表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
80/457

オタクに優しいギャルは存在するのか? (出題)



 オタクに優しいギャルは存在するのか?

 世界最大の難題の一つ。未だ解明されていない命題。

 この証明を解き明かす事ができればノーベル賞を取れると言われている21世紀最大の謎。


 ギャル。


 それは魅力的な言葉だ。

 俺が好きな言葉の一つでもある。


 ・

 ・

 ・


「あーあ」

 あーあ、壊れちゃったか……である。

 壊れたのは俺の計画なのか、モブ生活なのか、秘密の部屋のケダモノなのか。

 俺は残忍なガキキャラが、人間おもちゃの殺戮を行ったかのような雰囲気を醸し出して、呆れ返っていた。


 勿論、俺自身に。

 

 自慢のブランドの腕時計はぶっ壊れていた。

 秒針は刻み続けている。

 ガラスにヒビが入っているが、内部構造には問題ないようだ。

 高級品は流石である……いや、今はそこじゃない。

 壊れた時計を見て、『フッ』と自分自身をせせら笑った。

 あらゆる状況に自分自身に嘲笑を浮かべた。


 スケジュールオーバーである。

 クソ笑った……………。


「計画は破綻した」


 親睦会(仮)には間に合わなかった。

 なぜかわからないが、体感時間と実経過時間が噛み合ってないのだ。

 起床する際にあと五分を何度も繰り返して、いつの間にか昼だった時のような感覚に似ている。

 俺の時計の秒針は既に23時を刻んでいた。


 なんで?


「どうしたし? なんか凄い人」

 俺の隣に立つ、ボロ雑巾のような衣服に変貌したギャルは俺を覗き込んだ。


「うん。俺は今から記録を残そうと思うんですよね」

 俺はスマホを取り出した。


「おう!? 唐突だね」


 とりあえず証拠を作らねば……親睦会(笑)に行けなかった理由。

 やむを得ないピンチに巻き込まれていた……そういう事にしておこう。

 俺はダイイングメッセージを残そうと思い立ったのであった。

 アイツらはきっと今頃俺の悪口で盛り上がっているに違いない。

 『みんなでハブろうぜ』、『あんなゴミ死ねよキャハハ』、『つーかダサすぎてあいつまじないわー』とかそんな会話をしてるんだ。

 前世の女も今世の女も結局、人の陰口が大好きなのだ。

 前世の嫌な記憶がフラッシュバックした。

 ウッ!? 頭が!?


 気が重くなってきた。

  

「ええ、悪いですね。人生は唐突なんですよ。そして俺は突発的なアクシデントに弱い……」


 俺の顔を覗き込むギャルは片眉を寄せると。

「お、おっふ……なんかよくわかんないけど、思いつめた顔してんね。大丈夫?」


 よっぽど俺の顔が神妙な面持ちなのかもしれない。

 そりゃそうだろう。という感想しか出てこない。

 前後の文脈が無茶苦茶だ。会話が成り立ってないのだ。

 俺も意味不明な要件しか伝えていないし上手く伝わっているとも思えない。

 例えアインシュタインでもこの一言だけでは俺の意図には気付けないだろう。

 だがいいのだ。

 もう、なんか諦めた。


「大丈夫です。じゃあ。はい、これお願いします」

 ギャルに動画撮影用に起動させたスマホを渡す。


「あーしに撮れって事?」


「はい。そうですね。俺の……生きた証……ってやつを残してください」


「1人で出来るっしょ。そも意味わからんし」


「うんうん。もっともですネ。1人語りだと……こう、なんて言うのかな。なんか役者魂がね。機能しないんですよ」


 俺は自分自身に笑えてしまい頬を緩ませた。

 人間は「あーあ。もう取り返しつかないか……」という状況に落ち着くと、自分への嘲笑と哀れみを慰める為に笑えてくるのだ。


「こわ。この人……不気味な顔のブッキーくんじゃん」


 ヒョウ柄の下着を隠すように手で胸元とはだけたスカートを押えると俺から距離を取った。


「頼むよカメラマンさん。オタクに優しいギャルの存在を証明して……欲しい」

 俺は暗黒微笑 (嘲笑(己自身)) を含みながら目の前のギャルにカメラマン代行を頼んだ。


 一度彼女は逡巡すると。

「……りょ」

 と、エルフであり似非えせギャルは了承した。


 【森守もりすまつり】は、渋々俺にスマホを向けたのであった。


「ありがとうございます。オタクに優しいギャルが居る……それが証明されるだけでも。救われる者が居るんです」


「わけわかんね」

 まつりは呆れていた。


 ハァ……ハァ……とわざと過呼吸の演技をすると。

「この映像を観ているという事は、俺は既にこの世に居ないだろう……」

 俺は死亡フラグビンビン男を演じながらレンズに向かって語りかけた。


 ・

 ・

 ・


/まつり目線/


 --- 時はほんの少し前に遡る ---

 


 あーしは、エルっちとジュードパイセンに誘われて嫌々? 泣く泣く? パイセンいわく千里眼なる大規模魔法陣なるものが索敵していたと思われる場所を捜査? 

