エンドロール
―――暗転する。
映画を一本見終わった。
本を一冊読み終えた。
舞台の幕が下りる。
そんな感想だった。
何もない無の空間。
色もなく。
音もなく。
ただそこには何もないのだ。
すると。
役者の配役表が流れるように―――
ただ文字列が下から上へ。
流れていく。
そんな気がした。
狂乱者の囁く。
文字が暗闇に浮かんだ。
気がした。
「選びたまえ」
エンドロールのように。
ただ文字が流れていく。
「『過酷な現実』か」
「それとも、『君個人の幸せ』か」
深い、深い深淵から語り掛けるように。
そんな言葉が響いたような気がした。
「天秤には『二つの未来』が乗っている」
甘い、それは酷く甘い言葉。
「君に『失われたモノ』を取り戻す機会を与えよう」
箇条書きのように―――
「これが私の提案」
ただ流れるだけ。
「天内くん。君はもう間もなく死ぬのだろう?」
情報の羅列が―――
「今、目の前にはあるのは『君が望んだ幸福なる結末』だ」
ただ流れ落ちる。
神が如き存在は―――
「私ならばそれを用意できる。魅力的だとは思わないか?」
そう締め括る。
― 終わり ―




