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【WEB版】無自覚な天才魔導具師はのんびり暮らしたい【コミカライズ連載中】  作者: 日之影ソラ
第二章

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30.最初のお仕事

「なぁ殿下! さっそく話を進めようぜ!」

「そうだな。挨拶も終わったし、本題に入ろう。みんな適当に座ってくれ」


 執務室のソファーに一人ずつ腰を下ろしていく。

 本来なら殿下と他全員が向かい合う位置に座るのだけど、大きさ的にそれはできない。

 四人が右側に座ると、もう席が空いていない。


「フレアはこっちでいいよ」

「は、はい!」


 私は殿下の隣に座った。

 食事でも話し合いでも、対面でしか座ったことがなかった私は、すぐ隣に殿下の肩があって緊張する。


「それじゃ、今回の案件について説明する。レスト、地図を出してくれるかい?」

「はい」


 レストさんが世界地図を広げる。

 中心に私たちの国があり、その周囲の国々を含む細かな情報まで記されている。

 市場に出回っている地図の中でも、より正確な物だろう。

 殿下は地図の一点を指さす。


「ここだ。ここに新たな地下迷宮……ダンジョンが発見された」

「ダンジョン?」

「知ってるか? フレア」

「はい。知識だけは」


 ダンジョンとは古代の遺産が眠る大迷宮。

 古の時代を生きた偉人たちが、その功績と成果を補完するために作り上げた巨大な宝物庫。

 その構造や仕組みは、現代でも謎に包まれている。

 宝物庫とされているのも、宝が眠っているからそう呼んでいるだけで、実際は何の目的で作られたのかもわからない。

 新たなダンジョンの発見は、古の時代の秘密を紐解く重要なものであり、そこに眠る財宝の中には現代技術を超越した代物も多くある。

 

「ダンジョンの遺産は、文明の発展に大きく関係する。だからどこの国も組織も、ダンジョンの発見に力を注いでいる。俺たちの国も例外じゃない」

「ダンジョンの調査が今回の案件ですか?」

「そうだ」


 レストさんの問いに殿下は頷いて返答した。

 闇市場の調査とは違った難しさがありそうだと、なんとなく感じる。

 ダンジョンなんて見たこともないから、私にはわからないけど。

 ただ疑問に思ったのは、それだけ重要な調査をここにいる数名でやろうとしていることだった。

 私は殿下に尋ねる。


「もっと大規模に調査しないんですか?」

「それは次の段階だな。実をいうと、これが本当にダンジョンだという確証がないんだ」


 殿下の話によると、ダンジョンらしき入り口を見つけた。

 というだけで、中まで調査していないから確定はできていないとか。

 未確定な情報に騎士団を動かすことはできない。

 そしてもう一つ、大規模に調査するなら、より確実に攻略できる準備がいる。

 

「ダンジョンを狙ってるのは国だけじゃない。いろんな組織が目を光らせてる。特に、犯罪にかかわる組織が危険なんだ」

「犯罪……闇市場にもかかわっていた盗賊とかですか?」

「もっと大きいよ。最近、アファリスっていう組織が勢力を広げているんだ。奴らは人身売買、危険薬物の取引、窃盗に密漁、殺人……人道に背く行為を平気でやる」


 私はごくりと息を呑む。

 アファリス……そんな危険な組織があるんだ。

 この国は安全だと思っていた。

 そう見えるのは、殿下や騎士団が私たちを守ってくれているからで。

 目に見えない悪は存在するんだ。


「あいつらにとってダンジョンなんて格好の餌だからな。存在がばれりゃー確実に取りに来る。だからバレちゃなんねーんだよ」

「要するに、隠密にことを済ませる必要があるんです」

「そこでオイラたちの出番ってわけっすよ!」

「私たちでダンジョンを調査して、次の本格攻略につなげる。もしくは、可能ならそのまま攻略してしまうってことよ。そうですよね? 殿下?」


 殿下はこくりとうなずく。

 

「ここにいるのは精鋭だ。ダンジョン相手でも引けはとらないと俺が保証する。フレア、君にはダンジョン調査で使う魔導具を準備してほしい」

「わかりました。何が必要になりますか?」

「それについては僕がまとめておきました。これをご覧ください」


 レストさんが一枚の紙を私に手渡す。

 紙にはダンジョン攻略に最低限必要な装備と、今回必要になりそうな魔導具の特徴が書かれていた。

 照明に武器防具、気になったのは……。


「海上移動が予想される……船を使うんですか?」

「いいや、船は使えない。目立ちすぎるし、何より危険だ」


 今回見つかったダンジョンの入り口は海上にある。

 船を使えばたどり着ける距離らしいけど、問題はその周辺にいる魔物たちだった。


「船でいくと間違いなく魔物の標的になる。この人数じゃ大型の船は使えないし、迎撃も難しい。だからまず、どうやって近づくかを考える必要があるんだ」

「俺は泳いでもいいけどな」

「私は絶対に嫌よ」

「オイラも水は苦手なんで勘弁してほしいっすね」

「そもそも体力的に無理です。泳ぐには距離が離れすぎている」


 レストさんがガルドさんに地図を使って丁寧に説明していた。

 ガルドさんは鬱陶しそうに、冗談だって、と突っぱねる。

 

「フレア。君の力でなんとかできないか?」

「海上の目的地まで安全に行ければいいんですよね? それなら何とかなると思います」

「さすがだな。それじゃ人数分、五セット用意してほしい」

「五セットですか?」

「ああ、彼らと俺用だ。さすがにダンジョンは危険だからな」

「そう……ですか」


 私はダンジョン調査には参加できないのかな?

 殿下も参加するのに……。


「わかりました」


 私は心の中で決める。

 六セット、自分の分も作ってしまおうと。

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