幕間 史上最高の能力とは…… /ヴァニラ・ユーフォリア視点/
/ヴァニラ視点/
この世界には魔法が根差している。
私はどこにでもある平凡な家庭に生まれた。
先祖が高名な魔術師という家庭ですらなく、特別な血は一滴も入ってない。
そんな私は毎年恒例の春の下級生諸君の青春を来賓席から観戦していた。
今年も良い生徒が多くいる。
私は感心していた。
その観戦の中で、ある事をふと考える。
この世界には魔法とは別に"スキル"や"アーツ"と呼ばれる理外にある超常の異能が存在している。
無論それは私も保有している。
それについて疑問があるのだ。
この世界の生きとし生ける全ての生命に魔力が宿る。
生命力とも言い換えられるそれは個人個人に大小大きさが違う。
それはわかる。
それらの大小によって魔法の発現が個々人違うという事。
できるもの、できないものが居るという事実。
それは理解できる。
球技が生まれつき得意な者とそうでない者。
足が速い者とそうでない者。
そういった差に近いだろう。
私はこの三年間、この学び舎で学び、有り難い事に生徒会長という役職を拝命した。
そして確信に近い直観がある。
それは全ての生きとし生ける者、個人によって"異なるスキルやアーツがある"という事。
それらは個人の"魂の形"によって異なっているのではないかと。
私は確信している。
あくまで私の価値観として。
武力や抗争、もしくは学問に秀でたスキルやアーツ。
それらは不要なのではないかと。
そう考えている。
現状これらは世界で評価される代物だ。
確かに重要だ。
理解もできる。
隣人を守るために武力は必要。
文明を発展させる為に叡智は必要。
だがしかし。
それらは、人が幸せな人生を歩むべく上で本当の意味で……
本質的に……
「意味がない」
あくまで付属品。
過程に生まれる副産物でしかない。
もし、この世で最高のスキルやアーツがあるのだとすれば………
諸人の悲哀、悲痛、哀惜……それらを全て打ち壊すような。
「それは……きっと」
"誰かの幸せを願える"能力。
"人を笑顔にする"能力。
"争いを諌める"能力。
"誰かの為に命を懸けられる"能力。
そんな自分の事を蔑ろにした究極のエゴイズム。
言葉で言い表すのは難しい。
それでも、きっとそんな力なのではないだろうか。
最小にして最大の力。
武力など物騒な力ではない。
学術といった高尚なモノですらない。
そんな誰もが持ち合わせているそんな在り方だ。
若輩者の私にはきっと……どれだけの研鑽を重ねてもそれらを手にするのは難しいかもしれない。
誰だって自分が大事だからだ。
自分の事が一番だから。
それは私も例外ではない。
言うは易し。
行うは難し。
それが出来る者は、きっと大バカ者か大うつけ者だろう。
「そんな馬鹿者に会ってみたいものだ」
私はこの頂きで、ついぞ出会う事の出来なかった存在を待ち続けよう。
そんなアホに一度説教をしてやる。
そしてその魂を見極めたいと思う。
私もその者の隣に立つに相応しいのかを見定めたい。
「待ち続けようではないか」
大輪の花のように咲き誇る笑顔に囲まれた……そんな"本物の英雄"を。




