表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
286/457

鐘の音を鳴らせ!③ 青春の一コマ

1ミリも前進してません。日常回です。


 脳筋集団ヘッジメイズの連中をビシバシしごいた。

 明日からは脳筋プレイで乗り切る。

 自慢の筋肉で圧倒してやる。


 俺は伸びをして、外に出ると。


「や!」

 パーカー姿のラフな千秋が俺に向かって手を振った。


「お前ら……俺の事好きすぎじゃない?」


「な!? そんな訳ないだろ」


「ええぇ……流石に鈍感ボーイの俺もバカじゃあない。なんだよ。もしかして告白でもしに来たのか?」


「勘違いするなよ!」

 ぷんすかする彼女は、俺の後ろに連いてきた。


「そうなのぉ~? 答えはいつだってノーだ。

 じゃあな。さようならぁ~。ばいば~い!」


「バカにしやがって! 待てよ!」


 俺の後ろをツカツカ歩いてくる彼女は小動物のようであった。


「で? なによ」


「君が全然連絡を寄越さないのが悪いんじゃないか」


「まぁ……用はないし」


 彼女は苦笑いすると。

「ひどいな。君は」


「それで? 文句でも言いに来たのか?」


「文句?」

 キョトんとする彼女。


「いや、なんでもない」


 不思議そうな顔をした千秋は。

「あっそ」

 と、一言返答した。


 俺と千秋はぶらぶらと外を歩く。


 俺は街の飯屋を指差しながら。

「ラーメン屋がよぉ。この街ないじゃん」


「そうだねぇ~。パン屋さんばっかり」


「定期的にさ。米と麺は接種しないと元気でないよなぁ」


「わかるぅ~。パンだけじゃ物足りないよね!」


「美味いよ。確かに。パン。けどさぁ。そうじゃないんだよな」


「わかるよ。うん凄くわかる。そうじゃないんだよねぇ。なんだか物足りないよね」


 2人して、うんうん頷く。


「栄養素はさ。多分似たようなもんなんだよ」


「そうだねぇ。うんうん」


「「けど違うんだよなぁ」」

 お互いハモッた。


 俺は思い出したかのように。

「あ。そういや。最近出たモスのチーズ照り焼きバーガー。

 馬鹿うめぇぞ。アレ。びっくりしたわ」


 千秋は興味津々で。

「ホントに!?」


「マジマジ。今度行こうぜ」


「行こう! いつ行く?」


「また連絡するわ」


「うん! 待ってるよ」


「おっけ~」

 と、俺は指で丸を作った。


 千秋は。

「モスは通常のノーマルも美味しいよね」


「わかる! トマトのさぁ。あの瑞々しい感じが旨いよな」


「だけど高いよね!」


「そうなんだよ。マックより高いんだよな」


「ちょっとお小遣いに余裕がある時しか食べれないよ」


「あれさぁ。知ってか?」


「なに?」


「モスのバーガーを1人で3個買うと、店員に止められんだよ」


「なんでぇ?」


「『お客様! 破産しますよ!』って止められんだよ」


「んな訳ないだろ! ウソツケ!」

 と、彼女はツッコんだ。


「ウソではない」


 目を丸くした彼女は。

「ホントに?」


「ウソ」


「ウソじゃないか」

 と、千秋は再びツッコみを入れるとお互い笑い合う。


 2人して、橙色に包まれた街中を歩く。


「あとさぁ。この街、全部オレンジ色のライトばっかで、なんかやだなぁ」


「え~、なんでよ? 綺麗じゃんか」


「俺はね。シティボーイなの」


「都会人ぶって」


 俺はチッチッチッと指を振る。

「わかってねぇな」


「はぁ? どういう事さ」


「蛍光灯は白! 光は白! これがいい! 理由はわかるかね? 千秋くん」


「わかんないよ。好みの問題だろ。ボクは暖色の方が好きだよ。落ち着くもん。みんなもそうじゃない?」


 俺は『はぁ~』と大きなため息を吐くと。


