表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
259/457

フランケン18号


/3人称視点/


―――現在時空―――


 小町は頬の傷を擦ると。

「いてて。それにしても香乃さんって何者なんでしょうね。ホントに」

 

 千秋は目を細め。

「さぁ? ただ……恐ろしく強いよ」


「底が見えません」


「そうだね。傑くんの親戚を名乗るだけはある。

 あのダンジョンでも私達のサポートをしつつ汗1つ掻いていなかった。

 ボクはあんな豪傑は知らない」


「で、ですね。天内家はどうなってるんでしょう」


「さぁね。そもそも親戚かも怪しいけど」


「それはそう!」


「だよねー」


「でも……指示は的確だ。彼よりも教える事に関しては才能がある」


「ええ。先輩よりもわかりやすいです」


「フィーリングで教えてくるアイツよりもよっぽどタメになる」


「全くです」


 2人して不思議な少女について話しながら歩いていると。

 長身の美女が小町と千秋に声を掛けたのであった。

 

 ・

 ・

 ・

  

「え? どちら様ですか?」

(凄い美人だけど……誰だろう)


「俺だよ俺。オレオレ」


 千秋はボソッと。

「新手の詐欺?」


「オレオレ詐欺だ……初めて見た」


 小町は。

「ごめんなさい。貴方のような美人さんに知り合いは居ませんが」


 美女は似つかわしくない笑みを浮かべると。

「おいおい。俺ってやっぱ美人なの。困ったなぁ」


 千秋は引きつった顔を作る。

「なんか」


「変わった人ですね」


「ホントにね。どことなく会った事のある雰囲気だ」


「ヤバいなぁコレ。野獣に狙われちゃうじゃん。

 俺の貞操終わっちゃう感じ? 

 こえぇな。いや変なの来たらボコるだけだが」   


 小町と千秋はヒソヒソ声になりお互い耳元で会話した。

「なんかムカつきますね」


「そ、そうだね。い、行こう。ちょっと変わった……ヤバい人かもしれない」


「おい。聞こえてるぞ」


 小町は。

「刺激しないようにですね」


「そうだね。この手のタイプは一番怖いんだ」


「美人局とかありますもんね」


「そう。きっと壺か絵の話をしてくるぞ」


「超ヤバいじゃないですか」


「だから俺だって。俺。このグッドルッキングガイの顔を忘れちまったのか?」


「なんか癇に障る感じの方ですね」


「なんだか妙な感じだ」


「ええ。この常にムカつく感じ。まるで実家のような懐かしさすら感じます」


「だから聞こえてるって。お前ら凄いな。すげぇ人の悪口言うじゃん」


 小町は。

「申し訳ありませんが!」


「お、おう」


「私達は貴方のような方を知りません。人違いです!」


「だ~から! 俺だよ。天内! 天内傑だよ!」


「「は、はぁ~~~?」」


「どう? 性転換しちゃった! 凄くね?」


 ・

 ・

 ・


 かくかくしかじかで、死ぬほど説明した。

 過去に行った事などはボカしつつ、

 天内が美女になってしまった事を説明したのだ。

 

「ほ、本当に……」


「せ、先輩!? 先輩なんですか!? 本当に?」


「そうだよ。さっきから言ってるじゃん」


「『そうだよ』じゃ、ねーんですよ!」


「女の子になってるじゃないか!?」


「そうなんだよね。色々あって性転換しちゃったって訳。

 凄いよね。この世界。

 いやぁ~参った」


 小町は泡を吹くカニのように。

「アワアワアワ」


「なぜそんな事に」


「副作用? つーか呪い? 契約? タイムパラドックス?」


「な、なにを言ってるのだ?」


「まぁアレだよ。少々面倒な事になった」


「も、戻る、戻る方法はないのかい?」


「ない! もうこれで生きていくしかない! ……かも」


 小町は目を回すとその場にへたり込んだ。

「そ、そんなぁ~」


「そ、それでいいのか!?」


「何が?」


「『何が?』じゃねーんだよ。先輩! アンタの心は男だろ!」


「まぁね。でも流行りみたいな感じに乗って行こうかなと。性転換モノの」


「意味わかんねーんだよ!」


「なぜ、そんなに楽観的なんだ」


「仕方ないだろ? つーか、解呪できないし。諦めるしかないだろう?」


「か、軽い。なんて軽い意見なんだ」


「自分が何を言ってるのかわかっているのか?」


「なんでそんな軽いんですか!?」


「性別なんて、もはや些事。

 俺の中で、もうそれは主軸じゃない。

 だから、もういい! 諦めた!

 むしろこっちの方が身体の調子がいい!

 今までの絶不調が嘘みたいだ」


「ば、馬鹿者!!」


「馬鹿過ぎて気分が悪くなってきました」


「そうだ。そんな事を報告しに話し掛けた訳じゃない」


「そんな事って」


「さぁ。皆さんに報告があります。

 新しい仲間を連れて来ました。

 期待の新人。超新星。来たまえ」

 

 天内は手を鳴らした。

 

「ハッ! ご主人様!」


 メイド服の美女であった。

 美女が突然空から降って来たのだ。

 華麗にバク宙をし、体操選手のように着地した。


 びっくりした小町は。

「ど、どなたですか!?」


 派手な登場に満足げな天内は両手を広げると。

「フランケン18号。通称:フランくんだ」


「あ……え?」


「ご紹介に預かりました。本日より皆様のサポートをさせて頂きますフランと申し上げます」

 フランは深々とお辞儀した。


「我が最後のパーティーメンバー。

 ヒーラーであるが前線でタンクにもなれる超新星! 

