表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
294/457

そして鐘の音は鳴った① 私はお前を勘違いしていたかもしれない


/3人称視点/


「す、すまない。越智先輩を見失った」

 息を切らせたフィリスが焦りの色を見せる。


「豪雨もあって音波索敵(ソナー)で掴みにくいな。スナイパーだけあって隠れるのが上手い」


「足を引っ張っているな」

 フィリスは自嘲気味に言い、肩を落とす。


「いや、いいさ。十分貢献してくれている」

 天内は軽く肩を叩いて笑顔を見せた。

「この雨だ。全学園のスナイパーの視界・聴覚・弾道の軌道を妨害している時点で上出来どころか、MVP級なんだぜ」


 フィリスは少し驚いたように顔を上げ。

「あ、ああ。そう言う事か。お前そこまで計算に入れているのか」


 肩をすくめながら。

「当たり前だ。スナイパー対策は必須だ」


「な。なるほど。お前、本当に頭が良いのか?」


「普通の事だ。それに厄介なまつり先輩を削れたのはいい。今回、ネームドを3人削れた」


「ね、ねーむど?」


 天内はそれにはツッコまず。

「マホロはモブとメインを入れて最大でも16人しか居ない。実際はもう少し減ってそうだが。エリックとアドリアンが小型爆弾がどうのと言ってたし……」


「特攻をするとかしないとか言ってたな」


「二日目って事もある。アイツらもマホロのモブを削っていてもおかしくないかもな」


「もぶ? さっきから未知の単語が多いな。暗号か何かか? どういう意味だ?」


「あれだよ……特別強い奴とそうでもない奴って意味」


「なるほど。そういう暗号なのだな」


「ま、まぁな。暗号学の授業で習うから覚えとけよ。これは非常に難解なんだ。俺は今、予習してる最中」

(嘘だけど。そんな暗号ねぇよ)


「そ、そうなのか。暗号学にも精通しているのか……お前。やはり頭が良いのではないか?」


「ま、まぁな。実は古代語なんだよ。由来は神聖ガリアの初代皇帝ロムルスが作ったとされている。妃のペンシルベニアと文通をしたとかしないとか」

 

 天内は何の躊躇いもなく口から出まかせを紡ぎ続けた。ちなみに全て真っ赤な嘘である。


「歴史の知見もあるのか……流石我がヘッジメイズの代表だな。とぼけた奴だと思っていたが、見直したぞ!」


 フィリスはますます感心したのだ。


「まぁ。そういう事だ。勉学に励み(たま)えよフィリスくん」


「しかし……ロムルスだったか? 確かガリアの初代皇帝は」


「フィリス!」

 詮索されるのを困った天内は大声を出して遮った。


「な、なんだ?」


「それよりも、みんなは? ダイジョブなのか? 俺はそれが心配だ! 心配でたまらん!」


「あ、ああ。居るぞ。みんな無事だ」

 と、彼女は残り3人のメンバーを指差した。


 天内はそれを確認すると。

「ホントだ。良し。とりあえず良かった」


 2人してメンバーの下に歩き出す。


「そういえば、お前。さっきの芸当も隠し持っていたのか」


「芸当? 速攻で終わらせた事か?」


「そうだ。目にも止まらぬとは、この事だと思った」


「あーね」


「天内が森守先輩を斬った後、私達は越智先輩を追おうとした。その後、振り返ったらお前は全てを終わらせていた。あれには目を疑ったぞ」


「まーね」


「認めよう。お前は強く。それに頭も切れる。勉学にも秀でているようだ。ヘッジメイズで主席を取るだけはある。不正でもしているのでは? と少々疑っていたが私の間違いのようだ」


「大したことはない。影で努力しているだけだ」

(不正の努力はしてる。真面目に勉強とか、かったりーし)


「ふむ。謙虚だな。しかし、先ほどの妙技、ヘッジメイズで格を示した時ですら本気ではなかったのか?」


「必殺技はここぞという時にしか使う気はない」

(入学試験では使った。でも、それ以外は使うまでもなかったんだよね。君ら雑魚過ぎて)


「力を誇示する事もないか」


「そう。力でどうにかなる世界など無意味。

 そんなものに意味はない」

(そう。この世は金なんだから。暴力なんて意味はない)


「ほう。感心したなぁ」


「なんだ今頃か?」


「そうかもな。この親善試合、お前を見直す事が多い。全く疑いようもないな」

 

 フィリスは腕を組み『うんうん』唸っていた。

 

「随分褒めるな」


「我がヘッジメイズの代表として実に頼もしい限りなのだ! 私は嬉しいぞぉ! うむうむ!」

 

 フィリスは天内の背中を叩くと『バンバン』と音が鳴った。


「お、おう」


「悔しいが、強さにも固執もせず、頭も切れ、謙虚でもある。少々金に汚い所はあるが、それを差し引いてもお釣りが来るな。いや、むしろ愛嬌とも言えるな。うむうむ! いいぞぉ! 天内!」


「お、おう……ど、どうした」


「お前が居れば、我らヘッジメイズの悲願の初優勝もあり得るかもしれんな!」


「まぁー、多分大丈夫じゃね? 少なくとも最終局面まで全員連れてってやるよ」


 その言葉を聞くとフィリスは眼を輝かせる。


「おおぉ。いいぞぉ! 天内良く言った!」


「まぁね。お前らを勝たせてやりたいし」


「そ、そうか。うむうむ! 我がヘッジメイズの代表は口は悪いし、金に汚いが、実にいいぞぉ!」


「さっきから、それは褒めているのか?」


「褒めているとも!」

 と、ご機嫌になったフィリスは天内の背中を力強く叩き続けた。


「なんかキャラ変わってない?」


「そんなことはないとも!」


 フィリスの力強い言葉に若干困惑した天内であった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