ファンタジー世界の最大のタブー
/3人称視点/
風音は険しい顔をし、青年と接触していた。彼ら二人はゲイブレット戦で初めて共闘し、夢魔界でも共闘し既に旧知。その縁を頼りに密談していた。
風音は、青年の手に握られた一枚の紙を見つめ。
「戦いは終わっていない。そうだよね?」
「ええ。ご存じの通り、根本的な脅威は取り除かれていない。そこであなた方の協力は不可欠だ」
青年の手に握られた一枚の紙。
それは『設計図』。
「その前に、それは一体なんなんだ? 随分大仰に見えるが」
風音に同席するヴァニラは口を開いた。
「これは、人類史上最大最強の兵器に成り得るもの……その設計図の写し」
「……兵器?」
風音の眉がピクリと動いた。
その声音にはわずかな嫌悪が浮かぶ。
「これを持参したのには理由があります」
「ほう……興味深いな」
ヴァニラは腕を組んだ。
「これを使うには、貴方の協力が必須だ」
「私?」
「そう。ヴァニラさん。貴方しか出来ない。正確には貴方の異能:魔術がなければ制御出来ない可能性がある」
「ふむ……聞こう」
腕を組み心理的な防衛をしたままのヴァニラは静かに耳を傾ける。
「まず、現状の整理をしたい所ですが、先に、この設計図に関して結論から話しましょう――――」
青年は一枚の紙を広げる。
そこに記されていたのは―――
本来、この魔法が支配する世界にあってはいけない代物。
元々存在しなかった物。
戦争屋:錬金の魔人リリスによって持ち込まれた物。
――― 『戦略核兵器』の設計図 ―――
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/翡翠視点/
学園の地下。
黒と黄の放射能ハザードサインが至る所に掲示されていた。
組織は様々な研究を行っている。
研究室の一室。
モニターを眺める白衣の研究員達。
その中心には影の仲間:錬金術師のハイタカ。
「間に合いそうですか?」
私はハイタカに声を掛ける。
「実証実験が不十分ですが、既に完成してますぞ」
「よくやりました。これが?」
私は、モニターに映る金属のコアを眺める。
オリジナルの魔剣のコアが薄暗い室内に鎮座されていた。
「マスター曰く『プルトニウム』という物でしたね?」
続けて、私はハイタカに尋ねる。
「そうです。魔剣は未知の物質で出来ていました。が、まさかここまで危険な物とは」
ハイタカは肩をすくめる。
「そこまで、ですか?」
ハイタカは眉を寄せて顔を曇らせた。
「恐ろしく危険な物です。コアが1つしかない為、一度限りしか使えないのは惜しいですが……それは、ある意味救いかもしれません」
魔人リリスが隠し持った『異界の技術の設計図』と『魔剣のコア』。最後に『マスターの叡智』を元に再現した物……
それは……そこまでのものなのか?
私は生唾を飲んだ。
「国が堕ちます。見てください。シュミュレーションの試算では恐ろしい威力になりますから」
ハイタカは、研究員に指示を出す。
モニター上でシュミュレーションを開始する。
研究員は口を開き―――
「理論上の試算ですが。万が一、関東:首都トウキョウに落ちた場合……」
映像が映し出された。
「これは……」
私は、金属のコア1個から放たれたエネルギーに言葉を失った。
モニターに映し出されたトウキョウの衛星写真。
それは瞬時に黄土色に変わって行く。
死傷者数が演算されていき、数字を記すカウンターが跳ね上がっていく。
推定死者数は1000万人超。
それはまるで終末の数字。
負傷者を合わせた死傷者数は3000万人を超えていた。
「と、まぁ。この魔剣のコア……プルトニウムでしたな。これに秘められた莫大なエネルギー量を計算すると、このような絵空事のような数字が出ますぞ」
ハイタカは呆れたように空笑いを浮かべる。
モニターを見つめていた私は震える唇を噛みしめ、静かに目を閉じた。
「そ、そうか」
にわかには信じがたい計算結果。
こんな物、人類が所持していい物ではない。
マスターは一体何を考えているんだ。
私は身震いしていた。
「本当にやるので? 制御できるか、どのような影響が出るのかもわかりませんぞ。私は安易に使うべきではないと思いますが……」
困惑顔のハイタカは念押しとばかりに尋ねる。
長い沈黙が流れた。
「やる。マスターが帰還次第、作戦は、このまま実行し……予定通り開始する……終末の日。ダンジョンの中を焼き払い、ダンジョンが永久に使えないように『毒の結界』を施す」




