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隠しキャラ


/3人称視点/


 舞台は現代日本。

 人もまばらな電車に揺られながら現代のネット文化にどっぷりと浸かる社会人が居た。

 

 彼の日常は、無意味に思えるネット掲示板の閲覧に時間を費やすものだ。


 眼に映るのは、ネット掲示板。 

 スレッドタイトルは『チート能力強さ議論』。

 内容は妄言やトンチに満ちた中二病的な話題。

 

 通勤の合間の暇つぶし。

 いつもの何気ない、それでいて日常の風景。

 一見無意味な時間。

 

 だが、男は熱心にそれを眺める。


 画面には多くの能力が羅列する。

 同時に論破の数々も。

 時間停止、催眠能力、コピー能力、主人公補正。

 そして未来予知……。 


「くっだらねぇ」

 男は笑った。


 論破内容が、一見役に立たない話とトンチの数々なのだ。しかし、それが今後の……『次の人生』で重要になるなど予想出来ようはずもない。

 

 平凡な毎日の中で、男は無意識に知識を自然と蓄えていった。



 ・

 ・

 ・



 ―― 天内・翡翠・フラン ――


 

 翌日。

 正月にも関わらず―――

 学園の地下に違法建築したアジトの一角。


 フランが机の上のティーカップに紅茶を注ぐ。


 重大な脅威が潜んでいると気付いた翡翠。 

 彼女は天内に、自身の考えを共有していた。

 

「―――という訳です。『アルターグリフ』を操る強大な力を持つ召喚士が未だに潜んでいる」


「ふむ。それは推測している。それでどうしろと?」


 彼は強力な召喚士の存在は薄々感づいていた。


 しかし、彼の中では、真の脅威はフィーニスのみ。

 

 メガシュバに存在しないキャラクター。

 メガシュバに存在しないイベント。

 それは脅威になりえないと―――

 それ以外は、この世界の住人が解決する事が出来ると考えていた。

 

 ましてや、寿命が迫る今、余力のすべてをフィーニス戦に注ぎ込むつもりだった彼にとって、召喚士の存在は優先度が低かった。

 

 翡翠は少し言い淀みながら口を開く。


「……我々も尽力していますが……マスターの生存は……現時点で曖昧です」


 翡翠は言葉を濁しながら、ポツリと呟いた。


「単刀直入だねぇ」


「……はい。なので……ご健在の内に……マスターのお力をお借りしたい。私の直感が正しければ重大なインシデントを引き起こす……可能性があります」


(つまり、なんとかして欲しいと、そういう訳ね)


 天内は頭を掻いた。


「確かにグリーンウッドで現れた『巨人』。ガリアで現れた『蜘蛛』。夜の領域戦で現れた『時空の幻獣:アルターグリフ』。これらが終盤の局面で出るのは偶然が過ぎる。それは俺も疑念に思っていた……」


(お前らで何とかなると思っていた……が、翡翠にそこまで言わせるか)―――と思いつつも天内は目を細めた。彼は『夜の領域』戦で剣を振るう亡霊アレックスの影を幾人も見ていたのだ。


「…………ここ最近、俺はフィーニス戦で頭が一杯だった。しかし、フィーニス戦の攻略の糸口は見えている。全てのロジックは俺の頭の中に構築している」


「な、なんと!? それは凄いです! よ! 最強! 無敵! 不敗!」

 

 フランは目を見開くと拍手を送る。

 いつものヨイショが始まる。

 

「あんまり褒めるな。まぁフランがそこまで褒めたいと言うなら、やぶさかではないが」


「よ! 天才! 強靭! 抱いて!」


 フランの天内至上主義。

 彼女は悪ノリしていた。

 

 翡翠は咳払いをして話を戻す。

「……それで、お力になって頂けますか?」


 天内は一拍置いてから。

「翡翠の言う通り、超級の魔物を複数使役する召喚士が居るのならば、それは確かに脅威」

  

「全ては有象無象。ご主人様の前では敵ではありませんけどね」

 フランは鼻高々で感想を述べる。


 天内はフッと笑うと。

「まぁそういう事だ。大した事ではない。それに、召喚士の正体を暴くのは少し興味がある」


「で、では!?」


 彼は頷いた。

「お前らだけで手に負えないなら、俺が出るしかないか」


「ありがとうございます」


「よし。現時点で召喚士については情報が不足しすぎている。相手の能力や人数、動機すら不明」


 天内は立ち上がる手を顎に置く。


「とは言え…………全て(まく)る」


「やはり! 既に何か思いついているのですね! 流石ですわ!」

 フランは、いつも通り何も考えず称賛を送る。


 天内は肩をすくめる。


「成人の日までに召喚士を見つけ出せればベストだが、それが無理なら『終末の日』に決着をつけるけどいいか?」


「フィーニスが現れる日……なぜです?」


「その日、俺はフィーニス戦の前に一度だけ香乃の力を借りて『過去に戻る』。その後『終末の日』に行くから」


「そ、そうなんですか!?」

 翡翠は声を上げた。


 彼は頷き考えを述べる。


「召喚士が仕掛けて来たと思われるのが『夜の領域』が現れたタイミング。つまり『クリスマスイブ』。そこにジャンプすればソイツの足跡を見つける事が出来る」


「なるほど……」

 翡翠は唸りながらも、天内の大胆な計画に納得する。

 

「しかし、それは最後の策。成人の日までに片付けられればベストなのは変わりない。それが一番効率がいい。だからこそ情報を集めろ」


「承知」

 翡翠は頷いた。


 天内は細剣を抜くと。

「残りの敵がフィーニスだけでは味気がないと思っていたしな。俺も気になっていた召喚士とやらの面の皮を剥がしてやるか」


 遂に―――

 それは天内が、深淵の魔術師が用意した勝負の舞台に出向く瞬間であった。

 

  

 

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