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寒い場所から暖かくなった。
微睡みの中。
俺は思考の海で考えていた。
少し、メタ的な話をしてみようか。
例えば、『Aという作品』と『Bという作品』があったとしよう。
この二つの作品は、それぞれまったく異なる配給元から生まれ、独自の世界観で展開されている。ジャンルも違う。
わかりやすく例えるなら―――
Aは『現代を舞台にしたラブコメ』。
Bは『魔法の存在する中世ファンタジー』。
当たり前だが、これら二つの物語は交わらない。
それが自然な形だ。
もし交わった場合、どちらの世界観も否定され、物語として崩壊してしまうからだ。
例えば―――
現代を舞台にしたスポーツ青春物語の中に、ある日突然、魔法使いが現れたら?
あるいは―――
サスペンスの真剣な世界に、死んでも死なないギャグキャラが登場したら?
違和感を覚えるどころか、物語自体が破綻してしまうだろう。
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この前提条件の上で、俺には一つ疑問がある。
明確な謎――――
それは俺のロボ、極光。
コイツに関してだ。
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俺はコイツと融合すると『究極俺』になれる。リスクはあるが、極光の力をマニュアルで操作できるようになるのだ。
『極光:ブラックナイト』は甲冑姿をしているロボ。この世界で例えるなら、ゴーレム、傀儡、人形の類に近い。片言ながら意思疎通も、ある程度可能。しかし、恐らく感情はない。
機械的な学習を行い自身の知能を進化させている。
高度なAIとかに近いだろう。
これは明らかに『魔術世界』の産物ではない。
SF世界の技術で作られた存在だ。
極光について興味深いのは、こいつの出自だ。
そもそもコイツはメガシュヴァ制作会社の『別タイトル』のキャラクター。
メガシュバというゲームでは、夏イベントにて登場した。
スターシステム――
つまり、他作品のキャラクターを一時的に借りた異物だったのだ。
ブラックナイト。
光剣。
オルバース。
これら全てスターシステムで導入されたチート。
魔術世界にそぐわないSF的な産物。
宇宙を舞台にした『スタウォーズ』や『スタートレック』、あるいは『ウルトラマン』のような世界から来ている。
そうなってくると、ここで疑問が出てくる。
終末の騎士:狂乱者曰く、『メガシュバというゲーム』は『この異世界の行く末』を元に作られたモノ。メガシュバというゲームは終末の騎士:フィーニスによる異世界干渉で作られた。
フィーニスの意図は不明だが、神のような存在ならばそれも可能だ。
前世に近いこの世界は、多くの混じり物で出来た異世界文明のツギハギで出来ている。これは恐らく本当だろう。狂乱者が死に際に嘘を吐くとは思えない。何より、真実味があった。
だが、ここで疑問が残るのだ。
神が如き『構造の支配者』である狂乱者の言が本当ならば、『別タイトル』のキャラクターである極光が、この世界に存在している理由は?
なぜ『別タイトル』の存在が『フィクション』として片付けられていない?
俺はつい最近まで、この世界がゲームに近しい現実世界だと思っていた。疑念は持っていたが、メガシュバというゲーム背景が下地に確固としてあった。だから『極光』を疑問には思わなかった。
しかし―――
終末の騎士:狂乱者が語った事が『真』ならば、『別タイトル』の存在が、より際立って異質になってしまう。
つまり……何が言いたいかと言うと。
2重でメタ的な干渉を受けている事になっている。
一層目のメタ―――
俺たちの住む異世界は、『ゲーム:メガシュバ』の基盤である。
二層目のメタ―――
極光のような『別タイトル』の存在がこの世界に入り込んでいる。
これが何を意味するか?
結論から言うと、繋がりがあるのがおかしいのだ。
端的に言えば、『極光』という名のロボは魔術世界にいるべきではない。
だが、俺は『これらの力』がなければ終末の騎士に対抗する事が出来なかった。そして最後の作戦にも重要な『カギ』として機能している。
そんな異物。
本来有り得ぬ産物。
それが、なぜか『この世界の物語』に干渉する立場に居る。
まるで、俺自身のように……
「もしかしなくても……ブラックナイトが、この世界で一番得体の知れないモノかもしれないな」




