合宿(?) 実録! 警察24時
「なに!? 株が暴落しただと!?」
信用取引。
それは悪魔が考えたとしか思えない業。
"投資家俺"は合宿用に荷造りしたバッグをその場に落としてしまった。
俺は今、凍死家になった。
本日。連休初日であった。
この世界の株式取引は年中無休だ。
そもそも採用されている暦が違う。宗教が違うのだから当たり前だ。
元居た世界、あれはグレゴリオ暦を採用してるがこの世界は採用されている暦が違うのだ。
土日祝は株式が取引停止にならない。
なので株取引は生きている。
余談だが、グリニッジ標準時も採用されていない。
俺は証券取引所。
オノゴロ営業所の電光掲示板の前で精神を壊されていた。
緑色のマイナス表示を見て目を回した。
「ああ。消えていく……俺の金が」
泡を拭いてぶっ倒れそうだった。
なんとか震える膝に活を入れる。
SAN値が削られていく。
100……70……50。
「なぜ、こんな事に……」
涙が出そうだった。
いや、出た。ドバドバと頬を伝う涙。
俺の心に空洞が出来た。
俺はスマホで即座に情報収集をしてみた。
突如として現れた聞いた事もない新手の新興企業達が、市場を荒らしまくっているようなのだ。
それだけでなく、大企業や財閥の不正が続々と告発されている。
もう無茶苦茶だ。
そのせいで俺の保有していた株は一夜にして恐ろしい乱高下を繰り返した。
恐ろしい下げ幅。
絶壁のようなチャートを見て吐き気がした。
「破産手続きをしないと。債務整理を」
うわ言を呟きながら、フラフラと糸の切れたマリオネットのように歩き。
「俺は終わりだ。ジ……エンド。あとは任せた」
俺はオノゴロの大通りで静かに路上にうつ伏せに倒れ込んだ。
SAN値ZERO。
俺は白目を剥いてぶっ倒れたのだ。
「俺も……ここまでか。もっと……生きた……かった。完。あああ!! クソ!! ファック! ファック! ファック! ……」
俺は奇声を叫び続けてぐったりとした。
そっと右手の人差し指を伸ばし、ダイイングメッセージを残す。
「犯人は……ヤ……」
俺は静かに息を引き取った。
絶命した。否、死んだふりをした。
「何やってるのあの人」
「見るな! 頭がおかしいんだろう。可哀そうに」
「イカれてるぜ」
「なんかのパフォーマンスじゃない?」
「キモ」
「不審者すぎる。通報しろ。クスリをやってるに違いない」
「通報しますた」
通行人は誰も俺を気に留めず、奇異の眼を向けながらヒソヒソ話をしている。
聞こえないね。
だって、今の俺は目の前が真っ白になっているんだから。
もう静かにしてくれ。死んだんだ俺の心もマネーも。
「そこのキミ、ちょっといいかな?」
ふいに声を掛けられるが、俺の視界は涙で歪んで見えなかった。
涙をドバドバと流しながら。
俺は駄々をこねるガキのように路上で大の字になりジタバタと暴れ出す。
「俺は死んだんだ!! 助けてくれ! うお~! 死ぬぞ!! 俺は地球なんだよ!! 触るな!! 触るなよ! 何だよ! 手錠なんか持ち出しやがって!! おいふざけんな!」
「おい! 押さえつけろ! 応援を呼べ。手錠の用意もしておけ!」
「はい!」
赤色ランプが目の端に見えた。
・
・
・
/三人称視点/
「遅いですね」
カッコウこと『ケイ』は腕時計を見ると、既に約束の時間から30分経過していた。
「そうね。まぁいつもの事でしょ」
翡翠はケイの姉という設定で、普段と異なる口調であった。
「ところで、ケイの計画はどうなの? 順調?」
「ええ。おかげさまで。
今は資本を集める事を念頭に置いてます。
投資ファンドを使い、現在株価の操作を行っている所です。
さらに僕の部下を使い利権を貪り、世に蔓延っていた者の不正を暴き公表もしています」
「なんの意味があるの?」
「ええ。まず資本を牛耳るマニアクスを揺さぶる事が一点。
二点目は富の一極集中を防ぐ目的があります。
しかし、これよりも大事な事があるんです。
大量の資本を獲得後。
最悪の結末に備える為、民間人を避難させる巨大シェルター建設の為の資本の創出なんです」
「シェルターって? 初めて聞くんだけど」
「でしょうね。TDR案件は僕に一任されているので。
今、僕の部下を使いテーマパークを造らせています。
テーマパークを隠れ蓑に巨大な穀倉地、水源の確保。
これは出来ました。
現在、急ピッチで民間人を受け入れる為の設備を建設しています。
貿易で多くの食糧や防災道具、鉱石や石油燃料を集めてもいます。
食品加工工場も買収もしました。
