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1分


/3人称視点/



 トウキョウの地。

 不夜城のように大都会にはネオンが光り輝いていた。

 24日、時刻は23:59。


 

―――23時59分5秒

 


「チェックメイトですわ」

 夜の女王は勝利を確信し、不適に微笑んだ。 

 

 『感染の母:夜の領域』は、既に多くの『種』を市井(しせい)に蔓延させている。

 

 性交渉や粘膜接触を媒介に感染する『喰種化の宿主(しゅくしゅ)』。

 それは25日になると一斉に活動が活発化する。

 感染爆発が引き起こる時刻。

 

 それは25日、午前0時ジャスト。 


 歓楽街や娼婦を中心に仕込んだ宿主。

 それは今や指数関数的に都会の街を汚染していた。 

 日を跨ぐまでに夜の女王を倒さなければ予定通りイベントが発生する。感染者は完全なグールになり、未曾有のパンデミックが起こる……


 

 それは―――大虐殺と言う名の殺戮のシナリオ。

 


 その刻限が迫る中、摩天楼の頂上で―――

 



 




 ――――

 摩天楼のビル群を縫うように高速で『極光の閃光』が駆け巡る。 

 ――――

 







「最後まで気を抜くなよ! まだ終わっていない!」


 天内は快哉を叫ぶ。

 アレックスと眷属の数が減り、夜の女王の一瞬の慢心を見逃さなかったのだ。



――23時59分20秒



 高層ビルの屋上。

 冷たく無機質な床に夜の風が吹き抜ける。

 足元には眷属たちの屍が累々と転がり、血の匂いが漂う。


「今さら無駄。悪あがきね」

 

 夜の女王は勝利が揺るがないのか、依然余裕を崩さない。

  

 彼は細剣を天に向かって振り回し叫ぶ。


「見せてやろう! 頂きの景色を!」

 

 

 ――轟音が鳴り響く――



 摩天楼の彼方。

 夜空の果てから極光(ブラックナイト)が出現した。

 極光の閃光は夜の闇を切り裂き、天内へと向かう。

 主の呼びかけに応じた極光は、遂に天内と合流を果たしたのだ。


「待たせたな! この一撃、この一刀で全てを葬り去ると約束しよう!」

 

 その掛け声と共に―――

 光が収束し、彼らは二身一体となる。

 赤い髪は白銀に変わり、汗と血が混じる。

 鼻血が伝い、眼球から血の涙が滴る。

 吐血した。

 身体が震え、崩れ落ちそうになる―――

 だが、膝を折らない。


「くっ。ハハハハハハハハハハ!!」


 根性で笑みを浮かべた。

 しかし、その身体は、もはや限界。 

 それでも……

 彼の瞳には決して折れぬ光が宿っている。

 狂気にも似た執念宿る眼が、獲物を狩るために剥く―――



――23時59分37秒



 摩天楼の頂き―――最も高い場所。


 




 

 ――― 極光が輝いた ――― 

 

 





 摩天楼を覆う暗闇が裂けていく。

 闇を焼き払い、夜の女王の影をも消し去るほどの輝き。

  

 大都会を照らす光の奔流。

 

――23時59分59秒


 天空に散らばる黄金に輝く光の粒が、粉雪のように地上に降り注いだ。




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