攻略戦③ 天内パーティー と ボルカー配下
/3人称視点/
――― 首都の方角から黒煙が立ち上る ―――
崩れた宮殿の回廊で小町とセリーナはお互い向き合っていた。
回廊に差し込む月明かりが2人を分かつ。
小町はセリーナの足止めをする為に前に立ちはだかったのだ。彼女の役目はセリーナがボルカーの指揮下に入る事を阻止する事。
ボルカー配下の実力者が、街で暴れる魔人形態のボルカーを帝国側だと誤認するよう働きかければ、天内や風音が自由に動く事が出来なくなる。
それを防ぐにはどうしても足止め役が必要だったのだ。
現時点。
別の場所では―――
マリアはハインケルと。
千秋はアドリアンと。
フランはアレクシオンと。
それぞれがボルカー配下の実力者と相対していた。
「はぁ~」
小町は深いため息を吐く。
「貴方……この状況でこんな事をして、後でどうなるかわかってるの?」
セリーナの鋭い視線が、小町を貫く。
「わかってますよ。ほんとヤバいですよね」
彼女は呆れたように鞘に手をかける。
言葉とは裏腹な行動にセリーナは眉をひそめる。
「今なら見逃してあげるけど」
小町は一瞬伏し目がちになるが、キッパリと。
「ごめんなさい。無理です」
「……このままなら死刑よ。貴方」
セリーナは、脅しとも取れる言葉を吐く。
「だからヤバいですよね。このままだと」
小町は苦笑いしながら柄を握りしめる。
「馬鹿なの?」
セリーナの言葉には苛立ちがにじむ。
「心外ですね」
「どういう事をしでかしているか、自分でわかっているのかしら?」
「わかってますよ。貴方をここから先に向かわせない。戦場に向かわせない。それだけです」
小町はキッパリと自分の役目を回答した。
「この動乱の中でそれが死罪になる事は理解してるのでしょう?」
「う~ん。大丈夫でしょう。先輩がなんとかしてくれると思うので。それに貴方は悪者らしいので」
小町のあっけらかんとした返答に、セリーナは唖然とする。
「らしい……そんな訳の分からない推論で、こんな事をしでかしているとでも?」
「根拠ですか。それをつつかれると痛いですが、私は先輩を信じているので。だからここに居るんですよ」
「……先輩?」
セリーナは細剣を抜くと、小町に切っ先を向ける。
「まぁ、あの馬鹿が、初めて頼ってくれたんですよ」
「どういう意味?」
「仲間が頼ってくれたんです。ここにこうして私が立ちはだかる理由なんてそれだけで十分でしょ?」
「国家犯罪の片棒を担ぐ事になっても?」
「こっちも心中覚悟なんです。それに……これが間違いじゃないと、思っていますよ」
「根拠が薄いわね」
「ええ。そうかもですね」
「認めるのね。破綻と矛盾を」
小町は天内のように嫌らしく笑うと。
「そもそも根拠なんて必要ないんです。この眼は何が真実か嘘かを見抜く事ぐらい出来るので」
青白く光る小町の眼が、セリーナを見据える。
「殺し合いをする気という事でいいのね?」
セリーナは鋭い声で問いかける。
「出来ればそうならない方がいいですが……」
小町は刀を抜いた。
「やりましょう。貴方がその気なら」
小町は刀の切っ先をセリーナに向ける。
「愚かな思考だわ」
「それは全てが終わった後にわかるんじゃないですか?」
「大人しく大きな流れの中に身を任せればいいものを」
小町はそれを無視すると。
「先輩と同じ細剣……世界最高峰の剣士の弟子である私がどれほどのモノか見極めてあげますよ。貴方の実力を」
明らかに舐められたセリーナは額に青筋を浮かべながら。
「大きい口を叩くわね」




