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魔王を倒すたった一つの方法


 多くの機関投資家は、莫大な資金を足掛かりに、短期間で利益を上げる空売り(ショートセリング)を行っている。そのせいで企業も個人も多きな損失を被る。


 株価が下がれば企業は倒産するし、時には買収される。

 さらに個人は資産を減らす。


 これは機関投資家によって、企業も個人も財産を奪われる構図になっている。


 圧倒的富豪が庶民を支配し奪い尽くす。

 

 

 それが資本主義である。

 


 個人が機関投資家に勝てる可能性はゼロだ。


 いや、正確には不可能に近い。


 銀行、保険会社、投資ファンド、ヘッジファンド。それら大規模な金融機関である機関投資家は市場の金融を6割近く支配している。


 全世界の株式市場の時価総額は約100兆ドルと言われているが、

 概算で六割。

 約60兆ドルは個人ではなく機関が運用しているからだ。


 だから勝てない。

 基本的に個人が機関に勝つ事は出来ない。

 しかし、この不可能を突破した事例がない訳ではない。

 かつて、前世でもあった。

 

 有名な事件だ。

 

 個人がネット掲示板で呼びかけ、インターネットを通じて協力し、機関投資家に対抗したのだ。



 結果、個人投資家の集団が機関投資家を叩き潰すという展開があったのだ。

 


 さながら。

 機関投資家と言う名の魔王を討伐する為に、多くの民衆が手を取ったように。 

 

 ・

 ・

 ・


 俺はフランを連れ家に帰還した。

「誰も居ないみたいだな」


「ですね。生体反応はありません」


「なんか飲むか?」


「お気遣いありがとうございます。しかし私は水分補給は必要ありませんので」


「そんな事言うなよ。これから人として生きていくんだから」


「……そうですか」


「そうそう。じゃあ、ちょっと待ってろ」

 俺は我が家に入り飲み物の準備をした。


 俺の家はモリドールさん()の端っこにある。


「これがご主人様……アマチさんの邸宅ですか?」


 邸宅? そんな訳ないだろう。

 馬鹿にしてんのかコイツ。


「邸宅……ではない……」


 テント生活だから。


「そうですよね。粗末ですもの。人の家ではありません。こんなもの。ここがアマチさんの住処な訳」


「イエダ」


「はい?」


「家だ」


「え?」


「だから言ってんだろ! 家だって!!」


「そ、そうなのですか?」


「いつだってサバイバルだ! ごちゃごちゃあんまりうるさいとおしおきするぞ!」


「……存分に……どうぞ気のすむままに教育して下さいませ」

 

 俺は頭を掻きむしり。

「この話はもう終わりだ」


「そんな……調教の方はされないのですか? この卑しい豚である私に」


「しないよ」


「で、では。三角木馬は?

 スパンキングは?

 蝋燭(ろうそく)責めは? 

 ピンクローター装着のお散歩プレイは?」


「ど、どこからそんな知識を……」


市井(しせい)(うと)くてはいけないでしょう?」


「偏りすぎなんだよ」


「それで、どのような調教をなさって、く」


 俺はフランの会話を遮るように無視した。

 下品だから。


「あそこに見えるのはモリドールさんの家。

 あそこにある掘っ立て小屋が香乃って奴の家」


 モリドールさん家の隣に併設されてる元物置小屋。

 3畳ほどしかない豚小屋がが香乃の家だ。 


 俺の意図を汲み取ったのか、フランは興味深そうに。

「なんだか、非常に質素……なのですね」


 言葉を選んで来たな。

 学習能力が高すぎて変な趣向を持っているが、頭は悪くない。

 会話の流れを変えたい俺の意図も読んでいる。


「フランよ。豪華絢爛な家に意味はない」

 

「と、言いますと」


「そんなおもちゃに金を掛けるなど愚の骨頂。

 広くてきれいな家に住んでも心は満たされない。

 幸せとは自然と共生する事。

 違うか?」


「ふ、深いですね」


 実際は金がないだけだがな。

 俺は家賃とかそういうものに金を使うのが嫌なのだ。

 だから全力でそれっぽい事を考えた。


 モリドールさん家はマシになったが。

 俺と香乃の家はどう考えても。


「いつ見てもイカれてるぜ」と自嘲しながら。


「何かおっしゃいましたか?」


「いや、なんでも。そういやフランも家が必要だな」


「いえ。私には必要ありません。頑丈ですから」


「そんな訳にもいかんだろう。

 仕方ない。後でブルーシートと段ボールで作ってやるから楽しみにしてろ」


「ハッ。感謝致します」


「うむうむ。俺は心の広いナイスガイだからな!」

 

「流石です! お心も広いなんて……流石です!」


「そうだろう! そうだろう!」

 

 気持ちいいねぇ。

 俺を無条件でヨイショするフラン。

 実に気持ちのいい気分にしてくれる。


 ・

 ・

 ・

 

「さて」

 香乃の野郎を待ちつつ。

 物思いに耽る。


 俺はこの世界で唯一のプレイヤー。



 全てのボスキャラの弱点を知る者。



 特殊裁定・特殊勝利が存在するメガシュバというゲーム。

 くそ狂ってるのだ。

 製作チームの頭がどうかしていたとしか思えない。

  


 基本的に出てくるボスがクソ強い。



 どいつもこいつもインチキみたいな能力を持ってるからだ。


 今回狙う首は貧者。


 貧者は異質だ。

 特殊な眼を持ち、かつ特殊な体質を持つ。

 

 だってさ。



 貧者のHPは保有する金銭に比例するんだから。


 

 この仕様のせいで多くのプレイヤーが敗北した。

 発見されるまでに時間を要したのだ。



 勿論、貧者は物理的に削ってごり押しで倒すのも可能だ。

 莫大なHPのせいでクソ時間が掛かるがな。

 魔眼によって異能を盗まれ延々ミラー戦をさせられる。

 馬鹿みたいな火力をブッパし続ければ勝てるが。


 初見ではジリ貧になり負ける可能性が高い。


 しかし今回、勝てるピースは揃っている。


 カリスマを持つ風音。

 カッコウの仕組んだ組織の力。

 

 そして。

 俺の仲間で貧者に最も有利を取れる……


「大金持ちのマリア」



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