プロローグ③ 説明会? いえ説明回です
転生してから数日経った訳だが。
まずメガシュヴァにおいて、天内とはどんな奴かというと思い出さねばならないだろう。
確かこうだ。
このキャラは一言で言うなら器用貧乏の凡人。
天内は不遇キャラだ。
というよりも運営の実験的要素が詰め込まれたネタキャラ。
ギャルゲであり、アクションRPGの要素を持つメガシュヴァにおいて戦闘力というのは非常に重要だ。
なぜならストーリーを進めるには、数多く登場する敵やミッションを攻略する必要がある。
その為に戦闘能力は必要不可欠だからだ。
メガシュヴァには敵味方を含めて1000を超えるプレイアブルキャラが居る。
各キャラには星という概念のレア度があり、大きい順から星5から星1まである。
星の数が多い方がレア度が高く戦闘能力は高い。
メインヒロインやストーリー的に重要なキャラ、運営のお気に入りのキャラは例外なく強キャラであり星の数が多い傾向にある。
天内は、メガシュヴァにおいて星3の微妙な立ち位置のキャラ。
チートなユニーク能力や専用装備もない。
その代わり汎用型であれば、条件付きだが全属性魔法・一部を除くほぼ全てのスキルに適正があり、そこそこ扱うことができる。
この“そこそこ”というのがポイントで、魔法属性やある程度のスキルの適正があるが、すべてを極める事ができない。
天内の長所と短所をおさらいするとこんな感じだ。
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【長所】
全魔法属性に適正あり。ただし近距離・付与系統の魔術しか使用できない。
一部を除くほぼ全てのスキルを上級(超級不可)まで取得可能。
白兵戦武器なら全て適正あり。
アーツと呼ばれる武器術や体術における必殺技や特殊な行動も自身に影響を与える汎用のモノなら全て取得可能。
【短所】
放出系・遠隔系の魔術は使用不可。
召喚術や死霊術なども適正はあるが遠隔操作系の為、事実上使用不可。
クラフト系の魔術・スキルはそもそも習得できない。適正はあるが錬金術は事実上使用不能。
適正武器種も遠距離系のものは悉く適正がなく使用できない。
周囲の環境に影響を与える上級アーツ以上は覚える事ができない。
ユニーク魔法・ユニークスキル・ユニークアーツ・専用装備は全てなし。
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全魔法属性に適正があるのは主人公と天内ぐらいなのだが、放出系の魔術が使用できない点や上級以上のアーツを使用できないという点がこのキャラを不毛なものにしている。
魔術における打点の稼げる高火力技は、ほとんど遠距離系統のものばかりだ。
勿論、近距離特化でも強いキャラは居る。
しかし上級アーツが使用できるし、固有能力や専用装備を持っていたりする。
天内には悉くそれがない。
極めつけに白兵戦武器種にしか適正がなく、遠距離武器は使用できないという徹底ぶり。
そんなこんなでこのキャラは星3の微妙なレア度。
つまり天内はレベル最大でも大した性能はない。
そして何よりこいつは、ストーリー上では主人公に序盤も序盤、チュートリアルに倒される雑魚キャラなのである。
その反対に主人公はチートな固有能力や専用装備がある。
キャラ固有のユニーク魔法・ユニークスキルを除く全属性魔法、全クラススキル、全武器種に適正があり、それら全てを極限まで極めることができる。
主人公はキャラ固有のユニークアーツを除くアーツを全て取得可能。
公式チートキャラ。
それが主人公である。
主人公なので当然と言えば当然だが。
唯一欠点があるとすれば、プレイヤーつまり主人公は全てに適正があるが、ゲーム開始時に1種類のみしか属性や武器種などを選べない点である。
主人公はレベルを上げると最大で任意で3つの魔法属性・3つの武器種を極められる。
しかし、魔法も武器も3種以上は習得できない。
完全無欠の主人公は、それはそれで無味乾燥だ。全ての適正を持つが、魔法も武器も3つまでしか極める事ができない。
というよりもだ。
さすがにすべてを自在に扱える主人公となると、主人公のみでゲームが全部完結しちゃうじゃん。と、なってしまうゲームシステム的な運営の配慮でもある。
無論そのデメリットを排しても主人公の固有能力や専用装備はどのルートでも使えるわけだが。
そんな訳で、運営(神)の恩恵をこれでもかと詰め込んだ存在が主人公であり、この世界の中心的存在とも言える。
主人公が超天才なら凡人枠が天内であるとも言える。
まぁそんなこんなで、基本性能では天内と主人公には逆立ちしても敵わない見えない壁のようなものが存在する。
悲しいかな公式チートキャラやメインキャラには殆ど勝てない性能が天内なのだが。
付け加えるなら素の性能面で言えば、天内が主人公どころかヒロインに勝つ要素は万に一つもない。
天内はキャラ設定的にいつもヒロインに罵詈雑言を浴びてたり、主人公パーティにボコボコにされたりするキャラ。
なんなら主人公の特性に近いが遥かに能力の劣るかませ犬。
天内傑とは主人公の完全劣化版、下位互換のキャラなのである。
ネット掲示板のメガシュヴァスレで嘯くと、『さてはお前、天内だろ?』や『こいつ天内じゃね?』と煽られる。
これはもはやネタ用語である。
ああ、言い忘れていた。
天内には唯一とも言える長所があった。
思い出したわ。
それは運営によって皮肉を込めて作られた設定。
『イケメン死すべし』を込められて作られたクソ設定。
天内が主人公桜井風音に勝っている部分が唯一あるとすれば、ルックスぐらいだ。
顔だけはいい、見た目だけならいいとの評価はヒロイン達から受けていたからな。
とは言ってもネット掲示板でも、ただしイケメンに限るが唯一通用しない奴との評価を受けていた。
そして、勿論というかなんというか無論ヒロインは例外なく主人公風音に惚れる。
そんなわけで、俺は天内傑として転生したようだ。
このどうしようもないクソキャラに。