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【WEB版】無自覚な天才魔導具師はのんびり暮らしたい【コミカライズ連載中】  作者: 日之影ソラ
第二.五章

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49.第一王子

 アクリスタ水路管理局、局長。

 彼の悪だくみは完成する手前で食い止められた。

 王都に連行された彼は容疑を認め、罪人として牢へ収監された。

 事件は大事になることもなく解決した。


「はぁ……」


 ただ一人、煮え切らない気持ちを抱く人物がいた。

 執務室で事後処理をするユリウスはため息交じりに呟く。


「結局ただの小悪党……呪いの一件とは無関係だったか」


 彼の脳裏によぎるのは、かつて自らを殺そうとした元貴族の言葉。

 

 よく覚えておいてください。

 貴方や貴方の国を狙う者は大勢いる。


 この国の裏側で巣食う巨悪。

 放置すれば王国最大の脅威になることは明白だった。

 しかしカインの失脚以降、特に目立った動きはない。


「奴の虚言だったのか。それとも……」


 何かを待っているのか。

 いずれにしても、警戒は怠るべきではないと判断する。

 彼女の安全のためにも。


 トントントン――


「どう――」


 最後まで言い切る前に、部屋の扉が開く。

 王子の部屋に許可を出す前に入る。

 非常に無礼な行為だが、この人物なら許される。

 なぜなら彼は――


「兄上?」

「久しぶりだな。ユリウス」


 同じ王子なのだから。

 第一王子クラウス・ユークリス。

 ユリウスの実の兄にして、次期国王候補筆頭。

 その容姿は兄弟らしく、ユリウスによく似ている。

 

「お戻りになっていたんですね」

「ああ。ついさっき戻ったばかりだ。お前のほうは忙しそうだが?」

「そうでもありませんよ」

「そうか? 相変わらず危ないことをしているそうじゃないか」


 ユリウスはピクリと反応する。


「なんのことやら」

「はははっ、相変わらず格好つけたがりだな」


 ユリウスは兄に、自分が影で親衛隊たちと何をしているのか伝えていない。

 あくまで彼の独断。

 もし失敗しても、兄や父への影響を最小限とするために。


「あまり無理はするな。お前は昔から、少々やりすぎるところがある。無暗に正義を振りかざせば、悪の反撃を食らうぞ」

「ははっ、それはよく知っていますよ」


 つい最近、体験したばかりのことだった。

 ユリウスとしても予想外のことだったのだ。

 自分が呪われることは。


「父上もお前のことは心配している。俺たちのために動いてくれるのは嬉しいが、自分の将来のことも考えろ」

「考えていますよ。最近は特に」

「そうなのか? だったらちょうどいい。お前にいい話を持ってきた」

「いい話?」

「縁談だ」


 ユリウスは両目を見開く。

 

「縁談?」

「ああ。お前も会ったことがある。姉妹国の姫、メリエール様だ。相手としてこれほど相応しい女性もいないだろう」

「それは……なぜ急に?」


 クラウスは首を傾げる。


「急なことではないだろう? 以前から話には出ていた。お前は成人を超えているんだ。そろそろ婚約者を立てるべきだと。俺が国王になれば、お前は第一王子となる。そうなれば国民のお前に対する期待は今以上になるだろう」

「……」

「なんだ不服か? 俺の目から見ても、申し分ない相手だと思うが? 性格、容姿、地位……どれもお前に合っている」


 ユリウスは思う。

 兄であるクラウスが言うのであれば、きっと正しいのだろうと。

 メリエール姫とは以前から面識がある。

 きらびやかなドレスがよく似合う女性。

 明るくお淑やかで、女性として魅力的な方だと思っている。

 だが、彼の心の奥に咲く笑顔の花は、違う名前をしていた。


「――兄上」


  ◇◇◇


 最近、新しい噂が聞こえてくる。


「聞いたか? 殿下が婚約するって」

「え? 縁談があるって話じゃなかったか?」

「そうか? 俺が聞いた話だと、もう縁談は終わって婚約する予定と」

「……」


 廊下を歩けばそんな噂が流れてくる。

 私はというと……。


「心ここにあらず、だな」

「え……」


 ネロ君に指摘されてしまった。

 私はハッと気づく。

 気づけば作業の手はずっと止まったままだった。


「仕事も手につかないとは、中々重症ではないか」

「……ご、ごめん」

「そんなに気になるなら、本人に直接聞けばいいだろう?」

「でも……殿下、最近忙しそうにしてるから」


 アクリスタでの一件以降、殿下とはあまり会えていない。

 事後処理が忙しかったり、私のほうも数日空けた分の仕事で手いっぱいだった。

 ようやく落ち着いてきた矢先、聞こえてきたのは先の噂だ。

 確かめたい気持ちもあるけど、正直怖い。


「やれやれ。聞けば一発で解決するというのに」

「そうなんだけど……」

 

 ネロ君は大きくため息をこぼす。


「沈んだ顔を見ていると、こっちまで気が滅入る。今から聞いてくるんだ」

「え、い、今から?」

「そうだ。さっさと聞いて楽になれ。できないというのなら、お前が王子に恋をしていることを大々的に宣伝して――」

「い、いますぐ行きます!」


 私は勢いよく席を立ち、研究室を飛び出した。

 閉まる扉の向こうで、ネロ君が呆れた顔をして笑っていた。

 彼の言いたいことはわかる。

 聞けば安心できるはずだと。

 噂は噂、殿下の心は……。


「見つけた」


 廊下の真ん中を塞ぐように、彼は立っていた。

 殿下……じゃない。

 似ているけど、目つきが少し鋭い。


「初めまして。フレア・ロースターさん。俺はクラウス・ユークリス、ユリウスの兄だ」

「クラウス殿下!?」


 ちゃんと話すのは初めてだ。

 こうして向かい合うのも。

 この人が……第一王子、殿下のお兄さん。


「少し話がしたい。付き合ってくれるかな?」

「……はい」

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― 新着の感想 ―
[一言] クラウスさまは、ユリウスとフレアを別れさせようとしているのかなぁ〰それとも・・(/ω\)ドキドキ!更新が待ちきれませんよぅ!
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