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【WEB版】無自覚な天才魔導具師はのんびり暮らしたい【コミカライズ連載中】  作者: 日之影ソラ
第一章

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16.殿下の夢

 こんな気持ちになったのは初めてで、困惑する。

 殿下のことが知りたい。

 彼が何を考え、何を思っているのか。

 知りたくて仕方がなくて、思わず口に出していた。


「普段か。そうだな。基本的には仕事ばかりだよ。王子っていうのは暇そうに見えて大変なんだ」

「暇そうに見えたことはありませんよ?」

「そうか? 偉そうにしてるだけで普段何してるんだ! とか思われてるのかと思ったよ」

「そんなことは!」


 まぁ、近いことを思ったことはなくもないけど……。

 実際王子様って何をしているのか。

 ユリウス殿下だけじゃなくて、そういう立場の人が普段どうやって過ごしているのかは興味がある。


「父上の仕事の一部を代わりに請け負っているんだよ。領地の運営、各地で起こった問題の対処、他国との外交。そういう諸々が仕事だ」

「聞くだけでも大変そう……」

「それなりに、な。けど王子は楽なほうだぞ? 国王になったら今の何倍もの仕事と重圧がかかる。小さいころから父上を見てるけど、よく身体も壊さずいられるなと思う。今も外交で国の外を飛び回っているしね。次はいつ戻ってくるのやら」

「そんなに……」


 私なんかより、陛下のほうが休みもなさそうだ。

 

「まっ、俺が国王になる可能性は低いし、そこまで気負う必要はないけどな」

「え、どうしてですか?」

「なんだ知らないのか? この国では基本、第一王子がそのまま国王になる。第二王子の俺は、兄上に何かあった時の保険みたいなものだ」


 第一王子が国王になった後は、ユリウス殿下が第一王子となる。

 第二王子が国王になった例は、歴史上一度しかない。

 その際は第一王子が突然病死されたそうだ。

 やむを得ない事情でもない限り、殿下が国王になることはない。


「そういう意味じゃ気楽だよ」

「……殿下は、国王にはなりたくないんですか?」

「ん?」

「その……私は、殿下みたいな方が国王になってくれたら嬉しいと思って」


 他人のことをちゃんと見られる。

 思いやれる優しい王様。

 想像して、ぴったりだと思ったから。

 殿下は笑う。

 

「ありがとう。別になりたくないわけじゃない。でも、向いてはいないんだよ」

「殿下が……?」

「ああ。国王になれば、一人一人、個人と向き合う時間が短くなる。人ではなく国を見つめ支えないといけないから。そうなると小さな問題や声を聴いていられない。俺はそれが嫌なんだ」

「嫌……ですか」

「子供みたいだろ?」

「そんなことは!」


 私はぶんぶんと首を振る。

 大げさに否定した私を見て、殿下は楽しそうに笑う。


「いいんだよ。俺が子供みたいだって思ってるんだから。俺は大勢をまとめたり、導いたりするのは得意じゃない。だから国王には向いていない」

「……」

「それに、国王になったらこういう時間も取れない」


 殿下はそう言って私に微笑みかける。

 こういう時間とは、私と過ごす時間のことを言ってくれているのだろうか。

 だとしたら嬉しい。

 私といる時間を、少しでも意識してくれているのなら。


「その点、兄上なら間違いなく素晴らしい国王になれる」

「クラウス殿下ですね」

「ああ、兄上はすごい人だよ。なんでも完璧にこなすし、物事の常に先を見据えてる。俺は兄上なら、歴代最高の国王になれると思っているんだ。父上には悪いけどね」

「ふふっ、殿下はクラウス殿下のことを尊敬しておられるのですね」

「ああ」


 彼は頷き、瞳を輝かせて天井を見上げる。


「昔から兄上が俺の目標だった。今でも変わらない。だから兄上が国王になった時、俺が支えられるようになろうって決めてるんだ。兄上の手の届かない問題は、俺が解決する。兄上がやりたいことに専念できるようにするんだ」

「素敵ですね」


 クラウス殿下の話をするとき、殿下は子供みたいに楽しそうな顔をする。

 本当に尊敬しているんだ。

 きっと兄弟仲がいいに違いない。

 私たちとは違って。


「まだまだ未熟だけどさ。最近もいろいろやってるんだ。あまり大きな声では言えないけど、闇市場の調査とかね」

「闇市場? なんですか?」

「簡単に言うと、盗品や人を売り買いする場所だ」

「そんなものが?」


 ある、と殿下はハッキリ答えた。

 この国では奴隷商売は厳しく禁止されている。

 人の持つ権利を損害する行為だからだ。

 もしも発覚すれば、重い罰を与えられる。

 

「いるんだよ。陰でこそこそと、女子供を売り物にしている奴らが……俺はそれが許せない。だから調査して潰してる。すでにいくつか繋がりのある盗賊たちを捕らえた。もしかすると、この件に奴らが関係しているかもしれないな」

「だったら私も――」

「ダメだ」


 協力したいと答える前に、殿下はハッキリと断った。

 普段より強めな声にびくっと身体が震える。


「こればっかりは危険すぎる。君を危険な目に遭わせたくない」

「殿下……」

「犯人捜しの手伝いをしてくれるだけで十分だ。繋がりがあるかもって、ただの予想でしかないからな。間違っても一人で調べようなんてするなよ?」

「……はい」


 残念だけど、殿下がそうおっしゃるなら……。

 私のやるべきことは、殿下の呪いを解く手掛かりをつかむこと。

 この本に有力な情報が載っていれば……。


「あ、これ……」

「何かわかったか?」

「はい」


 私が見ていた本に、気になる情報が記載されていた。

 呪いを受けた者の身体は、呪いを放った者の魔力が混ざる。


「魔力……」


 だったら魔力を識別できれば。

 呪いをかけた犯人が見つかるかもしれない!

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