鐘の音を鳴らせ!② 勝敗の不明点
/3人称視点/
親善試合の前日。
マホロの宿舎にて。
翌日に向けて対策を行う者。
のんびりと過ごす者。
物思いに耽る者。
遊興に励む者。
など、各々自由に過ごしていた。
それぞれの個性が強い彼らは決して一枚岩ではなかった。
「ルールが単純な分、不明瞭な箇所が多いな」
ジュードはそう告げた。
マリアは神妙な顔をして。
「ですね」
「マリアくんはどこが問題だと思う?」
「沢山ありますね」
即答であった。
「ほう」
「まず、金槌の具体的な入手方法がわかりません。
数、見た目など分かりやすい点は勿論。
麓の聖堂到着時に全選手が同時に金槌にアクセスできるのか?
それとも先着順なのか? その明示をしていません」
「ふむ」
「それだけではありません。肝心な勝敗の判定基準も曖昧で分かりづらいです」
マリアはルール表の②番目を指差し。
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② 72時間の制限時間内に霊峰の峰にある聖堂の鐘を、麓にあった金槌を使い鳴らす事。鳴らした瞬間に金槌を持っていたプレイヤーが所属する学園を勝者とする。
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「鐘を鳴らしたプレイヤーがゲーム終了時に金槌を持っていなかった場合や、金槌を別のプレイヤーに譲渡した場合の勝敗の判定基準が不明です」
「確かに。鐘を鳴らした瞬間とはどこまでを指すのか?」
「そうです。簡潔なようで。実はタイミングが非常に曖昧な書き方をしているんです。鐘を鳴らし始めた瞬間を指すのか、鳴り終わった時点の瞬間を指すのか。その際の金槌の位置が明示されていません。それに……」
「瞬間的な金槌の所有権の問題」
「……ですね」
「金槌を握るプレイヤー自身が鐘を鳴らす必要があるのか?
直前で譲渡し別の人物が行っていいのか?
どのプレイヤーが金槌を持っていたと見なされるのか?」
「ええ。その通りです。『持っていた』という表現が曖昧なのです。
明確にこのルール②の勝利条件をより詳細に提示するならば。
①鐘の音を鳴らすプレイヤーは、本人1人が金槌を握る必要がある。
②鐘の音が鳴り終わるまで、金槌を他プレイヤーに渡す事は出来ない。
③鐘の音が鳴り終わった時に上記の条件を満たしたプレイヤーが所属する学園を勝者とする。
本来こう書くべきです」
「うむ。それに金槌を複数のプレイヤーが同時に持っていた場合、誰が『持っていた』と見なされるのか。場合によっては全学園ドロー。全学園、勝者ともなれるな」
「それに関して、ありえないと思いますが……まだまだあります」
マリアのIQが向上しました




