魔法大戦
神聖ガリア帝国。
ガリアの首都プライマは帝国の栄華を象徴する都市だ。
また、宗教的中心地としての側面を持つ。
温暖な気候と海風が街全体に爽やかな空気をもたらしている。
ガリア最大の巨大な都市だ。
ここプライマの中心地には巨大な大聖堂があり、
カリアティード大聖堂と呼ばれる。
この大聖堂の大きな特徴は白い大理石で作られ、青空に向かってそびえ立つ巨大な尖塔であろう。
これらはガリアの力と栄華を象徴しているのであった。
プライマの街並みは、街道は広く。
石畳で整えられており、道の両端には豪華な彫刻が施された建造物が立ち並ぶ。市内を流れる清らかな川には絢爛豪華なアーチ状の橋が掛けられており、荘厳で静謐な雰囲気が包まれている。
――――鐘の音が響き渡る―――
聖職者達が列をなす。
修道士達の祈りの声が静かに響く。
礼拝の歌声が街中に広がった。
清浄で敬虔な空気が漂い、訪れる者は自然と身を正すような感覚を覚えた。
マホロの連中より速めに俺とフィリスはプライマに現着した。
およそ一週間後。
3日間通して、4つの魔法学園の親善試合が行われる。
主催のカリアティード聖教会は勿論。
サンバースト士官学校は既に現着しているようだ。
ヘッジメイズ勢は3番目にプライマに到着した。
最後はマホロだ。
市内を少し歩き、フィリスの買い食いに付き合わされた後、ヘッジメイズ生専用の宿舎に向かっていた。
「おーい天内。どうやら我々はこっちのようだぞ」
キャリーケースを引くフィリスの奴が俺を手招きした。
「あー……うー……あー」
眼は虚空を向き。口は半開きで涎を垂らす。
キメちゃった奴のモノマネをしていた。
「どうした? ずっと不服そうな顔をして」
「あー……あー……あー……」
俺はさっきから頭のおかしくなった奴のフリをしている。
NTRで脳が破壊された男のモノマネ。
雑魚ムーヴがヘッジメイズでは通じない。
ならば、頭がおかしくなった奴を演じるだけ。
「おかしな奴だ。ほら行くぞ!」
フィリスは俺の裾を引っ張ると、無理矢理引きずり始めた。
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「な、なんだこれは?」
フィリスの困惑した声。
宿舎に入ると、ヘッジメイズ生で選抜された連中は異様な雰囲気を放っていた。
ダンベルを持ち腕を上下させている者。
計器には120キロと記された改造ランニングマシンで汗を流す者。
ベンチプレスを持ち込んでいる者は100キロと書かれたプレートが10個以上付いたシャフトを上下に持ち上げていた。
獣人勢は二回りほどガタイがよくなっており、
整った顔のエルフも首から下がムキムキになっていた。
そこら中に筋トレグッズが持ち込まれている。
1人の少女がリストバンドを取る。
ドスンと鈍い音がすると、埃が舞った。
宿舎の中庭にクレーターが出来たのであった。
そんな脳筋集団は俺を見つけると。
「お師匠様がお越しだ!」
「わーい! わーい!」
「天内さぁ~ん!」
「あー。うー。アー……」
正直びっくりしていた。
この人達を表現するなら。
オーガ。
そう表現できる。
俺の収入源である攻略本で勝手に強くなってやがった。
「私達の勝利は揺るぎないものとなった! みんなやったね!」
勝利を確信して周りを鼓舞する者。
「お師匠様が居れば優勝間違いなし!」
ハチマキを巻き、気合を入れる者。
「一番格下だと思われている私達が……遂に日の目を見れる日が来るのね」
涙を拭い今までの雪辱を晴らそうとする者。
様々な声があがっていた。
「あー……たすけてぇ」
心痛にも似た呻き声を上げた。
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/3人称視点/
総戦力が続々とガリアに入国していた。
非正規な手段を取る者も多い。
天内の左腕である翡翠。
人造人間フラン。
TDRの諜報員達は最たる物であった。
彼らは不法入国すると天内の最上位影達と落ち合った。
傀儡師の雲雀。
錬金術師のハイタカ。
獣人猫耳のミミズク。
彼らは久々に一同に介したのであった。
そして遂に現れる。
最強集団が。
人々の群れを掻き分ける集団。
白い学生服を着る集団は威風堂々としていた。
独特な威圧感が空気をヒリつかせる。
集団を見つめる市民の1人が。
「あれが……」
「ああ。歴代最強と謳われる」
「今年もうちに勝ち目はないかもな」
「いや、ガリア最高の騎士は今年、最も仕上がっていると聞く。結果は開けてみねばわからんぞ」
畏怖にも似た声を上げる者達が多かった。
彼らの見つめる先には、最後に現着したマホロ学園生の代表選手達。
風音パーティーは勿論。
TDRの息の掛かった者達数名。
既に上位勢入りしている天内のパーティーメンバーからはマリアと千秋、小町の3人が選出されていた。
目下優勝候補と名高い世界最高学府の魔法学園マホロ。
歴代最強と名高い精鋭揃いのマホロ生。
異様な雰囲気を醸し出す彼らはまるで覇者のようであった。




