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トールキン。お前は大嘘つきだ!!!!!!!!!!!



 来た! と思った。


「どっちだ!?」

 辺りを見回す。

 耳をそばだてて方角を索敵する。

 アダチストリートにて今までにない怒号と破裂音が響いたのだ。

 シャッターを殴る轟音。瓶やガラスや陶器の割れる音。泣き叫ぶ大声。

 間違いない。これだ。このイベントに違いない! 天内のスカウトイベント!

 ・

 ・

 ・ 

 俺は目を疑った。

 4、5人の男どもが1人のエルフの女に殴られている光景だった。

 男どもはエルフに髪の毛を引っ張られたり鼻柱をグーパンで殴られたりしている。

「痛そうだなぁ」

 そのエルフは明らかに酩酊しており、泣きながら何か叫んでいた。

「※♪◆★■だよ!?」

 あ、あれだ。

 あのエルフが不良に違いない。

 不審者すぎる。間違いない。

「あいつを……倒せばいいんだな……」

 そしてあの男性陣の中にスカウトが居る。

 なぜならその男性陣は明らかに普通の人達だ。

 真面目そうなリーマンや人の良さそうな青年が一切反撃せず黙って殴られ続けている。

 というか今の一発で男の1人がノックアウトした。

 南無。


「間違いない。これを逃せば俺は本編開始に乗り遅れてしまう」

 気合を入れる。

 あの邪悪なエルフをぶちのめす。

「確変! スーパー確変タイム来たぜ! これを待ってたんだ! スーパーフィーバータイムを!」

 俺はまるで大当たりの台を見つけたかのように咆哮した。


「うえぇ?」

 エルフと目が合う。

 千鳥足のエルフは鬼の形相だ。


「※☆してぇんのかぁ?」

 何やらわからないが何か言っている。


「兄さん! そのエルフの嬢ちゃんはやべぇ。とんでもなく強いぞ! 逃げろ!」

 ボロボロになった店員と思われるおっさんが気遣ってくれた。


「ありがとうございます。ただ……僕にも譲れないものがあるんです!」

 女性を殴るのは気が引ける。

 故に一撃で仕留める。

 3属性の魔法を同時に展開。


「あんだ?」


 質の悪いチンピラのように睨みつけてくるエルフの女。

「これは面接。パフォーマンスの場。悪いが派手に行かせてもらうぞ! 一刀いっとう!」

 右手の手の平に3属性魔法を収束させる絶死ぜっしやいば

 "混沌魔法(神の御業)"……それはメガシュヴァにおいて3属性以上の魔術を複合したインチキ。

 多くのエネルギーが反発しあい、様々な色が混ざり合った複雑な、それでいてどす黒い混沌カオスの色へと変化する。

「殺しはせん。ただ闇に落ちろ!」


「ガキ!! 見てんじゃねーよ!!!!」

 ジャケットを脱ぎ捨て腕をまくったエルフは吠える。


「行くぞ! うぉぉぉぉぉぉぉぉ!」


「やんのかおらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!」

 

 お互いに駆けだした。

 

一歩。―――大口を開けて迫ってくるエルフ。

 二歩。―――化け物かと思った。

  三歩。―――力の強さの比喩として表現される化け物ではない。

   四歩。―――見た目のインパクトという点での化け物。

    五歩。―――余りにも醜い。

     六歩。―――スーツを着てるという事はこのエルフは勤め人。

      七歩。―――社会人がこの酒癖の悪さ。


 一発アウト。懲戒免職ものだ。

 俺はこの瞬間、「エルフってみんな美人だと思ってた。あれ嘘だわ」と思った。

 ここに単なるチンピラエルフが居る。

 とんでもない酒臭さと吊り上がった目つき。邪悪な口角はもはや魔のものだろう。

 やはり幻想は幻想だなと、しみじみと思ったのであった。


 ――――八歩――――

 

 右脚は後方へ重心をコントロール。

 左脚は前方に大きく踏み込む。

 野球の投球フォームのように。

 息を整える。

 脳みその血が一気に冷却される。

 肺一杯に酸素を取り込む。

 肺が熱くなる。

 喉の潤いが一気になくなっていく。

 唇はかさつき。

 瞳の瞳孔は広がり。

 全身の筋肉が連動し、脚から背骨、背骨から肩甲骨へ力を集約させる。

 全身の毛細血管が収斂していく。

 肉体を駆け巡る血流はたった一点に集まる。

 まるでこの時を待っていたかのように細胞が一気に覚醒する。

 指先に繊細なる神経を注ぐ。

 ――――手刀を振り上げる。

 

 ここだ! 

