メイガス・オブ・シュヴァリエ・オルタネイティブ
√2 Analysis
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/風音視点/
---時は数日遡る---
謎の怪人が告げた渓谷。
怪人の言った滝の裏側。
その先にはダンジョンがあった。
危険な罠かもしれないと思った。
しかし、あの怪人が力と栄光を齎すと言った。
危険は承知。
今の僕らでは弱い。
だから三人で相談して細心の注意を払い入る事にしたんだ。
だって今の僕らではシスを守る事ができないんだから!
そこで南朋とシスに有用なアイテムを手に入れる事ができた。
道中のモンスターは強く、とても苦労した。
ホントに何とか。
運に恵まれた。
みんなが危険な状態になると、突如としてモンスターの動きが鈍くなった。
それになぜかわからないが、回復用のポーションが至る所に配置されていた。
そんな運に恵まれて、ダンジョンの深奥に辿り着けたんだ。
ダンジョンの最終地点。
洞穴の深奥にあったのは光り輝く数多の剣を持った救世主とその仲間達の壁画。
かつて邪神を打ち払ったという伝説の極光。
極光の騎士。
今もなお、おとぎ話に、寓話に、神話に語られる。
極光の騎士……シュヴァルツ・ネイガー。
その傍らには、その仲間。
「まさか。これは……神話に語られる勇者は……極光の騎士ではないのか……」
剣を携えた者に付き従うかのように極光を放つ騎士。
極光の騎士は壁画の中心に描かれていない。
中心に居る騎士が剣を翳した先に極光の騎士と思われる人物が描かれている。
極光を放つ騎士が直接、邪悪な闇の魔物と戦っている光景。
ネイガーはまるで……剣を翳した者によって……
召喚されたファミリアのようではないか。
「なんだ!?」
地鳴りが響いた。
そう感じた瞬間。
辺り一帯に光の粒が散乱し、手元にあった純白の聖剣に吸収された。
・
・
・
そんな不思議な事が起こった後。
南朋ともシスとも別れ、寮に戻って来ると突然目の前に現れたんだ。
「我が主。勇者。選ばれた存在よ」
透き通るような声。
心から安堵感を与えるかのようだ。
プラチナの髪の毛。
この世のモノとは思えない絶世の美を体現した存在。
―――聖剣―――
聖剣が人の形になり僕の目の前に降り立ったのだ。
言葉を失った。
「君は……一体」
ようやく発する事ができたのは、その一言だけであった。
彼女? のプラチナの髪は灯りが乱反射し虹色に輝く。
それを手で払った。
極彩色に煌めく瞳。
シミ1つない、まるで陶器のような肌。
全身白い衣を身に纏っている。
それはまるで、この世の者とは思えないほどの美であった。
「私は世界の楔。人は私を……人類を守る決戦兵器と呼ぶ」
「…………」
状況に追いつけない。
思考をまとめろ。
これはなんだ?
部屋に戻りそろそろ寝ようとした所だった。
リラックスして、日課の瞑想をしていた。
すると突然、僕の手首に腕輪として装着されていた聖剣が光り輝き。
―――人の形になった―――
召喚術は存在する。
精神魔法も存在する。
これは召喚された使い魔なのか?
それとも幻なのか?
敵かもしれない。
シスを狙う敵。
「君は……誰なんだ?」
ようやく思考をまとめ、間抜けな質問を投げかけた。
僕は警戒を怠らない。
部屋中の配置を脳内で描く。
木刀の位置は……
行ける。
一息で手に取れる。
冷静になれ。
相手の話に乗ったように会話を続けろ。
いつでも攻撃が出来るように。
「私は世界を繋ぐ一振りの剣だよ」
「決戦兵器。世界の楔。何を言ってるんだ。剣? 人だろ。まやかしか?」
僕は室内にあった木刀を手元に寄せると。
「!?」
「おっと。良くないなぁ」
自称聖剣を名乗る彼女が指を鳴らすと僕の身体は硬直した。
これは……
一体何が起こっている。
身動きが取れない。
「手荒な事をして済まない。私と君は一心同体。
故に私が危害を受けそうになると、君は動きを制限される」
クククと意地の悪い顔をするが、その美は奪われていない。
「私の話に付き合ってもらおうか。風音くん」
聖剣であったものは無視して話を続ける。
なんで!? 南朋もシスも学園長もみんな話を聞いてくれないんだ!
