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【WEB版】無自覚な天才魔導具師はのんびり暮らしたい【コミカライズ連載中】  作者: 日之影ソラ
第二.五章

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43.所長と美少年

「――というわけなんです」

「……え?」


 この日、初めて私はリドリアさんにネロ君を紹介した。

 以前から動いている姿は何度も見ているし、殿下とのありえない噂が広まっていることも知っている。

 彼がゴーレムであることは当然知っていた。

 そんな彼女も、私にとって信頼できる人物の一人。

 正直にネロ君が過去の大魔法使いだということを打ち明けたら……。

 

「ちょ、ちょっと待ってくださいね? 話が唐突すぎて混乱してます」

「そうですよね」


 リドリアさんの反応は当然のものだった。

 いきなり大昔の大魔法使いがゴーレムになって復活しました。

 なんて説明して、そうなんだとあっさり納得するほうがおかしいだろう。

 私だっていまだに信じがたいことはある。

 だけど、彼のコアを作ったのは私だから理解できる。

 ネロ君が普通ではないことを。


「正直信じられませんが……確かに、ゴーレムと呼ぶには自由すぎますね。いかにフレアさんが完成させたコアが優れていても、これほど人間らしく動くゴーレムなんて想像できません」

「ただのゴーレムではないからな。この身体は、ボクの本来の肉体をベースにしている。言い換えれば生きた死体だ」

「し、死体!? 自らの身体をゴーレムに作り替えたんですか? なんでそんなこと……」

「そうするしかなかったんだ。生き残るためにはな」


 ネロ君の口から呪いを受けていたことが語られる。

 彼も、自ら望んでゴーレムになったわけじゃない。

 そうするしか方法がなかった。

 未来を生きたいと願った彼は、最善の方法を選択したに過ぎない。

 もっともこんな方法、普通の人間には思いつくことさえできないとは思うけど。

 ネロ君の存在が、彼の魔法使いとしての規格外さの証明になっている。


「それで……これからどうするつもりなんですか? ネロさん」

「さっき説明した通りだ。今のボクは彼女の助手だからな」

「大魔法使いが助手……すごい組み合わせですね」

「あははは……私もそう思います」


 見た目は子供だけど、私なんかよりずっとすごい人が隣にいる。

 しかも私を支える助手として。

 改めて考えるとアンバランスな関係性だ。


「その、いいんですか? ネロさんはそれで」

「構わない。ボクを目覚めさせてくれたのは紛れもなく彼女だ。彼女がいなければボクは今も眠っていた。もしかすると、永遠に目覚めなかったかもしれない」


 彼は拳をぐっと握りしめ、見つめる。

 生きていることを実感するように。


「感謝している。心から」

「ネロ君……」

「この恩を返すまで、ボクはしばらくここにいる。感謝は言葉だけではなく、行動で示してこそ意味があるものだ」

「なんだか深い言葉ですね」

「ネロ君の言葉は妙に説得力があるんですよ」

「当然だ。お前たちとは生きてきた時間の密度が違う」


 こうして彼と言葉を交わす度、彼が生きていた時代に興味が湧く。

 殺伐とした世界だったと彼は言っていたけど、きっとそれだけじゃなかったはずだ。

 争いしか生まない世界なら、彼のように優しい人は生まれないと思うから。


「そういうわけだ。リドリアと言ったな? お前も何かあれば遠慮なく言うといい。彼女の上司なら、ボクの上司も同じだ」

「せ、正確には上司じゃないんですけど……え、いいんですか?」

「ああ、大抵のことは聞いてやろう」

「じゃ、じゃあ一つ……」


 リドリアさんがそわそわしている。

 ネロ君を見つめながら、何かを期待しているように。

 一体何をお願いするのか私も興味が湧いた。

 積極的なリドリアさんは珍しいから特に。


「できればいいんですけど……その身体って、どこまで人間に近いんですか?」

「ん? なんだ? そんなことが知りたかったのか?」

「そうなんですよ! ずっと気になっていたんです。見た目や動作は人間の少年そのもので、食事や睡眠までするんですよね? どうなっているのか知りたくて知りたくて」


 興奮しているせいか普段より早口だ。

 こんなリドリアさん初めて見る。

 

「そうか。だったら存分に調べるといい」

「い、いいんですか? じゃ、じゃあ服を脱いでもらっても」

「構わないぞ」

「え?」


 いきなり話が一気に進んだ気がする。

 ネロ君は一切の躊躇なく服を脱いで、数秒後にはあられもない姿になった。


「これでいいか?」

「おおー……本当に人間の少年そのままなんですね」

「外見だけではないぞ? 内部の構造も人間のそれと同じだ。空気を取り込み、血が通い、神経がとおっている。無論、すべて疑似的なものではあるが」

「成長はするんですか?」

「肉体は変化しない。ただし、ボクが魔法で形を変えることはできる。やろうと思えば大人になることも、より子供になることもできる。性別は変えられないがな」


 二人は向かい合いながら淡々と話をしている。

 全裸の少年と、それをまじまじ眺める年上の女性……。

 知らない人が見たら衛兵を呼ばれるんじゃないかな?

 というより……。


「む? どうした?」

「なんで目を塞いでいるんですか? フレアさん」

「いや、だって……裸ですし、むしろなんでリドリアさんは平気なんですか!」


 少年の見た目とはいっても男の子だ。

 異性の裸なんてまじまじ見る機会はない。

 私は恥ずかしくてまっすぐ見られない。

 魔導具師として彼の身体に興味はあるけど……それ以上に恥ずかしい。


「私、弟がいて同じくらいの年齢なので。それにネロさんはゴーレムですから」

「そうだぞ。何を恥ずかしがることがある」


 と言いながらネロは堂々としている。

 どこも隠そうとしていない。


「この程度で恥ずかしがるな。そんなことではあの王子と一夜を共にすることになった時、何もできないぞ?」

「なっ、ね、ネロ君!」


 一瞬想像してしまって顔が真っ赤になる。

 楽しそうに笑うネロ君の横で、リドリアさんがキョトンとしていた。

 そういえば、私と殿下のことは伝えてなかったような……。

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