そして鐘の音は鳴った⑮ 頂きの景色
/3人称視点/
豪雪の大地に。
ヴィヴァルディの『冬』の旋律が奏でられる。
――59秒
「最後に言っておこう。俺は剣士ではない」
天内はアドリアンとセリーナに冷徹な宣言をした。
――53秒
「何を馬鹿げた……そんな言葉に惑わされるとでも?」
セリーナは内心の不安を隠しながら、細剣の切っ先を天内に向けた。剣の先端から紫電が放たれ、戦意を示す。
――49秒
「剣士じゃない? 一体何を言ってるんですか? 先輩は……」
遠くから見守る小町は、その言葉の意味を掴みかねていた。
――48秒
フィリスは息を呑んだ。
天内の眼差しに何か尋常ではないものを感じ取っていたのだ。
「何を……する気なんだ……?」
――47秒
「下らぬ世迷言なのである!」
アドリアンは苛立ちを隠せないまま叫んだ。
「世迷言か、確かめてみるか?」
「貴様の能力は全て分析済みなのである!」
「ほう。では上書きしておけ」
「随分と減らず口が好きなようであるな!」
怒りを露わにする。
――40秒
「聞いてはダメですわ。相手のペースに巻き込まれます」
セリーナはアドリアンを制す。
「で、あるな」
――35秒
天内の瞳が輝くと。
「見せてやろう。頂きの景色の一端を。仰ぎ見ろ、天を!」
――30秒
皆が一斉に空を見上げると。
驚愕の表情を浮かべた。
「「「「は?」」」」
驚き、畏敬、恐怖、絶望。
様々な感情が一斉に巻き起こった。
――25秒
空を覆う煌めき、夜空に浮かぶ星々のように、数えることすら叶わぬ光が広がる。
小町の目が見開かれ。
「な、なんですか、これは!?」
フィリスの口が開いたまま固まる。
「こんな事が出来るのか、天内は……」
――20秒
空中には無数の武具が宙に浮かんでいた。
武具の雨。
大小様々なあらゆる種類の武器が空に浮かび。
まるで無限に続くかのように広がっていた。
一目で数えることも困難な量、100、200、300、それ以上。
――15秒
天内は静かに目を閉じ、
「掃射準備完了」
無慈悲な冬の突風が舞った。
「貴様らに隔絶した差を見せてやろう!」
――10秒
「ああああああああああああああああああ!」
アドリアンは恐怖に駆られ、絶叫した。
「いい顔するじゃないか、アドリアン」
「こんなの……嘘……よ……」
セリーナの細剣が恐怖で震えていた。
――5秒
終末の騎士と戦ってきた者とそうでない者の隔絶した差。
天内のレベルは極地に達していた。
「エクストラ……バレット」
刃の雨が、まるで冬の嵐のように降り注ぐ。
大地を削り去る刃の雨が降り、跡形も無く両名を消し去る。
――0秒
土煙が立ち込める中。
天内は一言。
「ジャスト1分。良い夢見れたか?」




