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【WEB版】無自覚な天才魔導具師はのんびり暮らしたい【コミカライズ連載中】  作者: 日之影ソラ
第二.五章

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44.水の街

「……はぁ、疲れた」


 ばたんと倒れこむようにベッドで横になる。

 一日の終わりにどっと疲れを感じたのは久しぶりかもしれない。

 リドリアさんがネロ君の身体に興味を持ってから、二時間近く裸のネロ君と語り合っていて。

 その間ずっと困っていたのは私だけだった。

 目を閉じると思い出す。

 ネロ君に言われた言葉を。


「私もいつか……」


 思い浮かべたのは殿下の顔。

 愛しい人のこと。

 いけない想像を仕掛けた私は、思わず何もない頭の上で手をぶんぶんと振る。

 私はどうやら男性への耐性がないらしい。

 リドリアさんを見て実感した。

 これじゃそのうち殿下にも呆れられてしまうだろうか。

 少し不安になりながらもう一度目を瞑る。


  ◇◇◇


 翌日の朝。

 私とネロ君は殿下に呼び出されて執務室に足を運んだ。

 中には親衛隊の皆さんがすでに待機していた。

 ガルドさんが豪快に手を振ってくれる。


「おう久しぶり! 元気だな」

「はい。皆さんもお変わりありませんでしたか?」

「我々はいつも通りです。隣の方は、ダンジョンで発見したゴーレムの……」

「ネロ・クラウディウスだ。よろしく頼むぞ」


 親衛隊の皆さんにもネロの事情は伝わっている。

 ただ直接対面するのは今回が初めてだった。

 四人とも物珍しそうな表情で見ている。


「へぇ~ 動いてみると尚ゴーレムに見えねーな」

「ただの美少年ですね」

「中身はおじさんなんすよね! って痛い!」

「あんた言い方考えなさい」


 相変わらず賑やかな人たちだ。


「お前たちも俺を目覚めさせるのに一役かってくれたそうだな。礼を言おう。お前たちのおかげでボクはここにいる」

「気にすんなよ。別にお前さんを助けるためにダンジョンに入ったわけじゃねーからな。つかあのダンジョン作ったのお前なんだよな?」

「そうだ。あそこはボクの研究用の隠れ家だった」

「すげーな。あんなもんどうやって作ったんだよ」

「簡単だぞ。ダンジョンづくりなど」


 さっそく仲良く話をしている。

 人当たりのいい彼らとネロ君は相性も悪くなかったみたいだ。

 一先ずホッとする。

 すると遅れて殿下がやってくる。


「すまない遅くなった。なんだ? もう打ち解けているのか」

「お、殿下待ってましたぜ」

「来たか」

「全員揃ってるな」


 殿下は一人一人と視線を合わせ、最後にソファーへ腰を下ろす。

 場所はもちろん、私の隣に。


「さて、今回集まってもらったのは他でもない。次の案件についてだ」

「やっとか。結構待たされて暇してたんだよ」

「だと思ったよ。今回は少々大がかりだ。というより、フレアの力が必要不可欠になりそうなんだ」

「私ですか?」


 殿下は頷く。

 私ということは、魔導具が必要になる案件なのだろう。

 そういう話ならぜひ頑張りたい。

 殿下にいいところを見せたいと心の中で意気込む。


「内容は?」


 ネロ君が尋ねた。

 殿下が地図を広げて説明する。


「王都から南に下ったところにある街、アクリスタでは現在、原因不明の水害に悩まされている」

「アクリスタって確かあれっすよね! 水の街って呼ばれてて、街中に水路とか噴水がいっぱいあるところ!」

「そうだ」

「水害ということは、洪水、もしくは干ばつですか?」


 レストさんが尋ねる。

 私も思い浮かんだのはその二つだったけど、どうやら違うらしい。


「アクリスタの水路の水は地下から湧き出ている。そのまま飲んでも平気なくらい綺麗な水で、街の人々の生活を支えていた。その水が汚染されているらしい」

「汚染? なんでまた急に」

「わからない。だからガルド、それを俺たちで調べに行くんだ」

「なるほどだ。もしかすると人為的かもしんねーな」


 気合を入れる様にガルドさんは拳同士をトントンとぶつける。

 人為的……誰かの手によって汚染されたなんて考えたくない。

 けれど可能性はあるのだろう。

 涼しい顔をして裏で闇と繋がっていた誰かを思い出す。


  ◇◇◇


 早々に準備を済ませ、私たちは馬車に乗って王都を出発した。

 目的の街アクリスタへは片道約四時間。

 それほど距離は離れていないけど、山を一つ越える必要がある。

 山を越えた先は気温がぐんと上がり、太陽の日差しが強くなる。


「やっぱこっち側は暑いっすね~」

「鎧とか着てらんねーなぁ」

「だからっていきなり脱ぎだすとか止めてよね。そんなことしたら全身氷漬けにしてやるわよ」

「……暑いありっすね」

「ありだな」


 ガルドさんとダンさんの反応に呆れるイリスさん。

 彼らのやり取りを見ながら微笑ましそうに殿下は笑う。

 しかし本当に暑い。

 山一つ挟んだ程度でこれほど変わるのかと驚かされる。

 涼しい風を出す魔導具を持ってくればよかった。 

 材料はあるしここで作ってしまおうかな?


「魔力の無駄遣いはやめておけ」

「あ、バレた?」

「お前は表情に出やすい。わかりやすいからな」


 ネロ君に止められたので作るのは止めにしよう。

 確かにこのくらいの暑さなら我慢できる。

 何でも魔導具に頼っていると、もしも魔導具がなくなったらどうする?

 

「実際魔導具がなくなったらどうなるのかな? そんな世界想像できないよ」

「それほど現代の生活に溶け込んでいるということだ。だが文明は発展するばかりではない。些細なきっかけで崩壊することもある」

「怖いこと言わないでよ」

「可能性の話だ。当り前になっているものほど、失った時が怖いものだからな」


 ネロ君の言葉には異様な重みがある。

 そういう場面を体験してきたのかもしれない。

 事実、私たちがこれから向かう街でも、同じようなことが起こっていた。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 37話でリドリアと親衛隊にネロがゴーレムであると説明して『少ないながらも理解者に囲まれて』と書いてあるのに、前話でリドリアと初対面、ここで親衛隊と初対面というのは矛盾を感じます。37話…
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