クッソ! いつもこうじゃないか。
「君にはこれから、過酷な運命が待ち受ける。
私もようやく目が醒めた。
君が、私の意識を……魂を見つけてくれたおかげだ。
」
「意識を見つけただと?」
僕は彼女を精一杯睨みつける。
今この場で、この得体の知れない者にできるのはこれが精一杯だ。
聖剣を名乗る彼女は『アッハッハッハ』と涙目になりながら笑うと、『そうこなくちゃね』と呟くと。
「怖い顔をしないでくれ。私は君の敵ではないよ」
「信じられないな」
『まぁいいさ』と彼女は微笑しながら。
「あの暗い穴蔵に私の意識は封印されていた。
【マニアクス】と呼ばれる世界の敵から守るためにね。
聖剣の……いや、聖剣という形そのものが、真名を隠す隠れ蓑。
この剣の名は。
いや……私の名は。
ルミナ・レディアント・プルガシオン。
聖剣プルガシオンとでも名乗ろうか。
これでようやく君の力に……なれる
」
ニヤリと笑いかけた。
「僕に何をさせようって……言うんだ」
身体がまるで麻痺したように動かない。
魔法の発動もできない。
オドを身体に伝達しようとすると、それらが聖剣を名乗る彼女に吸収されていく。
「そうだな。世界を……共に救ってほしいと言ったら」
そんな事は告げるべきではないと。
悟っているにも関わらず。
告げねばならないという心痛な表情。
悲痛な顔が目の前にあった。
「世界を……」
何を、言っているんだ?
言葉を発する事ができない。
僕は聖剣の話を黙って聞くしかなかった。
だって、あまりにも……
聖剣を名乗る彼女が ――"悲しそうな顔" ―― をしていたから。
プルガシオンが初めに語った事。
それはマホロの地の役割だった。
「さて。まず。このマホロの地はなんのためにあると思う? 我が主よ」
「学校? 研究機関、観光地……だろ?」
答える必要はないと思いつつも僕は返答した。
「いいや。違う」
「どういう意味だ?」
「順を追って話さなくてはいけない。
嫌でも聞いてもらおう。
初めに。
マニアクスと呼ばれる恐るべき力を持った者。
我々は世界を終焉に導く担い手。
それをマニアクスと呼んだ。
呼称はなんでもいい。
表現できる言葉が、我々の時代にそれしかなかった。
故にマニアクスと呼ぶが。
この世には狂気を世界に振りまく人知を超えた存在が7人居る
」
恐るべき異能を持つ7人。
それがこの時代に生まれ出た。
その者達から世界を守る為に勇者が生まれるのだと。
マニアクス。
この世に現れる狂気の異能を持った者。
破滅に取りつかれた者達。
プルガシオンはそう語った。
「そして最も重要な事。
マホロの本来の目的。
この天空の地。
それは世界を混沌に導くマニアクスを打ち破る為に作られた神の砦なのだ
」
「神の砦」
「そう。私達は傲慢にもそう呼んだのだ。
この砦はマニアクスを監視する為に、狂人と戦う為に作られた。
勇者を守り、聖女を守る。
そして……この世界の破滅から逃げる箱舟の役割も持つ
」
「箱舟だと?」
「そうだ。
仮にマニアクスと邪神を打ち滅ぼせない場合の緊急措置。
勇者と聖女が居れば世界はまだ生存の可能性を残せる。
最後の人類になるかもしれないが。
人という種を残せる。
その為の箱舟の役割を持つ。
そして。
君は勇者なのさ。
この世界に蔓延るマニアクスを打ち滅ぼすせる勇者なんだ
」
彼女はパチンと指を鳴らし僕を指差した。
「僕が勇者だと?」
「そう。紛れもなく。
そして……最後に。
私たちはこの世界の終焉を観測した。
それを阻止して欲しい。
この世界の人々を、生命の灯を守ってほしい。
人々の歴史をここで途絶えさせてはいけない
」
「世界の終焉? 意味わかんないよ。さっきから何を言ってるんだよ。
僕が勇者? そんな訳ないだろ。何を言って!?
