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究極の魔導書


 その一報が届けられたのは非常に速かった。

 翡翠は呂律が回らぬほど動揺しているのか。

「か、か、か、か、カッコウ殿が。カッコウ殿が。敗北です! 敗北しました。し、し、し……死亡」


「落ち着け」


「し、しかし!?」


 一度瞼を閉じると声音を低くし。

「それで……死体は?」


「な、なん、なん、何とか回収はしました……しかし、」


「そうか……」

 

 カッコウが負けた!? マジで? うわぁ~マジかぁ。

 俺の相棒にして唯一の理解者。

 サウナにて日夜俺の野望を語り聞かせた心の精神安定剤である親友。

 金づるであり、右腕となり、

 勝手に組織? を大きくした天才経営者の才能を持つ男。

 最も俺の後継者に相応しいモブっぽいアイツが負けただと!?


 アイツ。死んだらしいってよ。


 笑えねぇ。


 いやいやいや、待て待て。

 流石にそれはマズい。

 軌道修正せねば。

 

 まぁ大体察しは着くが。


「ま、マスター……」

 翡翠は落ち込んでいるようだ。


「お前は少し、頭を整理していろ」


 俺が一番脳みそを整理せねばならない。

 時間が必要だ。

 超天才的頭脳を持つ俺はフルスロットルで脳みその歯車を回転させねばならない。

 

 動揺を悟られぬように。

「少し、1人にさせてくれ」


「そ、そうですね……いや、しかし! いやなんでも」

 翡翠は言い淀み言葉を飲み込んだ。


「俺が良しというまで何も行動に移すなよ」


「…………え、ええ」


 翡翠を背後に感じながら腕を組み夜空を眺めてみる。


「しくじったようだな。カッコウ」


 一種の物語のスパイスが発動したようだ。

 

 例えば、仲間が敗北して動揺するシーン。

 もし俺が主人公ならば、その物語の佳境の中に居るのだろう。

 全く馬鹿馬鹿しい話だ。

 

 さて、それが生み出す筋書は幾つかあるなぁ。

 ① 復讐して闇落ち。

 ② 立ち直って成長。

 ③ 真の力の覚醒。

 まぁ、ざっと思いつくだけでこんなもんだろう。

 ルート分岐して、強くなったりするイベントだ。

 戦闘技能や精神性、仲間との絆的な何かが覚醒して物語の骨子を確定させるのだ。

 

 ちなみに、俺には真の力はないので③はない。

 復讐みたいな陰気臭い事もしないので①もないだろう。

 ②立ち直って成長? ないない。

 俺は主人公ではない。


 物語のキャラの死は一種のドラマを生み出す。

 古今東西そういう決まりなのだ。

 そうあるべきなのだ。


「普通ならね」


 が、果たして。

 それが神の視座を持つ者(オレ)に降りかかった場合通用するのだろうか。

 答えは。


「笑止」


 ある種、この世界の境界に立つ俺にはあまり意味がない。

 見ている視点そのものが異なる。

 個人の視点と神の視点の境界に立っている。


 FPS(1人称)視点とTPS(3人称)視点が混ざり合っているのだ。


 時限付きではあるが、

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 と言っていいだろう。


 それが俺の持つ()()()()()と言っていいのかもしれない。


 この世界の住人は知らない。

 知りうる事が出来ない最大のアドバンテージ。

 俺は常に物事をTPS視点に近い考えで物事を俯瞰し捉えているという点。

 メタ認知を超えた究極のメタ。


 未来に干渉し物語を根底から書き換える力。

 

「まぁ待っていろカッコウ。未来がある限り何とか出来る。まだ俺という名の切り札が存在している。お前はまだ完全なゲームオーバーではないぞ。とは言え。終末が訪れて未来そのものが無くなれば終わりだがな」


 時間はない。世界も俺もそこまで長くはない。

 不条理は待ってくれない。

 だが、まだある。まだ余力は残されている。

 未来がある。

 だから何度だって宣戦布告をしておこう。

 カッコいい感じで暗闇に向かってこう言ってやるのだ。

 

 馬鹿馬鹿しいと思うだろう?

 だが、これぐらい呑気でイカレてないと、務まらないのだ。

 何がって? 俺と言う配役は。

  

 俺は誰も居ない暗闇に向かって独り言を囁いた。

「聞いているか? 少なくともお前を討ち取るのは俺ではない。その役目は最後の強化イベの為にアイツらに必要だからな」

 

 アイツの相手は俺ではない。


 しかし。

「……残ったお前らは俺が倒す。簡単だ。俺は前世の攻略Wiki(究極の魔導書)を脳内に保管する男。数多の先人が歩んだ歴史を継承している」

 

 大きくため息を吐くと。

「さて、三文芝居に付き合ってやるか」


 

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