表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【WEB版】無自覚な天才魔導具師はのんびり暮らしたい【コミカライズ連載中】  作者: 日之影ソラ
第二.五章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

46/67

46.濾過装置

 局長さんの許可を得て、さっそく作業に取り掛かる。

 ガルドさんたち親衛隊の皆さんは、街の人たちに飲み水を配達する作業の手伝いをしてもらうことになった。

 私と殿下、それからネロ君が管理局に残っている。

 局長さんは自分の仕事があるからと、奥の部屋に入っていった。

 やっぱりこんな状況だから大変なのだろう。

 いち早く解決させないと。


「まず水の状態を確認します」

「待て。水に直接触れるな。それはボクがやろう」

 

 水路から水を汲もうとした私をネロ君が引き留めた。

 彼は透明な水を上から覗き込む。


「ボクの身体はゴーレムだ。毒も呪いもボクには通じない」

「局長さんの話だと触れるのは問題ないってことだったよ?」

「それでも、だ。念には念を入れておけ」


 確かにネロ君の言う通りかもしれない。

 今は触れても問題ないけど、毒の濃度が上がれば変わってくる。

 それに遅効性という可能性もある。

 ここはリスクのないネロ君に任せるのが最善だろう。


「お前はもう少し、他人を疑うことを覚えたほうがいいな」

「え?」


 ネロ君がぼそりと呟く。

 どういう意味か尋ねようとする私の横を通り過ぎて、彼は水路に右腕を突っ込んだ。


「ついでだ。水の状態もこのまま調べてやろう」

「そんなこともできるのか?」

「ボクを誰だと思っているんだ? かつて世界最高と謳われた大魔法使いだぞ? その程度のことできないほうがおかしい」

「自分で言うのか……」


 呆れる殿下を横目に、ネロ君は瞳を閉じる。

 水の状態を調べる装置はこの施設にもある。

 施設の設備を疑うわけじゃないけど、私も簡易的な調査用の魔導具は持ってきていた。

 それを使うつもりだったけど、ネロ君がいれば必要ないみたいだ。

 おそらく彼は魔導具に記された魔法と同質の魔法を使っている。

 一瞬だけ、水の中に入れた指先に魔法陣が光った。

 ネロ君が目を開ける。


「なるほどな」

「わかったのか?」

「……確かに毒素が紛れ込んでいる。しかし一種類ではないな」

「複数の毒素を混ぜ合わせているのか?」


 殿下の質問にネロ君は即答しなかった。

 視線を下方向でウロウロさせ、水路の端から端まで目で確認している。

 続けて管理局内の床、壁、天井を見ていく。


「お前たちは毒がどういうものか理解しているか?」

「毒は毒だろ? 人体にとって悪影響のある物質のことじゃないのか?」

「そうだ。一言に毒と言ってもその種類は様々。中には特定の条件下でのみ毒素として働くものもある。だが今回の例は……特殊ではあるな」

「なんだよ。勿体ぶるじゃないか」


 ネロ君は具体的な毒についての説明を避けている様子だった。

 殿下もそれに気づいている。

 しばらく待つが、彼は難しい表情をして口を開く。


「まだ不確定だ。ボクはもう少し調べる。お前たちは自分の仕事をしていろ」

「いや、だから毒の種類を」

「水から毒素を取り除くだけなら種類は関係ない」

「そうなのか?」


 殿下の視線が私に向けられる。

 私は頷き肯定して、説明をする。


「私が種類を調べたかったのは、毒素が紛れ込んだ原因を突き止めたかったからです。毒素を取り除くことができても一時的では意味がありませんから」

「そういうことだったのか。じゃあ、そっちはネロに任せて魔導具作りに入るか?」

「はい。それでいいんだよね? ネロ君」

「ああ、そうしてくれ。ただし、ボクと同じ部屋にはいるんだ。移動するときは必ず声をかけろ。わかったな?」


 いつになく真剣な表情を浮かべるネロ君に、私と殿下はそろって頷く。

 彼の反応を見ていると直感する。

 この街で起きている事態は、ただの自然現象ではなさそうだと。

 一先ず今は魔導具作りだ。


 これから作るのは濾過装置。

 水を綺麗にする装置で、この施設にも似たような魔導機関はある。

 それを使っても毒素はなくなっていない。

 だから、普通の濾過では意味がない。

 そこで私が考えたのは、水を正常な状態へと戻す魔導具だ。

 飲み水用に蓄えられたきれいな水。

 貯水タンクにある水が正常な状態だとするなら、流れる水の性質をそれと同じ状態にすればいい。

 

「そんな濾過聞いたことないぞ」

「私も試すのは初めてです」

「初めてなのか。一応確認するけど、大丈夫なのか?」

「もちろんです」


 これまで作ってきた魔導具の技術を応用すればいい。

 ちょっと素材が足りないかな?


「ネロ君、足りない素材があるから買いに行きたいんだけど」

「ん? 何が足りない?」

「えっと」


 私はネロ君に素材の種類と量を伝えた。

 

「街で揃えられると思うんだ」

「わかった。買い出しには同行しよう」

「ありがとう。ネロ君のほうは何かわかったの?」

「それなりに、な。あとで話そう」

 

  ◇◇◇


 素材の買い出しのために街へ出る。

 改めて街中を歩くと、王都とはまるで別世界だ。

 真っ白な建物は眩しくて、綺麗で。

 今は人通りも穏やかで静かだけど、賑わっている時を想像すると少し楽しい。


「殿下、やっぱり私が持ちますよ」

「大丈夫だ。というか重いぞ?」

「だ、だからですよ。殿下に重い荷物を持たせて歩くなんて」

「いいんだよ。力仕事は俺に任せて、フレアは自分の仕事にしっかり務めてくれ」


 殿下の優しさは嬉しいけど、私は周りの目を気にしてしまう。

 私は一介の魔導具師で、殿下は一国の王子様。

 この身分差は、どう取り繕っても覆ることはない。

 もしも殿下が王子じゃなかったら……。

 ふとそんなことを思ってしまった時、視界の端にチラシを見つける。


 大きな見出しで、流星群間近、と書かれていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新作投稿しました! URLをクリックすると見られます!

『没落した元名門貴族の令嬢は、馬鹿にしれきた人たちを見返すため王子の騎士を目指します!』

https://ncode.syosetu.com/n8177jc/

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

第一巻1/10発売!!
https://d2l33iqw5tfm1m.cloudfront.net/book_image/97845752462850000000/ISBN978-4-575-24628-5-main02.jpg?w=1000

【㊗】大物YouTuber二名とコラボした新作ラブコメ12/1発売!

詳細は画像をクリック!
https://d2l33iqw5tfm1m.cloudfront.net/book_image/97845752462850000000/ISBN978-4-575-24628-5-main02.jpg?w=1000
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