 まぁ散歩していた。

 そんな時だった。


 目の前に2つの影が飛び出してきた。

 片方は人間。

 もう片方の巨大な陰影はムカデのような無数の手が身体中から生えている。身体中には無数の眼玉。それがギョロギョロと痙攣しながら辺りを見回している。その瞳と目が合った。

 一層異形なのは人間で言うとへその位置にミミズのような巨大な円形の口腔。口腔の中は螺旋状になっており、人間の歯や動物の歯が無秩序に生えている。

 人間で言うと過剰歯。


 歯。歯。歯。歯。歯。歯。歯。歯。

 歯。歯。歯。歯。歯。歯。歯。歯。

 歯。歯。歯。歯。歯。歯。歯。歯。

 歯。歯。歯。歯。歯。歯。歯。歯。

 歯。歯。歯。歯。歯。歯。歯。歯。

 歯。歯。歯。歯。歯。歯。歯。歯。


 無数の歯である。

 かみ砕く歯。すり潰す歯。


 目が慣れてくると、そこに居たのは体長5メートルはあろうかという灰色の肌をした異形の怪物。

 見た者を畏怖させる外見。目を合わせた者は余りの異常さに身体が硬直してしまうような見た目。

 見た事も聞いた事もない、おぞましい姿の異形。


 それほど強いよう見えない異形の怪物だが……

 あーしは身体が石になったかのように恐怖に似た感情で動けなくなってしまっていた。

 耳鳴りがする。体が痺れたように動けない。


 なんだし!?


 身体中から生える触手に似た腕が小さな影に向かって伸びると、追撃をしていた。

 異形の腕は猛禽類のような鋭利な爪を持っており、木々をいとも容易くなぎ倒していく。

 暴風のように木々粉微塵に変貌する。

 爪の餌食になった木朴は豆腐を握り潰したかのような歪なえぐれ方をしていた。


「ハッ」っと息を飲んだ。

 迫りくる無数の手が四方八方から小さな影を包み込んだ。

 小さな影……人が握り潰され死んだと思った。

 あーしは目を瞑り最悪の結末を覚悟した。


 ドサリとナニカ大きな物が落ちる音。 


 一本の剣を携えた何者かが背後に迫る無数の腕を細剣一本で切り落としていた。

 その結果だけが残されていた。


 ゴクリと自分の生唾を飲む音が頭蓋に響く。


 冷静に分析し緑色の体液が滴ると肉の焼けるような音を立て、辺りを溶かしていく。


「酸か……」


 何者かは、異形にひるむ事なく、細剣一本で腕を切り落としていく。

 滑らかな剣捌き。剣の軌道は余りにも滑らか過ぎて軌跡の残像を描いている。

 同じ生徒会に所属するヴァニラさんも剣術の腕は一流だと思う。


 それでも今、目の前で行われている剣技の神髄は全く異なるように見えた。

 まるで未来でも読んでるいるような……


「いや違う。知っている?」


 知っているかのような、何度も経験を積んだかのような。

 そんな体捌き。

 研究し尽くし数多あまたの策を弄した先にある剣技。

 技術と言えば技術なのだが、それは剣士や武芸者というよりも……賢者や仙人に近い技量に見える。

 


 絶技を繰り広げる者の姿が徐々に鮮明になってくる。 

「あの人…………誰だし?」


 身じろぎ一つ取れないあーしには疑問しかでなかった。

 赤黒せっこく色の髪をしたオシャレな青年が化け物と相対しているのだ。

 青年は何やら大声を上げて挑発しているようだが、金切り音のような耳鳴りでその内容は耳に入らなかった。


 異形の猛攻は目を瞑る青年の前で、その全てを無力化されていく。

 神域に到達しているのかとさえ錯覚する絶技が繰り広げられていた。

 青年は目を瞑りながら、気配や音、空気の振動を察知しながら戦っているのだ。


「見ないで戦ってるじゃんか……オモシロ人間発見!」

 そんな感嘆にも嘲笑にも似た一言。

 あーしは変人発見で心が躍った。





ギャル用語を調べて勉強してみたんですが、第二外国語なみに難しくて断念しました

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