」
頭が混乱している。
「いいや。君は勇者として生まれてきた。
紛れもない事実だ。
勇者と聖女は出逢うようにできている。
現に君は出逢ったはずだ。
勇者は必ず聖剣に選ばれる。
私を振るう事ができるのがその証左。
勇者は世界に祝福される。
空に、大地に、海に、風に、花に。
無論それだけではないが……
君はある魔法を使えるはずだ
」
彼女は含みを持った言い方をした。
「君は本当に一体。人なのか? 魔物なのか?」
一体何を言って……
「フフ。どう思う?」
いたずらっ子のように微笑まれた。
「ふざけないでくれ!」
馬鹿な妄言を聞かされてる気分だ。
からかわれている気分だ。
僕が勇者? ふざけるのも大概にしろよ。
僕は僕だ。
不快だ。
「すまない。話を続けよう。
伝えなくてはいけない事が多いのだ。
しばらくの間、私も眠りにつく。
まだ力が完全に戻ってないようでね。
故にここで伝えられるだけ伝えたい。
終焉の観測は非情に不確定なモノだ。
我々の時代にあった、勇者の力により編纂された未来観測機はある天啓を弾き出した。
災厄を招く存在が "この時代" にも顕現するのだと。
我々の居た時代だけでなく、この時代にも顕現すると観測された。
そのために私はこの時代まで意識を繋いだ。
かつての勇者に託されたのだ。
この世界を救って欲しいと。
」
「バカな話を」
僕は勝手にしゃべり続けるこの女の話を無視しようとするも、彼女は一向に話を止めない。
「邪神と呼ばれる4騎の……
いや。4柱の騎士。
マニアクスの最終目標。
それはこの騎士を一柱でも顕現させる事。
そして世界を滅ぼす事なのだ。
第一の騎士。
疫病を流行らせ世界を支配する騎士。
【根絶者アウス】
第二の騎士。
混乱した世界に争いを起こす騎士。
【狂乱者マニックストライフ】
第三の騎士。
命を天秤に掛け多くの民を飢えさせる騎士。
【邪皇帝カイゼルマグス】
第四の騎士。
荒廃した大地を広げ、多くの死を運ぶ騎士。
【魔導皇フィーニス】
」
「邪神……邪神は4人。いや4柱も居るっていうのか。妄想だな」
僕は聞いた事のない名が出てきて顔をしかめた。
神話で出てくるのは1柱のみ。
無論その名は世間に知れ渡っている。
根絶者アウス。
恐るべき死の災いを呼ぶ神の名。
勇者とされる極光の騎士シュヴァルツ・ネイガーによって打ち滅ぼされた邪悪。
「そして最後に現れる存在。
名もなき怪物。
四騎の邪神たる騎士を凌駕する恐るべき5番目の存在。
それは騎士ではないと呼ぶ者も居た。
4柱の災厄を招く騎士が全て顕現する未来に現れる。
そう観測された何か。
観測機では名前はおろか、その実態すらも掴めなかった靄。
もしかしたらそんな存在は居ないのかもしれないが……
観測機が弾き出した何かなのだ。
最後に顕現するとされているのは、
この世の理を超えた奈落より現れる黒き太陽の化身。
暗黒の太陽を背にした混沌の主。
深淵より来る全ての悪魔を束ねる王。
そう呼ぶ者も居た。
【終焉の騎士】
私達はそう呼んでいた何かだ。
4柱の厄災の騎士を。
終焉の騎士を。
この滅亡の神々を誰一人として顕現させてはいけない。
」
一体何を言ってるんだ。
僕は何を聞かされているんだ。
漫画の読みすぎなんだよ!!
