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☆今日のお便りのコーナー☆ {人件費削減は無能な経営者のやる事。そもそも私は、……以下略} ペンネーム:組織の歯車Mさん 【備考:彼氏いない歴=年齢 / 雑魚エルフ】


 /モリドール視点/


 私はマホロ学園本部の下部組織に属するスカウト部で働くスカウトの1人である。

 社畜ОL彼氏いない歴=年齢の雑魚エルフ。

 【森林モリドール】とかいうふざけた名前のエルフだ。

 親には感謝してるよ。

 でもこの名前はあんまりだ。

 と日々思う。

 

 私は今日もラジオの人生相談に投稿した。

 勿論、日々のストレスをぶちまけるために。

「ふざけんじゃないよ。ホント」

 先日我がスカウト部に通達があった。

 それについての不満だ。

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 私は1人居酒屋のカウンターで晩酌していた。

 テレビのタレントが歴代彼氏について赤裸々に喋っているシーンだった。 

 彼氏? なにそれおいしいの?

 誰か結婚してくれ。

「うえぇ」

 酔いが回ってきた。

 頭の中が混乱している。情緒がおかしくなっちゃった。

 笑える。

 毎日毎日、日々残業。

 報われることなどない。

 所属年数だけ重ねて実績を上げてない私はザ・窓際だ。窓際属性だよ。

 もはや森林・ウィンドウ・モリドールだ。

 最近後輩の同僚に私が何て呼ばれてるか知ってるよ! 給料ドロボーだってな! あ、モリドー来たってクスクス笑われてるのを知ってるよ!

 スカウトはしてきた。

「してきたんだよぉぉぉぉぉぉどぼしてぇ」

 涙が溢れてきた。

 鼻水も出てきた。

 目の前に置いてある紙ナプキンを手に取り、ズズズと鼻水を噛んだ。


 スカウトしてきた学生とは二人三脚で頑張ってきたよ。

 どの子もいい子だった。いや、いい子じゃない子も居たか。ウケる。

「ウケるんだが」

 その子達も進級できず落第したり、卒業したりした。

 私の今の担当はゼロ! ウケる。

 去年と今年の私の成果? ゼロだよ! 

 いやね勿論スカウトするとどんな子も二つ返事で対応してくれるよ。だってメリットしかないもん。

 でもね、上層部の最終審査で必ず落ちる。その子たちの実力が残念ながら学園の基準を満たしていないからだ。こればっかりは仕方がない。だって慈善事業じゃないもん。

 そんな私の眼は節穴認定を受けている。

 誰にかって? 上司だよ!

 結婚してくれ。

 私を養ってくれ。

 幸せマイホームでピラティスさせてくれ。

「ピラティスはおばさんの趣味じゃねーんだよ!」

 ダメだ。嫌な思い出が突然フラッシュバックしてしまった。

 最近後輩に『最近私ピラティスやろうと思ってるんだよね』って世間話を振った所、『ピラティスって。おばさんじゃん』って鼻で笑われた。

 クッソ。ムカつくんだよ。あの後輩。

 女なんてチヤホヤされんの20代までなんだよ!

「はぁ………はぁ……」

 私はエルフ。見た目は20代前半。中身は30代のおばさん。

 見た目だけ若い分いいか。

 いや、よくねーよ。

 最近の街コン年齢制限つけてんじゃないよ! 

 20代限定ってなんだよ!

「行けないじゃないのよ!」

 ・

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 ・

 最近クソみたいな上司は慌ただしかった。

 そんな姿を見て私は密かにせせら笑っていた。

 管理職ザマァってね。

 責任のないポジション最高! ってね。

 それは大いなる間違いだった。

 最近上層部がスカウト部で退職者を募るなどと言ってるようなのだ。

 要は人件費の削減の為に無能を切るとの事……らしい。

 優秀なスカウトはいいだろう。

 

 私は違う。

 

 真っ先に切られるのは成果を出してない人間。

「私、無職になるじゃんか」

 そう無職である。社会とは世知辛いものだ。

 優秀な人材には多くの道が開かれている。

 その逆は……まぁ言わなくてもわかるだろう。

 私も一応マホロ学園卒業生だ。

 田舎の村では一番の魔法使いだった。

 でもあの学園では劣等生だった。

 ――――あそこは異常だ――――

 入学当初は私もエリートの一員になれると胸を張った。

 村で初めてのマホロ生という事もあり、大々的に応援された。

 両親なんか泣いて喜んでくれた。

 横断幕なんて気恥ずかしいものまで用意して送り出してくれた。

 

 だから頑張ろうと思った。


 ―――それでも世界は広かった。



 私は何とか授業に付いて行くだけで精一杯だった。

 なんとか、本当になんとか卒業した。

 教授のお情けでもあったと思う。

 ここ10年以上村に帰っていない。

 帰れない。

 両親をきっと失望させてしまうだろう。てか、私の事を超エリートと家族は信じている。

 帰れない。

 帰れないのだ。

 嘘を吐き続けて私は遂に実家の敷居を跨ぐ勇気がなくなった。

「はぁ~」

 最近の楽しみは酒である。

 仕事終わりに飲むこの一杯の為になんとか頑張れている。

 酒こそ神の水! ビバ酒。

 好きだなぁ。だってこの世の嫌な事を忘れられる合法的なお薬だよ。

 スカウトには毎シーズンノルマが課せられている。まぁノルマはこなせていない私は何なんだって話だけどね。クソワロタわ。

 結婚してくれ。

 金くれ。

 タワマン住ませろ。

 スカウトの仕事は優秀な人材の発掘。

 スカウトにはチャンスがある。

 スカウトした優秀な人材が後に成功すればその恩恵を多く受けられる。

 例えば、研究機関のポストや政府の魔法部隊の指導官といった正真正銘エリートへの道である。

 100年に1人の逸材と囁かれる才人の中の才人である今代生徒会長をスカウトしてきた超絶嫌味ったらしい先輩は、既にマホロ学園上層部へ栄転しておりマホロ学園上層部、生徒会長率いるパーティの顧問として働いている。 

 どこで差が付いたのか。

 あ、最初からでしたサーセン。

 学園生だった時から何一つ勝ってなかったすわ。

 クソむかつくんだよあの陰険女。

「はぁ~結婚してぇ。成功してぇ。助けてくれぇ~ヒッく」

 安酒を飲み干しくだを巻いた。

「あの~お姉さん?」

 私は目線が定まらぬ。

「うぇ? なんだぁ?」

 私は何やら男どもに囲まれていた。



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