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ダンジョン① 情報共有と最終調整


 雑踏の中に浮かぶテラス席。

 俺たちは密談を始めた。

 周囲は一般人ばかりで、そこに溶け込むように俺と強面の壮年の男性のハイタカ、そして猫耳の獣人・ミミズクが座っている。


 異様な取り合わせだったが、慣れたものだ。

 

 音魔法をかけ、会話が外に漏れないようにする。


「情報共有を頼む。まずは……」

 俺はテーブル越しに二人に向けて話を切り出した。


 ハイタカが重々しい口調で。

「翡翠氏と雲雀(ひばり)氏の消息が不明の件ですな」


「そうだ。何があった」


「ターゲットの調査中に、居なくなったにゃ」

 ミミズクが冷静に応じた。


「ふむ。ターゲットとは?」


「ガリア帝国の騎士団長。ハインケルという男の調査にゃ」


 ハインケル。

 翡翠が名前を挙げていたな。

 嫌な予感が頭をよぎる。


「アレを調査中。消息を絶ったにゃ」


 ハイタカは淡々と。

「正直……討ち死にした可能性もありますなぁ」


「かもしれんにゃ」

 ミミズクも同調した。


 マジか。翡翠と雲雀。

 マホロ生より潜在能力は劣るものの決して弱くはない。

 なぜなら俺が直々に鍛えたからだ。


「死体は?」

 俺は期待を込めて尋ねる。


「まだ見つかってないにゃ」


「という事は、生存しているかもしれんな」


「ですな」


「お言葉を返すにょうにゃけど」

 ミミズクは慎重な口調で口を挟んだ。

 

「わかってるよ。高望みはしない」

 

 俺も2人も、命のやり取りをしている分。

 仮に仲間が道半ばで倒れたとしても。

 即座に切り替えるようにしているのだ。

 カッコウの時もそうだった。


「それで、捜索は?」


「現状難しくなっているにゃ。想像以上に動きを警戒しているようにゃ」


「ふむ。隠密に動いていたつもりだが……」


 帝国の対応が早すぎる。

 何かを掴んでいるのか?


 ハイタカは付け加えるように。

「とはいえ、組織の人間を使い情報収集はしておりますぞ」


「消息を絶ったと思われる地下道は今、厳重にゃ」


「帝国騎士団の警備が堅く、実地検証に行けないといった所ですな」


「そうか……やはり勢力としての脅威はボルカーだけでないか」

 

 数名実力者を挙げて居たが。

 その中に勘のいい奴が居るんだろうな。

 それがハインケルなる男かもしれん。


「それだけにゃないにゃ。多くの組織が入り乱れ始めているにゃ」


「多くの組織?」


 ハイタカは口を開くと。

「連邦の捜査員(スパイ)も動きが活発になっているのですよ」


「帝国の仮想敵国である連邦の連中が水面下で動きを始めているのは当然だろう。しかしなぜ我らと同じタイミングで?」

 

 タイミングが良すぎないか?


「アドリアン・ウォルバクが原因にゃ」


 アドリアンか。

 また名前が出てきたな。

 以前の作戦会議でも出てきたな。

 確か魔人薬を作っているとか、なんとか。


「天内氏もご存じかと思うが、あれは違法薬物の研究と蔓延の中心人物なのですよ」


「らしいな」


「どうやら、今回の親善試合をきっかけに亡命する算段のようにゃ」


「亡命? アイツは元々連邦の人間だろう? 帝国に寝返るつもりか」


「そうにゃ」


「……もしかして裏切り? それを警戒して」


「う~ん。それもあるんにゃろうが」


「ん、どういう事だ?」


 ミミズクは続ける。

「そもそも海洋国家と帝国とも通じていた危険人物にゃ。それを勘付いている者も居たようにゃ」


「とはいえ。アドリアンの捜査に当たった者は不審死や行方不明になっていますがな」

 と、ハイタカは付け加えた。


「証拠がなかった分、動きようがないようにゃけど。元々連邦の中でも要注意人物として目を付けられていたようにゃ」


「そ、そうか」

 ジュードがこの場に出張って来たのも関連がある可能性もあるが。アイツはマニアクス専門だ。


 う~ん。


 メガシュヴァではそこまで詳細に作り込まれていなかった。アドリアンなるキャラの存在もなかった。ゲームではヒノモトに侵攻してくるマニアクスとその配下を蹴散らすのがストーリーラインだからだ。


 戦闘シーンでの敵モブとの交戦は複数回あった。


 しかし。

 ガリア男兵A。ガリア女兵B。

 のようにキャラメイクは全部判子絵。

 

 もしかしたらその中に居たのかもしれない。


 と、言う事は。

 

 ゲームでモブとして処理され。

 見落とされた中に相当に出来る人材が多い。

 彼らがこの世界では異常な強さに変貌しているのだろう。 


「ハイタカ。俺の武器の強化はどれほど進んでいる?」


「追加100は、急いでいますが、受注からまだ3日ほどですからな。まだまだ予定まで、ですな」


「だろうな」

 

 答えをわかっているのに問いかけてしまった。

 きっと、内心焦りが出ているのかもしれない。

 こっちの仲間がどんどん削られている。

 武器の強化が待ち遠しかった。

 

「ハイタカ」


「なんでしょう?」


「お前はこのまま、俺の武具の強化を頼む」


「わかり申した」


「ミミズク」


「どうするにゃ?」


「情報収集をしたい所だが、お前は監視に切り替えろ」


「了解にゃ」


「翡翠と雲雀の探索と情報収集は、組織の人間に続行させろ。深入りはさせるな。痕跡を探すだけでもいいと伝えておけ」


 ハイタカとミミズクは頷いた。


「ボルカー配下の情報収集を行いたいところだが、俺は一度ダンジョンに潜る」


「このタイミングで、ですかな?」

 ハイタカが驚きの表情を浮かべる。


「最もな意見だがな。行くよ」


「その心はなんですかな?」


「俺らの予想より手強い連中が居るかもしれん」


「「……」」

 2人は押し黙った。


「それに。フランは現状でも強いが、万が一に備え強化したいし、俺ももう一度調整しておこうと思ってな」


「ですか」

 ハイタカは納得したようだ。


「どこまで強化出来るかわからんが……」

 俺は三つ指を立てると。

「3日だけ潜る予定だ」


「結構潜るにゃ」


「風音やターゲットに動きがあるかもしれんから。早朝に潜って夕方には戻って来るよ」


「なるほどですな。そういう日程ですか。『闇』は昼に動きが鈍くなりますものな」


 俺は頷いた。

「そうだ。丸々3日潜る気はない。三日連続でダンジョンに行くという表現が近いかもな」


「わかったにゃ。こっちも昼間メインで動くにゃ」


「本能で危険だと感じたら、撤退しろ」


「オッケーにゃ」


 俺たちは再度頷き合い、会話を終えた。


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