20.よくやったよ
「参考までにお伺いしますが、なぜ気づいたのですか?」
「フレアだ。彼女が作ってくれた魔導具で、お前の魔力が俺の中に流れていることがわかった」
「魔力の流れを? そんな魔眼のような効果を魔導具で再現したと……くくっ、やはり天才ですね、彼女は」
「意外だな。お前の口から天才なんて言葉が出てくるとは思わなかった。彼女を見捨てた奴が」
カインは不敵に笑う。
「だからこそですよ。彼女は聡い。近くに置くと危険だと判断して突き放しました。放っておいて精神が弱った所で誘いをかけ、次の商品にでもしようと思っていたのに……誤算でしたよ。まさか殿下が傍に置くとは」
「運命だったよ。彼女とあそこで出会えたのは!」
ユリウスは腰の剣を抜く。
対するカインは冷静に、笑みを崩さない。
「無駄ですよ殿下。こうして真実にたどり着いてしまった以上、貴方はここで処理します。知っていますか? 呪いをかける方法にもいろいろあるんです」
「ああ、知ってるさ。お前が犯人だとわかって真っ先に思い出したよ。初めて話したとき、お前は俺に握手を求めたな」
「ええ、その時に呪いを付与させていただきました。すでにかなり進行していますね? ずいぶんとお辛いでしょう?」
「悪いが絶好調だよ。彼女のおかげでな」
ユリウスは力いっぱいその場で剣をふるう。
戦えることを示すように。
「動けたとしても無駄です。すでに進行している呪いにもう一度呪いをかける。そうすれば即死させられる。今の貴方なら、直接触れるまでもない。こうして言葉に――」
呪いを込める。
「死んでください」
「――!」
「くくっ……ぐ、がぁ……」
倒れたのはユリウスではなく、カインだった。
口から血を吹き出し、片膝を突く。
「な、なぜだ? どうして……」
「呪いの対処法は、発動者に解除させるか、殺すかの二択。だがもう一つある。より高度だが、そのどちらでもない……いや、どちらにもなる方法、それが――」
「呪い返し!? ば、馬鹿な! 呪いの種類もわからないのに、どうやって……」
「これだよ」
ユリウスが取り出したのは手鏡だった。
もちろんただの鏡ではない。
彼が魔力を流すことで効果を発揮する。
「ま、魔導具!?」
「正解だ。誰が作ったかもわかるよな」
「フレア……か」
「ああ。お前の言う通り彼女は天才だよ」
◇◇◇
「犯人はおそらく、カイン様です」
「彼が? まさか……確かなのか?」
「はい。殿下の中に、カイン様の魔力が流れています。それに私が見たカイン様の魔力は……」
恐ろしかったと素直に伝える。
「……そうか。いや、だとしたらいろいろと辻褄も合う。あとは対処法か」
呪いの解除には二通りある。
一つは発動者に解除させること。
ただし相手に頼んでやってくれるとは思えない。
もう一つは、殺すこと。
一番確実な方法だけど、優しいユリウス殿下にはつらい決断をさせることになる。
「もう一つあります。呪いを解く方法が」
「本当か?」
「はい。この方法なら殿下が手を汚す必要も、解呪を願う必要もありません。お時間を頂けませんか?」
「ああ。任せるよ」
◇◇◇
「俺は何もしてない。お前が勝手に自滅しただけだ。呪いっていうのは返されると何倍にも効果が強まるんだろ? いつまで耐えられる?」
「くっ……こんな、魔導具ごときで!」
「本当に天才だよ。お前の魔力を解析して、そこから呪いを反射する魔法を構築し魔導具にする。これをたった一晩で終わらせたんだから」
「ぐ、おおおおおおああああああああああああああああああ」
苦しむカインを見下ろしながらユリウスは言う。
「お前の敗因はただ一つ、彼女を敵に回したことだ」
「ぐおあ、うううううう」
「呪いを解呪しろ。でないと死ぬぞ」
彼がかけようとした呪いは、すでにユリウスが受けている呪いと同じ。
同じ故に、カインが解呪すれば同時に解ける。
しかし、カインは解呪しない。
苦しみ続けている。
「おい」
「……く、解呪することは……できないな」
「なんだと?」
「これは……この力は僕だけの物じゃない。わかるか? 貴方を呪う相手は他にもいるんだよ」
ここにきて共犯者の告白。
ユリウスの動揺を誘う作戦、ではない。
遺言である。
「よく覚えておいてください。貴方や貴方の国を狙う者は大勢いる。いずれ必ず、こっち側へ来ることになるでしょう。それまで……ぐっ」
待っていますよ。
最後の言葉は聞こえていない。
しかし、ユリウスは理解した。
自身の内から呪いの痛みが消えていくのと一緒に。
「……はぁ、死んだことは黙っておくか」
その後、ユリウス殿下より闇市場の全貌が公表される。
盗品、人身売買に加担した者たち。
その中に王国に属する貴族、バルムスト家の嫡男がいたことを。
これによってバルムスト家は責任を取らされ、貴族としての地位をはく奪される。
同時に交流が深かった貴族たちへの調査が開始される。
主犯格であるカインは、王国の地下牢に収容されたという。
◇◇◇
「私は、ここにいていいんでしょうか」
「急にどうしたんだ?」
「いえ、その……私はロースター家の人間です。カイン様とも、婚約者でした」
ロースター家はカイン様と関わりが深い。
その影響で現在、厳しい監視下に置かれている。
ただし私は例外として自由に行動できていた。
「いいんだよ。君のおかげで解決した事件だ。むしろ誇っていいよ」
「……そう、でしょうか」
私は殿下の元でカイン様を捕らえることに貢献したとして褒賞を頂いた。
「すっきりしたか?」
「……いえ、別に恨んでいたわけじゃありませんから」
「……そうか」
「ただ、今の私が思っているのは……殿下が無事でよかったということだけです」
私は笑う。
今も隣に、殿下がいる現実に。
あの呪いは、月の満ち欠けで進行するものだった。
満月になれば殿下は死んでいた。
でも、彼は生きている。
「また一緒に、今度は丸い月が見られそうだな」
「はい!」
思うところはいろいろある。
それでも、殿下の命を救ったことだけは、私が私を褒めてあげたいと思えた。
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新作投稿しました!
タイトルは――
『没落した元名門貴族の令嬢は、馬鹿にしれきた人たちを見返すため王子の騎士を目指します!』
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