「……この世界が終わる……何を言ってるんだ。そんな話信じられるか」
信じられる訳はないのに。
なんで彼女はこんなにも必死で、悲しい顔をしてるんだ。
クッソ! いつもこうだ。
僕の信念は……≪か弱き者を守る≫じゃないか。
「マニアクスは災厄を招く導き手。
彼らを打ち滅ぼす事。私はこれで世界の終焉……滅亡の回避ができると考えている。
」
「僕にその、マニなんとかを倒せって事なのか?」
「そうだ……」
プルガシオンは絶世の笑顔を少しだけ暗く影を落とした。
彼女は話を続ける。
「話を続けよう。
この時代から換算するとおよそ1000年前の話になるのかな。
観測機は私の居た時代からおよそ1000年後。
マニアクスと勇者の戦いが、再び引き起こると伝えられていたから。
我々の時代に居た勇者。
彼女と共に、我々は、我々の時代に居た7人のマニアクスを倒した。
しかし……邪神。
根絶者の顕現を防ぐ事はできなかった。
あと一歩で防げるはずだった。
失敗したのさ。力が足りなかった。
絶望したよ。世界は破滅に向かうはずだった。
多くの人が死んだ。
この世界は死に向かっていた。
だが奇跡を起こした。
いや……奇跡を呼んだ。
あらゆる時代の、あらゆる可能性の世界に居るであろう一縷の望みを引き当てた。
勇者がね。
勇者のみが使えた"時空間魔法"。
それにより召喚された、あらゆる魔術を行使する白銀に輝く後光差す極光の騎士。
この者の出現により戦況は大きく逆転し始めた。
いや……この者により世界は救われたのだ。
見た事もない。聞いた事もない。
埒外の技巧を駆使する、ネイガー卿の尽力により我々は根絶者に勝利した。
」
「極光の騎士……」
あの壁画に描かれた光景がフラッシュバックした。
いや、まさか。そんなはずは。
勇者と極光の騎士は別人?
古今東西どんな神話やそれを題材にしたフィクションでも、そんな話聞いた事はないぞ。
それになんだ。この違和感。
嘘を吐いてるように思えない。
なぜこんなにも本当のように聞こえるんだ。
彼女と僕が本当に一心同体だからなのか?
僕は目を閉じる。
わからない。
それでも。彼女の気持ちが流れ込んでくるようなそんな不思議な感覚に囚われた。
瞼の裏側で彼女が見てきたであろう光景が一瞬垣間見えた。
これは……なんだ。
この聖剣を僭称する彼女は。
本当に聖剣本人なのか……
そんな。
なんで、そんな顔をしてるんだよ。
「勇者と極光の騎士によりこの世界を救う事ができた。
滅亡を回避できた。
それでも……1000年の長きに渡り溜まった排除しきれなかった厄災。
その因果がこの時代に破滅を呼び込もうとしている。
観測機が出した不確かな未来。
これは世界の命運を懸けた戦い。
故に……私と共に戦ってほしい。
共にマニアクスと戦って欲しいのだ
」
プルガシオンはまるで人のように、心痛な顔をして頭を下げた。
僕は大きくため息を吐き。
つくづく僕は自分の事を馬鹿な奴だと思う。
こんな根も葉もない妄言を信じた訳ではない。
それでも。
か弱き者を守るっていうのは僕の誓いだ。
決して曲げられない信念だ。
困っている人を見過ごすなんて、どうやら僕にはできそうにない。
「嘘だったら許さないからな。それと! 全部信じた訳じゃないから!」
僕は念押ししといた。




