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スケープゴート



 ―― 美魔女 ――



 この言葉、聞こえは良いが、実はひとつの矛盾を抱えている。「美」と「魔女」という対極の存在が同居しているのだから。意味するところは、見た目の若々しさに反して、実年齢がだいぶ上の女性を指すものだ。


 端的に言えば。

 『年甲斐もなく若者にチヤホヤされたい年増の若作りクソババア』

 の意味である。


 以前、ニクブやガリノにこの話題を振った時。


『天内! お前は口が悪すぎる! 頭も大概悪いが、口が悪すぎて俺はお前が怖い! 見ろ! 教務課のお姉さまがこっちを睨んでるぞ!』と注意を受けた。


 笑止。

 悲しいかな。俺の口は真実しか紡げないのだ。

 俺は生粋のピュアボーイなのだ。

 人生で一度も嘘を吐いた事がないのだ

 もう一度言おう。

 俺は! 人生で! 一度も嘘を! 吐いた事がない!



 さて、なぜこんな事を考えているかと言うと。



「香乃って、何歳なんだ?」という疑問がふと頭に浮かんだ為である。


 香乃の見た目は十代後半の少女の姿をしている。精々16とか17。良くて18歳ぐらいだろう。


 しかし、アイツは1000年前。

 『冒険を開始してから10年程経った』と言っていた。


 香乃は、あの時代のマニアクス討伐に、10年掛かっていた。そして、その後、香乃は『根絶者討伐』に、助っ人外国人よろしく俺をあの世界に召喚した訳だ。

 

 つまり、俺が加入した時点で、彼女は少なくとも26歳ぐらいだろう。


 難易度が高すぎた旅は、そこから1年ほどあった。

 俺は香乃御一行に荷物持ちとして1年ほど参加していた。

 

 26+1で。

「その時点で、アイツは最低でも27歳か」


 そう、香乃と別れる時点で、アイツの年齢は最低でも27歳だ。これは最低でもの換算なので、実際はもう少し上かもしれない。


 その後、アイツは現代に逆召喚された訳だが。


「一体、実年齢は幾つなんだ?」


 そう。曲がりなりにもアイツは勇者様。

 それに生真面目な奴だ。

 戦後復興を放り出すとは思えない。

 

 全世界を震撼させたパンデミックを引き起こした根絶者。さらにマニアクスがもたらした各地での争い。これを復興させるのは、10年や20年で済む話ではないだろう。魔法と言う概念がある以上、数年で済んだ可能性はあるが、それでもアイツは最低でもアラサーなのだ。

 

「美魔女かぁ~」

 俺は腕を組んでうんうん唸った。

 

 ・

 ・

 ・


 俺はヒノモトに帰還している訳だ。

 空港にて、ヒノモト行きの便を待っていた。


 さて。ガリアの首都プライマの街はボロボロであった。俺が仕掛けたボルカー戦は、風音を巻き込んで勝利した訳だ。


 多くの策を仕込んだ。


―― 決行日 ――

 STEP0 俺が魔人ボルカーへ強襲しHPを削る。


 STEP1 街に火を放つ


 STEP2 火を放つ事で帝国全体が混乱するので、首都の防衛が脆弱になる。


 STEP3 TDRはこの状況を巧みに利用し、連邦アークス側に『今が攻撃の好機』であると情報を流す。


 STEP4 大規模な動乱の中で、風音にとって正義を貫く事が避けられない状況を意図的に作り出す。勇者としての使命感の利用。ボルカーと風音との直接対決を演出。


 STEP5 連邦側を軍事的に誘導。


―― 水面下 ――

 1:アークスへの情報の流布。

 帝国が連邦に侵攻を計画しているとういう情報を流す。


 2:風音の誘導。

 ボルカーが魔人として帝国で暗躍しているという情報の流布。


 3:帝国側の非人道的な証拠の提示。

 連邦側が動くための『正義の』大義名分を作成。

 

 4:落とし所。ボルカー配下に全ての罪を背負って貰う。


―――

 これである。

 実際に実行に移すまでに時間を要したのだ。

 

 問題の落し所である生贄(スケープゴート)

 全ての反逆者として白羽の矢を立てたのは、ボルカー配下の聖教会の枢機卿:アレクシオン・フォルティスだった。


 『チキチキ! 敢えて生かして、全ての罪を被って貰おう大作戦』である。

 

 アレクシオンは高齢の老獪である。他のボルカー配下よりも権力を持ち影響力もあった老人だ。故に大罪人役として彼が選ばれたのだ。そんな彼への捕獲役は、フランじゃなければいけなかった。回復を行え、かつ腕が立つのは我々の仲間で彼女しか居ないからだ。


 フランは『調教』を行い、彼が暗躍していると言質を引き出させた。全ての証拠を白日の下に晒させたのだ。


 さて、そんなわけで。

「さようならぁ~」

 俺はアレクシオンに向かって手を合わせた。


 青空の下、アレクシオンがサムズアップしている情景が脳裏に浮かんだ。彼はA級戦犯として、あの世逝きの片道切符を手にした事だろう。つまり、俺はお尋ね者にならない。トカゲの尻尾切りの完了。全ては計画通りに進んだのだ。


「んじゃ、帰りますか」

 

 俺は静かに空を見上げ。


 ヒノモトへと戻る決意を新たにした。

 

 

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