 あとご主人様呼びはやめてね」


「かしこまりました」


 千秋は顔を押さえ複雑な顔をし。

「また女の子か……いや、論点はそこだろうか?」


 フラフラと立ち上がった小町は。

「ツッコんだら、負けなの? 

 先輩は女の子になっちゃってるし……

 メイドさん連れてきてるし」


「ツッコミどころしかない気がするけどね。

 しかもご主人様呼びをさせていたようだ」


「キッモ」


「マジキモイよね」


「黙れ!」

 天内は一喝した。


「ご主人様。今後はどのようにお呼びすれば」


「めんどくせぇな。普通な感じでいいんだよ。ごくごく普通な感じで」


「かしこまりました。旦那様」


「旦那様呼びに変えさせました」


「ホントに気持ち悪いね」


「身の程を知った方がいいですよ。

 突然性転換したと思ったら、

 とんでもないプレイを楽しんでいます」


「ホントにね。キモい男……いや、今は女か。

 もうよくわからなくなってきた。理解が追い付かん」


「旦那様もやめてくれ。名前でいい。呼び捨てで構わないから」


「かしこまりました。アマチ……さん」


「お、おう。いいぞぉ。イイ感じだ!」


「ありがとうございます!」


 小町の理解は既に限界を超えていた。

「そ、そ、それでぇ? この方が新しい仲間になるんですか?」


「そ、そうだ」


 余りの衝撃の連続で脳がバグった千秋は。

「ふ、ふ、ふ……ふ~ん」


「人間とは思えないくらい綺麗です……ね」


「ホントにね。きめ細かい肌だ」


「まるでお人形さんみたいです」


 あり得ぬ連続でもはや現実逃避を超え、普通に状況を飲み込み会話をし出す2人。


「ありがとうございます」


(せ、正解!

 半分以上正解だ。

 世紀のマッドサイエンティスト俺によって生み出された人造人間。

 それがフランケン18号。

 いや、フランなのだ。

 あまりジロジロ見られる前に話を逸らさねば)

 

「うむうむ。フランくん。せっかくだ。

 特技を教えてやりなさい。

 この口の悪い淑女達に」


「誰が口の悪い淑女だ」


「はい。私の特技はアマチさんの性玩具になる事」


 天内は呆気に取られると。

「フョ?」


「は?」


「い?」


「あらゆるテクニックに対応可能です。

 多少の損傷も私の身体の硬度と治癒で復元可能」


「キッモ」


「この男はヤバいよ」


「ちょっと待て。何を言ってる!」


「趣味は調教……される方です」


「キモ」


「この男、キモ過ぎて吐き気がしてきました」


「勿論アマチさんのみにですが。私の身体の隅々まで知っておいでです」


「消しましょうか」


「そうだね。もう生かしておく方が害悪だ」


「あの時の快感は忘れられません。

 私が生まれた意味。

 生を実感させられる感覚。

 絶頂を与えてくださった事は生涯忘れません」


「語弊を招くような事を言うんじゃないよ!」


「よしわかった。殺そう。ボクがこの男の頭を砕く」


「わかりました。では私は、首から下を微塵切りにします」


「せーの! で行くよ」


「ええ!!」


「「せーの!」」

 小町と千秋はお互いに天内に先制攻撃を加えようと。

 

「おい! ヤメロ!」

 天内の必死の制止も届かず。


 千秋の拳が。

 小町の抜刀が。



 ―――――――――

 放たれるはずであった。 

 ―――――――――



 その後、天内の断末魔が聞こえるはずであった。


 そう。

 はずだったのだ。

 

「え?」


「ウソだろ」


 千秋の拳を―――

 小町の抜刀を抜く前の手の平を―――


 フランが押さえつけていた。


 


 しかも涼しい顔で。


 


「私はメイド。最高傑作のメイド。

 アマチさんに指一本触れさせませんわ。

 例え先達の方々であろうとも。

 それは決して許容できません」


(なんだこの人。凄い力だ。

 ボクの怪力でもピクリとも動かない)


(強い。強いぞ。先輩が何も考えなしに連れてきた訳ではない?)


「おお! 良いぞぉ! よくやったフラン!」


「お褒めに預かりありがとうございます。

 しかし、このお二人は本当にアマチさんのお仲間なんですか?」


「え? ああうん。そだよ」


 千秋は食って掛かるように。

「どういう意味?」


 フランは不適な笑みを浮かべると。

「釣り合っていないと進言致します」


 小町は。

「なんだって?」


「あら聞こえてらっしゃらない? 

 端的に言いますと。

 お二人とも弱すぎませんか? と言いたいのです」


「な?」

 

「んだと……」


「良い機会です。少しだけ調教して差し上げましょう」

 人体工学上あり得ぬ動きであった。

 

 小町と千秋はいつの間にかお互い吹き飛ばされていた。

 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 面白いキャラが投入された今後に期待
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