 射程に捉えた。

 獲物を狩る絶対領域エリアへの侵入。

 振り上げるは弱点を突く痛恨の一撃(クリティカル)

 捉えるは空間の輪郭(ディメンション)

 見定めるはその間合い(ディスタンス)

 見極めるは互いの力量(キャパシティ)

 

 ―――――勝利の方程式ピースは揃った…………

 証明終了(Q.E.D.)


「ほえぇ?」

 そのエルフは異様なエネルギーを感じ取ったのか間合いに入った瞬間、目をキョトンとさせた。 

「遅い」

 ―――振り下ろすは絶死ぜっしやいば

 くうを切り裂く混沌の(いかずち)

 小指に熱が籠る。

 呼吸が浅くなる。

 世界がまるで止まったかのような。

 無音……

 無の境地(ゾーン)

 空気抵抗を極限まで殺した真なる一刀ひっさつ

 ―――終焉の一撃(ピリオド)―――

 終わりだ。

 無空の一閃(ひっさつのいちげき)を放った。


 俺はエルフの猛攻を躱し。

 ―――刹那。

 ――――星の瞬き。

 ―――――胎動する世界。



 俺は――――その首筋に手刀ぜったいのイチを叩きこんだ。



「ぐぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」

 とどろくは、断末魔。

 絶命の絶叫。

 不浄なる魔を打ち払うは、聖なる閃光。

 もたらすは、奇跡。

 掴み取るのは、勝利の栄光。


 奇声を発しそのエルフはその場に倒れた。


 辺りは静寂せいじゃくに包まれる。

 静寂しじま

 無音。

 


「みね……うち……だ」

 その一刀…………手刀を振り下ろしていた。

 俺はかっこつけて混沌魔術を展開させ終わると、綺麗な光の雪を降らした。

 

 ―――黄金に輝く光の雪(きせき)―――

 

 聖属性魔法の治癒の際に発せられる光を緻密に計算しコントロール。

 辺り一帯に雪のような光の粒が降りそそぐ癒しを与える技。

 風魔法と重力魔法を使い聖属性の”癒し(小)”を辺りに拡散させる複合技。

 本来遠隔魔法の使えない天内でもできるチートの一種。

 

 演出の神々しさならこれだと決めていた。

 通称”ゴールデンスノウ”。

 俺の考え出したポートフォリオ。

 見ていたか? スカウトさん。

 

 フッと俺は不適に嗤った。


「ゆ、雪……」


「す、すげぇ」


「ぬ、主を遂に倒したのか……」


「新しい英雄の……誕生だな」


「やっと、やっとツケを回収できるのね」


 辺りから歓声が聞こえる。

 俺はそれらの声をかき消すように一指し指を天に掲げ叫んだ。

「ナンバーワン!」


「おお!!」


「すげぇ!」


「私は奇跡に立ち会えたのね」


 アーケードは大歓声の嵐だった。

 中には泣いてる人も居る。

 お互い抱き合って喜びを分かち合う人々。

 なんて美しいんだろう。

 完璧だ。

 これで俺は学園に行ける。

 最高のパフォーマンスだと思う。

 たまらないぜ人助け。

 こりゃあ正義の味方も悪くないかもな。

 ファントム暗躍計画も軌道修正が必要だ。

 なにより……きんもちいいいいいいいいいいいい。

 飛ぶぞマジで。

 

「ふう」

 あまりの気持ちよさに危うく逝きそうになった。しばらく放心してしまった。

 パンツの中は……うん。大丈夫だ。


「んじゃ、ドロップアイテムって事で」

 俺はその場に倒れこむエルフの女の財布を掠め取り中を確認した。


「チっ! しけてんな」

 俺は財布の中身を見て悪態を吐いた。


 頭ハッピーセットかよ。

「全然入ってねぇじゃねぇか。何だよ1320円って。それでも社会人か? 信じらんねぇぜ。食い逃げする気まんまんかよ」

 使えるものは何かないだろうか? 

 財布の中から売れそうなものを探す。

 ん?

 あれ?

 嘘だろ?

 何回数奇な人生に巻き込まれるんだよ!? 

 もういいよ!!

 もうお腹いっぱいだよ!!

「あんたなのかよ!?」

 俺は一人ツッコんでしまった。 



ふざけすぎたんで、少し改行消しました

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― 新着の感想 ―
ただの創作パイオニアに責任押し付けてて草
[良い点] 馬鹿みたいな詠唱 酔っ払いと変な主人公 全部最高でした
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