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04.残念美少女が特別になった日

ノクト視点で物語が進んでいます

「これが土地譲渡関連の書類と住宅建設関連の書類」

ノクトの自宅の三階にあるノクトの部屋にいるのは部屋の主であるノクトと彼が唯一信頼を寄せている執事兼護衛のマーカス二人。

「で、こっちが高等部に進級するための必要書類だ」

マーカスは話ながらも必要書類をノクトの前に出していった。


「この土地に建てる予定の住宅の工事開始日は?」

「言われていた日時に予定通りできるそうだ」

「そうか。じゃあ、この通り進めてくれ。もし何か変更があれば知らせて欲しい」

「わかった」

そう言ったノクトは進級に関する書類に目をやった。


(莉桜は高等部に進級するか否かを迷っているようだったが……)

ノクト自身は当然莉桜と共にアリアス学園の高等部へと進級するつもりでいた。

(今さら離れようと考えているなんて遅すぎだよ)

そんなことを考えていたノクトは莉桜と出会った日のことを思い出していた。




ノクトにとって莉桜との出会いは言葉にできないほど嬉しいものだったと今なら思えたが、出会った当初はそんなことを思うはずがなかった。

どこに行くにもついてきて、毎日遊びにもこられて正直、鬱陶しいと思う存在だった。

この頃のノクトはマーカス以外の人間を信じることができずにいた。


それなのにマーカスはノクトを莉桜たちと遊ばせようとよく画策してきた。

その画策に見事にハマったノクトは嫌々ながらも莉桜たちと遊ぶようになった。


嫌々ながらもなんだかんだと莉桜たちと遊ぶのを楽しんでいるノクトをマーカスは温かい目で見守っていたのだが、そのことにノクトが気づくことはなかった。


莉桜たちにだいぶ慣れたノクトだったがまだ莉桜たちに心を開けずにいた。


そんな時に莉桜が連れ去られられそうになるという事件が起きた。


幼い頃から美少女の片鱗をみせていた莉桜はその時はまだ瓶底眼鏡など掛けていなかった。


あろうことかノクトの目の前で莉桜は連れ去られそうになっていたのだが……。


「り、りおをはなせ!」

ノクトは飛び掛かり莉桜を掴んでいた大人の手をがぶりと齧った。

「いてぇ! このクソガキ!」

バシッとノクトを容赦なく叩きつける大人に対し、ノクトは負けることなく立ち向かった。

「りお! おきろ!」

気を失っている莉桜をノクトは起こそうと声を上げたがもう1人の大人の手により口を塞がれてしまう。


そのまま腹を殴られたノクトも気を失ってしまい、莉桜と共に連れ去られてしまったのだった。


「……うっ」

ハッとしたようにノクトは目を覚ますと泣きそうな顔をした莉桜と目が合った。


ドキッとこの時心臓が高鳴っていたのだが、無視をしたノクトはゆっくりと体を起こそうとするが。


「うわぁぁんっ! ノクトぉ!」

ノクトが目を覚ましたことへの安堵からなのか、それとも今のこの状況に対する不安を感じたのか莉桜はついに泣き出しノクトに抱きついた。


「うわっ!? ……いたっ!」

抱きつかれた衝撃で殴られた腹が痛んだノクトは思わずそう言ってしまい、何故か「しまった」 と思う自分がいることに気付く。


「ひっく、うっ、ノクト、だいじょうぶ?」

ノクトが痛いと言ったと思った莉桜はノクトに聞いてきた。


「だ、だいじょうぶ、だ」

強がってそう言ってはみるもののズキズキと腹が痛むことに変わりはなかった。


「ここはどこだ?」

ノクトが莉桜に尋ねるか莉桜はわからないというように首を振った。


莉桜はそのままノクトの手を掴んできた。

「な、なんだよ!?」

驚いたノクトはビクッとしながら莉桜にそう聞いた。


「ノクト、ありがと」

「………………は?」

今のこのよくわからない状況の中でなんでお礼なんか言ってるんだよとノクトは思わなくなかったが何も言わず先を促すことにする。


「それから、ごめん」

「………………」

「ノクトがわたしのこときらっているのしってるよ。 でも、たすけようとしてくれたでしょ? だからありがとうと、……いたいおもいをさせてごめんねといいたくて」

「な、べ、べつに、きらってない!」

ノクトは莉桜の言葉にどきりとしてついそう言ってしまうが莉桜はふるふると首を横に振った。


「うそ。 ノクトいつもイヤそうにしていた。 ホントはいっしょにあそびたくなかったんだよね?」

「ち、ちが……っ」

莉桜の言葉を否定しようとするが、今までの自分の莉桜たちに対する態度を考えると否定できない。

「ノクトはちがうとおもいたいだろうけど、わたしだけじゃなく、あずさもシンもおもっていたんだよ。 ノクトにきらわれているよねって」

「り、りお……」

莉桜は何を言おうとしているのかノクトは予想ができず、けれど何故かその先に言われる言葉は良くないような気がしてノクトは不安な気持ちに駆られた。


「でもね。 マーカスがよく言うの」

「…………え?」

「ノクトぼっちゃんはすなおじゃないから、きらわないであげてって。わたしたちにきらわれたらお友だちがだれもいなくなるからって」

「……………………」

事実、その通りなのだが、言葉にされるとさすがのノクトもガーンとショックを受けた。


「それに、きらっているはずなのにノクトはわたしのことたすけようとしてくれた。だから、きめたの」

ノクトの手を掴む手に少し力を入れて莉桜はまだ涙が残る顔を笑顔にした。

「ノクトがわたしのこときらいでもわたしはノクトのことがすきだからずっといっしょにいるし、ずっとともだちでいるからね」

「……!!」

ノクトは莉桜の言葉を聞いてそのまま動かなくなってしまった。


━━ずっと一緒にいよう。

━━……うん。


何回も見ていたのに気にも止めていなかった夢を何故か唐突にノクトは思い出した。

莉桜の言葉を聞いて誰かにそう言ってもらいたかったのだと気付く。


(いや。莉桜にそう言ってもらいたかったのかもしれない)

幼い頃のことを思い出していたノクトはそんなふうに思っていた。

莉桜にずっと一緒にいると言われた時は固まってしまったが、すぐに飛び上がりたいほど歓喜したのを覚えていた。


(それから俺にとって莉桜が特別になった)

莉桜がずっと一緒にいると言ったことを今はもう忘れていたとしてもノクトは覚えているため、ずっと莉桜の傍にいると決めた。


(一生離れるつもりはないから莉桜には諦めてもらわないと)

自分から離れようと思っていることを。


ノクトは口角を上げてこれからのことを考えていたのだった。

口角を上げながら笑っているノクトを見ながらマーカスがぽつりと呟いていた。

「坊っちゃん、また何かよからぬことを考えているな」 と。


ここまで読んでくれてありがとうございます。

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