これはおまけですが、裏社会の情報収集の為にカブキ街にも尖兵を放っています。
これは全て天内くんの計略の上にあります」
「凄いスケールの事を裏で進行してるのね貴方たち」
翡翠は正直呆れていた。
「天内くんは馬鹿ではありません。
彼が闇金業という名の素っ頓狂な事を行った理由。
最初は全く意味がわかりませんでした。
しかし考えてみたんです。
単に集金する事が目的ではないのです。
真の目的。
それは、この学園に通う不正を働き続けた王侯貴族、財閥や大企業の嫡子嫡女に近づく事。
そして弱みを握るという事。
多くの産業や経済の中枢に潜入する事。
その蜘蛛の糸のような、か細い糸を手繰り寄せ、
この世に巣食う巨大産業を牛耳り続けた悪しき産業資本へ揺さぶりをかける。
多くの資本を獲得し、それを足掛かりに多くの無辜の民を1人でも多く救う事なんです」
翡翠はグルグルと目を回し、顎に手を当て一考した。
「そういう事ね。概ねわかったわ。スケールが大きすぎてため息しか出ないわね」
「流石です。翡翠さん」
翡翠は顎に手を置き、一考しながら。
「マホロ学園は世界的に大物の子供が多く在籍している。
それを巧妙に利用した。
弱みに付け入る事で、庶民では本来ならあり得ぬ距離を富豪共と詰める事が出来る。
悪徳な富裕層なら裏カジノという馬鹿げた茶番に乗って来る。
ここで一個目の振るいを掛けた。
信用ならぬ者か信用できる者か。
二手目に彼は信用ならぬ者が引っ掛かったら、次に彼らの弱みを握るよう画策した。
クラス対抗戦を遊興の一大イベントとして愚か者を釣り、
負債と汚点を与えた上での勝利をする」
翡翠は得心がいったのだ。弱さを演出する事の意味を。
(彼ほどの強者が実力を隠しているのは、この計画の成功の為か……
弱ければ弱いほどカジノのオッズは上がる。
自分の事を強いと考える者は心理的に弱い者を下に見る。
油断を誘う事が出来る。これを狙っていたのか。
一つ疑問が晴れた気がしたわ)
「弱みに付け込み、経済の中枢に入り込み、資本を獲得して最悪のケースに備える。
確かにこの学園でしかできない芸当ね。
流石だわ」
「概ねそうですが、それだけではないかと」
「まだあるの?」
「ええ。僕が邪推したほんの一部なんです。
この先は天内くんしか想定していないでしょう。
彼は頭が良すぎるんです」
「それには同意ね。全く彼の思考が読めないモノ」
「全くです」
「彼が語る。
この世を滅ぼさんとする魔人、邪悪なる神々に対抗する為に、この学園に来たと言ってました。
全てを信じた訳ではありません。
しかし、彼がマニアクスと呼ばれる邪悪を語った後に現れた不可思議な空を覆う魔法陣。
四菱に憑依した山本。
貧者と呼ばれるマニアクスが裏から糸を引くロックスミス……巨大な銀行。
ロックスミスが融資する先は名だたる企業が連なっています。
その多くが不自然にマグノリア危機によって資本を築いた企業が多くあります。
それに、彼が語ったマニアクスと呼ばれる魔人が巣食う友愛結社カテドラルやCORと呼ばれる犯罪ネットワーク。
これら全て世界大戦に発展しそうになった一大事件。マグノリア危機に絡んでいるようなんです。
これら点と点を繋げると彼が嘘を言っているようには思えない。
この世界には我々庶民の知らない陰謀が渦巻いています」
「彼は1人で戦い続けてきた訳ね」
「ええ。恐ろしいですよ。こんな情報を知ってるぐらいだ。
それにあれほどの実力者。
彼は多くの死線を潜り抜けてきたんだと思います」
「私達と殆ど年齢は変わらないのにね」
「ええ。でも僕も今回強くなれる機会が出来ました。
彼と少しでも同じ景色を見れるかもしれないと、期待しているんです。
僕も彼と共に歩みたいと思いましたからね」
「それは私もよケイ。そろそろ時間ね。私達は先に彼のパーティーと接触しましょう」
「そうですね。遅れてくるのも、恐らく何らかの計画あっての事でしょう」
「どれほど先を読んでるか賭けないケイ?」
「いいですね。1000手先とかどうです?」
翡翠は『チッ、チッ、チッ』と人差し指を振り。
「彼は未来を読んでいる。遥か先の未来を」
「全く敵わないなぁ」
カッコウは頭を掻いた。
かなり無茶苦茶に作った話なので、もしかしたら消すかもです。
なかったことになるかもしれません。
自分でも何を書いてるのか途中でわからなくなったので。
追記
すみません。誤解を与える書き方をしてしまったようで。
この94部を消すかもしれないという意味です