「なにさ」


「千秋のさぁ。お宅は暖色で固めてたりする?」


「そうだねぇ。比較的」


「それ。埃とかめっちゃあるから。きったねぇ~」


「なんでだよ! 掃除してるよ!」


「皆そう言うんだよ。

 暖色にするとさ。

 汚れが目立たなくなるんだよ。

 お前の家、多分汚れてるぜ」


「いや、だから掃除してるって! 見に来いよ!」


「行かねぇよ。ハウスダストになったらどうすんだよ。俺喘息持ちだもん」


「ウソツケ!」


「ほんまだが?」


「ホントに!?」


「ウソ」


「またウソじゃないか!?」


「間抜けは見つかったようだな」


「意地の悪い奴だ」


 俺は話題を切り替えるかのように。

「そういやさ。1億あったらなにする?」


「お金があったらの話? 突然だねぇ」


「会話に意味なんてないだろ」


「まぁそれもそうか」


「そうそう」


「う~ん。大金だなぁ~。なんだろう?」

 千秋は考え込んだ。


「じゃあ。俺にくれ」


「待てよ。考えてるだろ」


「じゃあ。俺が銀行員のマネするね」


「うん。いいよ」


 俺は銀行員のマネをすると。

「彩羽さん。なんと、1億円当選しました! ハイどうぞ。札束ボン!」

 と、ジェスチャー込みで演技した。


「う~ん」


「断っときます? 大金だろうけど。今回はごめんなさいしときますか」


「待って。え~っとね。大きい家を建てる!」


「どこに建てます?」


「えぇ~っと。どうしよ。実家の近くかなぁ」


「そうか。うんうん。自分の為に使うのか」


「まぁね。家は大きい方がいいしね。

 おっきい家で犬は一匹がいいな。

 庭も広くて、趣味で畑でもしようかな」


「屋上にさ。バスケットゴール設置しようぜ」


「屋上があるタイプなんだね」


「そうそう」


「う~ん。いいけど。傑くんの趣味なの?」


「まぁね」


「まぁ。じゃあいいか。結構大きい家になるね。1億で足りるかなぁ」


「足りる設定で行こう」


「あぁ~。そうなんだ。後付けじゃない?」


「じゃないじゃない」


「ふ~ん」


「じゃあ。千秋は屋上にバスケットゴールが付いて、庭の広い家ね」


 不服そうな千秋は。

「あ、うん」


「ちなみに俺はハチャメチャに散財する」


「貯金しないの?」


「しない。絶対にしない」


「何に使うのさ」


「募金。恵まれない国の人々に募金する」


「ウソツケ」


「千秋はさ。お金を自分の為に使うじゃん。

 俺は、他人の為に使う。

 うっわ~。人間性出ちゃいました?」


「ボクが心の狭い奴みたいじゃないか!」


「違うの?」


「違う! ボクの心は太平洋のように広いぞ」


「太平洋のように広い心の持ち主が、

 バスケゴール付きの家建てるかねぇ?

 そんなの無くてもいいじゃん」


「な!? それは君が欲しいって言うから」


「俺は提案しただけ」


 口を尖らせた彼女は。

「そ。そうだけど」


 俺は思い出したかのように。

「あれ? そういや」


「どうしたの?」


「自称心の広い千秋くんは、何しに来たんだっけ?」


「え? いや。特に……ちょっと近くまで来たから喋ってあげようかなって」と、モジモジし出す。


「ありがとーございまーす」


 千秋は『えっへん』と威張ると。

「寂しい奴だからな君は。どうせ孤立してると思ったんだ。違うか?」


「正解!」


 クククと彼女は意地悪そうに微笑むと。

「だろうね!」


「傑くんはこれから?」


「今から1人焼肉でも行こうと思ってた。お前も来るか?」


「うん! 行く行く!」


 他愛のない日常の会話。

 青春の一コマであった。



 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