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緊張感のないアイツ


/天内視点/


 

 ――― クリスマスイブ:過去時空 ―――



「マック、モス、どむどむ、きんぐバーガー、どれが好き?」

  

 意味のない質問をした。

 マジで無意味な会話。

 

 カフェで隣の席でこんな話をしている奴が居たら、ツッコむ自信がある内容。


 俺からすれば会話の墓場。

 生産性のない文字の羅列。

 

「どむどむを入れるとは、天内。お前わかっているじゃないか」

 フィリスは感心した顔をした。


「ああ。俺は玄人だからな」

 

「流石だな」


「まぁ……な」

 

「どれも美味いな」

 フィリスは腕組みし、考え込む。


「ちなみに俺はモス派。ただモス派の中でも派閥があってな。大きく二つに分かれる」


「そうなのか?」


「ああ、シンプルでスタンダードな派閥。それとエビカツやライスバーガーなど変わり種を頼む派閥に分かれる。ちなみに俺はスタンダード派」


「ほう。ライスバーガーなるものもあるのか……それは食した事がない」


「だが、あれはおにぎりの亜種。バーガーではない。パティを米で挟んでいるだけだからな」


「ほう……バンズ代わりに米を使うのか。想像するだけで美味そうじゃないか」

 じゅるりと口元を袖で拭うフィリス。


「で? お前はどこが好きなんだよ」


「少し待て。考えているではないか。急かすな」

 フィリスは眉間を寄せた。

 

 こんな意味のない会話をしているが、明日、明後日の決戦の日で俺の旅路も終わりである。

 

 寿命も残りわずか。


 俺が失敗すればこの世は終わり。 

 だが、俺は無意味な会話を繰り広げる。

 

 ちなみに緊張感はない。


 秘技、日常のように非日常を過ごす呼吸。

 この呼吸法を体得しているからだ。

  

「おっと。天内。お前にしては軽率だぞ」

 フィリスはポンッと、拳を手の平で叩き音を鳴らす。

 

「なんだ?」


「フレッシュネスを忘れていないか?」

 フィリスは思い出したように選択肢を増やした。

 

「あ、ああ。フレッシュネスもあったな」

 

 なんだコイツ。

 俗世に染まり過ぎじゃないか?

 

 俺はオホンと咳払いし。

「そ、そうだな。行った事ないから忘れてた」


「甘いなぁ。ドムドムを入れている癖に、詰めが甘い」


「お、おう」


「しかしドムドムはいい。変わり種が多いしな」

 フィリスは物思いにふけりながら感想を述べる。


「そ、うだな。たまに行きたくなる中毒性がある。それでどうよ? 決まったか?」


「いや、待て」


「……お前、悩みすぎじゃない?」


「大事な事だからな」

 隣のエルフはつまらない事で悩み続けていた。


「大事ではないけど……」 


 俺は、ばったり会ったコイツと会話をしていたのだ。

 

 行き先が一緒のようなのだが……

 コイツ、まさかトウキョウまで下る気じゃないだろうな。


 ・ 

 ・

 ・

 

 陽が傾き、徐々に肌寒くなってきた。 


 なぜかトウキョウまでついてきたフィリスは買い食いの列に並んでいた。俺はそれを横目で見ながら、この後の探索のプランを練る。

 


 フィリスを置いて歩き出した。 



 深淵が如き召喚士が現れるのは今夜の12時過ぎ。

 俺が『夜の領域』と戦闘を開始する直前に仕掛けて来ていた事になる。


 そこで奴の面を割る。

  

「場所はわかってる……」

 

 地理の検討はついている。 

 俺が戦った摩天楼エリアは西シンジュクの高層ビル群エリアがメイン。

 

 今夜は霧が立ち込める。

 しかし、的確にアルターグリフの援軍を召喚し援護出来る場所。術者は高層ビル群のどこかに潜んでいる。おおよその検討はつくが詳細を索敵するのは困難。


「ローラー作戦になるが、俺の速さと音魔法があれば不可能ではないな」


 あ、そういや。

 この時空の俺は『夜の領域』戦後。

 最終的にトウキョウミッドタウン方面に墜落した訳だが……


 ――――嫌な記憶がフラッシュバックした。


「くっそ。せっかく忘れていたのに!」 


 そこで小町に拾われた記憶だ。


「あいつ。いらん事、言ってないだろうな」

 

 美人局のような脅迫材料。

 あの写真をばら撒かれたら終わりである。

 小町と俺が裸で寝ている写真。 

 でっちあげられた証拠。

 

 俺は冷や汗を拭った。


「ていうかさ……」


 俺は過去に跳躍し。

 現在時空では不在になっている。

 つまり、小町は俺の制御下に居ない。


「アイツ、癇癪起こして、暴発してないだろうな」


 もし、暴露していた場合。

 俺は社会的に死ぬ。

 

「……ちくしょう。ちくしょう。ちくしょう!」


 俺は地団駄を踏んだ。



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