――――という、つまらない話
これは、『あとがき』である。
キーボードに「― 終わり ―」と打ち込んだ。
一応、これが最終回だ。
だが、本当の終わりかどうかは、君たち読者の想像に委ねよう。
それだけで十分だ。
彼がどんな選択をしたのか、それは君たちの想像力の中で補完される。
人の想像力は無限大だと、私は信じている。
このエンディングに、意味を持たせる必要はない。
価値もないかもしれない。
正直に言うと、ずっと前から彼の冒険には魅力を感じなくなっていた。早く彼を物語から解放してやりたいと思っていたのだ。
彼にとっての『ハッピーエンド』は、この手段でしか達成できなかった。
そして何より。
伝えたかったテーマは『人間の無力感』であるからだ。
皮肉なことに、彼が打倒しようとしていた存在によって、最良の結末が手に入るという人間の無力感とでも言うべきモノを描きたかったのだ。
彼は、物語のルール上『特別な主人公補正』を持っていなかった。それは絶対的な事実であり、そのルールを曲げるつもりはなかった。
それは物語の枠組み上仕方のない事であった。
彼はこのままでは破滅的な運命から逃れられない。
それが彼にとっての「補正」だったのだ。
なんという皮肉だろう。
いろいろなシナリオを考えた。
では、どうすれば彼は救われるのか?
その答えは、物語の中にいくつかヒントとして残してある。
最終的に頼るべき存在。
それは、終末の騎士というほぼ全能とも言える存在しかなかった。
この物語の枠組みの中では必然だった。
初めから仕組んでいた。
そして最後に終末の騎士は選択を迫るのだ。
選択は二つ。
『彼と彼の愛する者のみを救済する』と言う名の、彼にとっての最初の願いである。『個人的な幸せ』。
その代償としてそれ以外の人類は絶滅。
もう一つは
終末の騎士は打倒できるが。
『現実と言う名の理不尽さを痛感させる破滅的な結末』
その選択の場面で―――
もし彼が、終末の騎士が提示した提案を拒むならば。
全てが無に帰す。
彼自身も、登場人物たちも、皆死んでしまう。
だが、もし受け入れるならば、彼と彼が愛する者だけが救われる。
人類を犠牲にして。
正義も悪もない。
どちらも正解なのだ。
ただ選ばれた結末があるだけ。
それしか、物語の整合性を保つ方法はなかった。
そして――あえて、彼が最終的にどの選択をしたのかは書かないことにする。
これで物語は終わりだ。
だが、結末は読者の手に委ねられている。
・
・
・
カランコロン―――――
ドアベルの音が響いた。
「待てよ。勝手に終わらせるんじゃねーよ。まだ勝負は終わっちゃいない」
「ほう、来たか。素晴らしいな。本当に」
「物語は、まだ……終わっていない」
まるで第四の壁を越えるかのように。
私の前に挑戦者が立っていたのだ。
「天内くん」




