『 運命の旅路 』
/3人称視点/
この世界に魔術をもたらした『始まりの魔術師』。
彼はこの星にダンジョンを、魔法という名の奇跡を創り出した。
その意志は、純粋に人々の未来を願うものであった。
始まりの魔術師の死後。
この星は恐るべき速さで栄華を極める。
同時に、奇跡の光の影に深い闇を呼び寄せた。
それは呪いの塊。
地上の侵略者:魔人マニアクスを引き寄せる。
彼らは世界を繁栄させる一方で、同時にこの星を混沌に導く。
人々は堕落し、繁栄を享受する。
しかし、荒廃の波は徐々に押し寄せていた。
彼らの目的はシンプルで明確だ。
人類を絶滅させ、この星を『獣の楽園』にすること。
その理念だけで動く存在たち。それが魔人。
そして遂に現れた。
終末の騎士:根絶者が。
全てを破壊する絶望の化身が顕現したのだ。
魔人はこの星を純粋に破壊し。
終末の騎士は逆説的に人類を滅ぼす。
過程と目的は異なるが、求める結末は共鳴していた。
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その者はあらゆる未来を見通す眼を持っていた。
あらゆる結末を見通す眼。
それが彼の持つ固有。
類まれなる魔術の才を持つその者は、それほどの力を授かったにも関わらず、未来を書き換えるほどの力がなかった。
神の視座を持っていなかったのだ。
未来を掴み取る力を持っていなかった。
未熟故か、それとも宿命か、運命か。
彼は無力感と虚無感に苛まれた。
結果――彼を変えた。
その者は幾つかの世界の真実を見抜いていた。長い時を掛けて、世界の裏側を見抜いたのだ。
この星の防衛機構。
膨大なエネルギーの塊である終末の騎士。
彼らの役目の真実をだ。
この星の終末を阻止する兵器の名。
星の守護者。それが終末の騎士であった。
彼らは絶望的な状況において、この星の防衛機構として機能する。
彼らの目的は逆説的であり極端なものであった。
生命抹殺と引き換えに星を救う者。
それは、生命を根絶やしにし、この星の存続を図る根絶者。
悪しき叡智を忘却させ、進化を促進する者。
新たな生命と文明の誕生を促す無慈悲な狂気の選別者。
文明を破壊し、一からやり直させる者。
進化の過程をリセットし、未踏の未来へ導く絶対的な破壊者。
奇跡を実行し、叡智を授ける者。
生と死を司り、叡智を以って星を上書きする願望者。
彼らの出現条件、それは……
「この世界が終末に向かう事」
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一度目。
それは偶然であり、この先の彼の運命を決定づける出来事であった。
未来を見通す彼が、まだ未熟で若く、その力の真価を発揮出来ていない頃。
1000年前―――
勇者と聖女、賢者は立ち上がる。
魔人と根絶者から世界を救う為に。
多くの仲間と、多くの友を、旅路の中で見つ出した。
過酷で悲劇に満ち、しかして希望と笑顔に満ちた旅。
人はそれを『運命の旅路』と呼んだ。
未熟な彼は楽しかったのだ。
彼にとって、過酷であったその冒険は、どれほどの金銀財宝よりも価値があった。
初めて汗を掻き、働いた。
多くの友と笑い合った。
生まれて初めて恋をした。
人々に感謝される喜びを知った。
生きている実感を持った。
この冒険を続けたいと思った。
何度でも。何度でも。何度でも。
「この『物語』を完結させたくない」
次第に、そう願うようになったのだ。
そして同時に憎むようになる。
物語を完結させた存在。
極光の騎士を――――
「過去に囚われる者」と「未来を切り拓く者」との戦い




