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筋力: C / 魔力: C / 耐久力: C ……/ 組織力:EX  

 

 待てど暮らせど香乃と落ち合えなかった。

 俺は先に現れた翡翠にフランと共に謎施設に案内されることになった。

 女になった経緯とか。

 カッコウの事とか。

 フランケン18号の事とか。

 根ほり葉ほり聞かれたが。


「計画の内だ」

 

 このマジックワードで乗り切った。

 

 翡翠の返答はあっさりしたもので。

 難解な顔をした後に。


「な、なるほど。そこまでお考えなのですね。一体本当に……末恐ろしいわ」


 であった。


 何が『なるほど』なのか知らない。 

 この女も頭が超越的に良過ぎてわからないのだ。

 カッコウも翡翠も本当に理解出来ないのだ。

 言葉が足りないし、全然説明してくれないのだ。

 偏差値40の俺にもわかるように説明してくれないとわからない。

 なぜ俺の周りには頭が良い奴しかいないんだ?

 怖いんだよ。こいつら。

 なぜこんな人材しかいない?

 もっとニクブとかガリノみたいなアホは居ないのか?

 



 そして遂に俺は虚構でしかなかったTDRの真実を知る事になる。 

 



 元々TDRは単なるおふざけで出来た組織のはずだった。

 アホ共を集め私的に利用する為の組織。

 薄々、なんかヤバいのかもしれないと勘付いていた。

 

 規模が拡大しているのは感じていた。

 テレビで特集を組まれていた時も、カタギじゃない連中が俺に深々と頭を下げていた時点でも、怖ろしい資金力を有するのではと思った時も、マズいかもなと脳内は警告を発していた。

 

 カッコウの野郎の経営手腕が俺を恐怖に陥れたんだ。

  

 だから、気付かないフリをしていた。 

 適当な事を言って煙に撒いていたんだ。


 でもさ。金を集める才能は感じていたんだよ。だからこいつらの資金を足掛かりにマニアクスと戦う予定は組んでいた。こっそり資金を拝借してね。

 

 その程度だった。

 俺の浅はかな認識は。

 だが、想像を超えていたんだ。

 その日、本当の意味で組織を知る事になった。

 想像を超えた組織の強権を知ることになったんだ。 


 ちなみに、余りにも想像を超えていたので、トイレでゲボを吐いたのは秘密だ。


 ・

 ・

 ・ 


 俺の目の前には信じられない光景が広がっていた。




 超大型ディスプレイの数々。

 老若男女問わず、多くの諜報員っぽい奴らがパソコンの前でカタカタしていた。

 


 どいつもこいつも頭の良さそうな連中だ。

 インテリジェンス。

 そんな言葉が脳内に木霊した。

 


 な、なんだこれ……

 これが組織の力……なのか。

 し、知らなかった~。

 ネルフじゃんこれ。 

 人類を補完しようとする組織に成長してるじゃねーか。



「まさか。こ、ここまでとは」

 胃が痛くなってきた。


 翡翠の奴は。

「少々些末な設備になりますが、お気に召さなかったでしょうか」


「気にするな。なんでもない」


「ハッ」


 気になる。超気になる。

 カッコウの野郎。 

 て、天才すぎる。やはり恐ろしい男だ。

 絶対に敵に回したくない。


「こちらは3号支部のコントロールセンターと言う名の本部です」

 

「3号? 本部? 支部?」


「はい。ダミーの本部はトウキョウの官邸地下に、支部は全国に7号まで存在しています。他の本部や支部はダミーに過ぎませんが、設備や人材は本物です。本当の本部はこの3号支部になります」


「そうか」


 難解な事を言われた気がした。

 なんか知らんが……すげぇのだ。


「こちらがマスターの席になります」


 冷静を装い官房長官っぽい司令塔の玉座に促された。


「ふむ。で?」 

 難しい顔を作った。

 威厳を保たねばならない。

 俺は馬鹿にされぬように威厳たっぷりに目を細め眉間に皺を作った。


「はい。マスターの功績に便乗する形になりますが」


「便乗?」


「ええ。多くの魔の手先を排除した改革のその後です」


 その後?

 確かに俺は多くの要人をぶっ殺しまくった。日夜、マニアクスサイドの手先を、ちぎっては投げ、叩き切っては、押しつぶしてきた。魔人エネと呼称される指名手配のテロリストである。


 その後があったのか。

 なんかしてんのこいつら?


 翡翠はオホンと咳払いすると。

「ご存じでしょうが」


 知らないねぇ。

 全く何も知らない。


 翡翠は続ける。

「我らが水面下で動かしていた計画。

 まず、マスターが暗殺したヒノモト銀行総帥は知っての通り魔の手先」


 あ~。うん。処したわソイツ。


「なので、既に我らが準備した影武者に()げ替わっております」


 う、嘘だろ?

 い、一体いつの間に。


 冷静を装った。

「ふむ」


 おいおい。なんだこれは?

 恐ろしい組織だと思っていたが、

 TDRは一体どこまでこの国を掌握しているんだ?

 ネタみたいな事は本当だったのか?


「政界、経済界に放った我らの傀儡は4割を超えました」


 え? どゆこと?

