攻略戦④ 主人公参戦
/3人称視点/
街の中心部から轟音が鳴り響く。
建物が倒壊する激しい戦闘音と遠方にまで届く地鳴り。
遠目からでも異様な光景が見てとれる。
潰れた車両は空高くまで舞い上がり。
火炎を纏う半壊した家屋が宙を舞っているのだ。
その直後――
それらは不可視の斬撃によって木っ端みじんに切り刻まれ垂直に降り注ぎ下降していく。
最も苛烈な戦闘の中心地だと誰もが理解出来た。
動乱が巻き起こっていた。
多くのガリア兵や多国籍の魔術師が協力して住民を郊外へ誘導、避難させている。
その理由は、街が業火に包まれているだけではない。
南朋は悪態を吐きながら風塵の魔法を飛ばす。
「なんで……ダンジョンの中の魔物が!?」
緑色の体液が地面や壁に付着する。
天内の意図しない出来事。本来ダンジョンから出る事が出来ない魔物があふれ出しているのだ。
風音は100を超える魔物の大群を斬り伏せた所であった。
風音と南朋は魔物を斬りながら最も激しい戦闘地へひた走る。
戦いの中心部へ我先にと駆け出したシステリッサ。
それを追いかけたイノリ。
彼らが向かった戦いの中心部へ急ぐ。
まるでそれを邪魔するように目の前に湧き出る魔物達。
「くっそ。一体どこから」
風音は焦っていた。
想像以上に戦闘の中心部の音が激しいのだ。
何度目かの爆音。
「魔人が暴れているのよね?」
南朋は顔を青ざめさせながら問う。
「恐らく」
2人が戦闘の中心部に向かうほど、周囲には異常な光景が広がり始める。
タイル張りの地面は大きくめくれ上がり、大地が無理やり引き剥がされたかのような惨状が広がる。尖塔は横から建物に突き刺さり、車両だったものはまるで小石のように丸められていた。
数時間前までは整然としていた街並みは、今や瓦礫の山と化していた。
風音は走りながら周囲を観察する。
分かり辛いが、ガリア兵と思われる亡骸もあった。
肉片が飛び散り人の形を保っていない。
赤と白の特徴的な外套がなんとかガリア兵だと辛うじてわかる程度なのだ。
「大丈夫なのか……シスとイノリは」
風音の胸中に不安が広がる。これほどまでに苛烈な戦闘の中で、彼女たちは無事なのか――その答えを知るために、さらに足を速める。
突然、南朋が足を止め、空を見上げた。
「アレは……なに?」
彼女の眼は遥か天空を見上げながらふとそんな言葉を口にした。
「え?」
風音も南朋の視線を追う。
遥か彼方の天空には12枚の白い羽を生やした『何かが』浮いていたのだ。
「今は……急ごう!」
風音はそれを気に留めながらも、戦場の中心へ向かう。
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/風音視点/
戦闘の激しい音が近づいてくる。
何度目かの区画を曲がると―――
目に飛び込んできたのは――臓器だった。
壁にベチャリと貼り付く臓器の塊、至る所に血飛沫が散り、首が転がっている。無造作に捨てられた四肢が散乱し、地獄のような光景が広がっていた。
人だった者の亡骸の数々。
「なにこれ?」
南朋はあまりの壮絶さを見て絶句し、震える。
戦いの渦の中心では黒いローブを被った二刀流の騎士が、魔人と激闘を繰り広げていた。
多くの魔術師や騎士が取り囲みながら無力感に包まれた表情で、戦場を見守っていた。下手に介入すれば、巻き込まれて命を落とすことがわかっているからだ。
黒いローブの騎士は見事な槍捌きで間合いを計りながら攻撃をいなし、右手の剣で反撃を加える。さらに不可視の斬撃が追従するように大地を削り、魔人の皮膚に激突すると火花が散っていた。
黒いローブの騎士には既視感があった。
「まさかファントムなのか!?」
思わず声を上げた。
アレは聖剣が倒したはず。
世間的にも死亡した事になった。
にも関わらず―――魔人と戦っている。
「風音!」
額に汗を滲ませたシステリッサが駆け寄ってきた。隣にはイノリの姿もある。
「良かった。無事だったんだね二人とも」
僕は一息つき、とりあえず胸を撫で下ろす。
「そんな事はどうでもいいの。早く加勢を!」
システリッサは険しい顔で叫んだ。
「どっちの!?」
「馬鹿! あっちに決まってるでしょ。あの大きい方!」
システリッサが指差したのは、黒い皮膚をした巨躯の魔人。
「いや、でも」
あの黒いローブだって多分ファントムだぞ!?
「いいから!」
システリッサの言葉が鋭く響く。
僕は状況を整理するよりも先に直観を信じる事にした。
頭を掻きむしって。
「よく分からないけど! 祝福をお願い」
「ええ」
システリッサは僕に加護を付与する。
黒いローブの騎士:ファントムに加勢する事にした。
今後、戦闘シーンが入り乱れます




