すれば、強硬手段に出るかもしれない」

「うん! 朝までには作ろう!」


 いつになく真剣に、少し焦りを感じながら作業を始める。

 幸いなことに、これまでの経験で呪いに関する予備知識は十分にあり、加えてネロ君という大魔法使いも一緒にいてくれた。

 私一人じゃ行き詰ってしまう作業も、ネロ君がサポートしてくれるおかげで何倍も早く、正確に作業が進む。


 五時間後――


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