 傀儡? 操り人形って事か?


「その者達に指示した内容からお伝えします」


 翡翠の奴は。

 量的緩和とか。

 金利政策とか。

 経済刺激策とか。

 社会保障の強化とか。

 食糧備蓄とか。


 なんか、よくわからない事を言い出していた。

 余りにも難解なので、聞いてるフリをした。

 

 さて。

 俺は、もしかしたら凄い奴なのかもしれない。

 しかもとんでもなく。

 本当に影の組織のドンなのかもしれない。

 いや、そんな訳ないよな?

 俺の家テントだぜ?

 

「陸・海・空路にて不審な動きがありました。

 あれだけマスターが危惧していたにも関わらず、

 侵入を許してしまいました。

 意図的にデータを改竄されていました。

 この国の売国奴は死よりも恐ろしい拷問にて情報を出させていますが。全てを殲滅し切れていないと考えています……」 


「ふむ」   


 とりあえず敵っぽい奴は拷問して自白を強要してるらしい。

 俺は悪の組織の親玉なのか? 


 いや、そんなまさか……ど、どうしよう。

 

 背中一杯に汗を掻いていた。

 なんだか悪寒と吐き気がする。

 

「こちらを」


「お、おう」

 俺は信じられない量の情報量が記載された書類データを渡された。

 

 さっと目を通す。

 円グラフと棒グラフ。

 先物とか。人口推移とか。

 ハザードマップとか。


 そんな事が付随して書かれている。 


 よくわからなかった。 

 お馬鹿な俺には何が書かれているのかわからないのだ。

 しかし、国家秘密なのは理解出来た。

 

「なるほど。よくやった」


 なにもわからないが、なるほどと言っておく。

 仕方ないじゃん。

 訳わかんねーんだから。

 解説役のカッコウがいねぇとわかんねぇんだよ。

 いや、アイツが居てもわかんねーけど。


「ありがとうございます。貧者の調査は以上になります」


「そ、そうか。とりあえずだ!」


「はい。なんでしょう」


 俺が訊きたいのは。

「アレの資産を減らせるか?」

 この一点だけなのだ。

 こいつらを使ってアイツの資産を揺さぶるだけでいいのだ。

 

 ど、どうなんだ?

 こんな凄い組織なんだ。

 出来るんだろう?

 揺さぶりぐらいなら出来ると思ってはいたんだが。


「……どういう意味でしょう」


 伝わってなかったぁ~。

 だが、ここで俺が醜態……

 馬鹿を晒す訳にいかん。

 カッコいい雰囲気を出しつつ。


「伝えていなかったか? アレを倒す近道はアイツの資産をボッシュートする事だと」


「あ……」と、翡翠は顎に手を付けると。

 1人で頷き始める。

 

 まぁ伝えてないから伝わるはずないよな。

 そもそもコイツはカッコウの事でテンパってたし。


「勿論可能ですとも。計画の内ですものね」


 え? 出来るの?

 出来ちゃう感じ?

 

「魔の手先の資産は多くが凍結しています。

 資金移動は出来ません。

 戦争を仕掛けて来るならば、相手は円の価値の暴落を狙ってくるはず。

 それも想定内。その瞬間こそが大きく相手の資産を削るチャンス。

 そこまで想定しているのでしょう?」


「え?」


 話が通じない。

 同意を求めて来るな。


「依然ネットワーク、メディアは支配しています。

 現在も情報統制はしていますが、これを制御し切るのも時間の問題。

 既に相手はカッコウ殿をファントムであると断定した動きを講じています。しかし本丸であるマスターは健在。つまりはそういう事ですよね?」


「ん。まぁ。そういう事だ」


 つまりどういう事だ?


「情報開示のタイミングを見極めれば、情報の信頼性を完全に獲得できると踏んでいる。信用を掌握できればこれほど盤石な物もありません。そこまで考えているのでしょう? 流石です」


「お、おう」


 ダメだ。ついていけない。

 随分前から話についていく事が出来ていない。


「これもカッコウ殿の発案。いえ、千手先を読むマスターの発案でしたね。もはや流石なぞ言いません。人智を超えた頭脳ですもの」


 へ、へぇ~。

 俺って人智を超えた頭脳らしいよ。


 うっぷ。

 気分が悪くなってきた。


「じゃ、じゃあ。すぐにでも戦える感じ?」


「無論ですとも。マスターの出陣をお待ちしておりました」


「そ、そっか」


 なんか。いつでも行けそうな感じらしい。


「あちらが攻勢を仕掛けてくる前に仕掛ける。今がその絶好のタイミングであると考えたのですね。我ら凡百の頭脳ではタイミングまでは掴めません。マスターの采配に間違いはないですもの」


「そうだ!」


 乗っかる事にした。

 もう、考えるのを止めた。

 考えたら負けだ。


「後はマスターのゴーサインを頂きたいのです」


 眼下に広がる諜報員っぽい奴らが俺を見上げていた。

 

 俺はゴクリと生唾を飲むと立ち上がった。 

「計画を開始せよ! 我らの威光を世界に知らしめるのだ!」

  

「「「「「「ハッ!」」」」」」




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