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人の心は壊れたら二度と戻らない。そんな簡単な事がなんでわからねぇんだ!!

 

 

 小町落札代と小町の借金返済で"成功者俺"の資産はほぼゼロになった。

 だが、俺の資産はすぐさま回復を果たした。そのアテもあった。

 簡単だ。

 カイウンは悪党である。

 悪党の金は俺のもの。

 カイウンの金は俺のものである。

 見事な三段論法ではないだろうか?


 三段論法になってないかもしれないが、まぁいいだろう。

 そもそもジャイアニズムに無理がある。

 カイウンはメガシュヴァの設定上ではノンプレイアブルキャラのレベル23の雑魚。

 種付けおじさんことカイウンを見たときは感動した。

 正直サインが欲しかった。

 前世の世界でカイウンは肌色の多いシーンでよく登場した超有名竿役。

 メガシュヴァ同人誌でもカイウンを竿役として様々なNTRモノが発表された。

 レアな魔法、"精神魔法"の使い手。

 洗脳、幻覚、記憶改ざん、記憶忘却などなど何でもありのスーパー畜生能力。

 なんで種付けおじさんとかいう非常に危険な生命体は精神魔法特化なのかね。

 まぁそんなこんなでそんな有名人に会えて心が打ち震えた。

 本当に居たんだと。

 貴方に憧れた時期も……ないな。

 うん。全くない。

 (とこ)の上では最強のカイウンもメガシュヴァの戦闘上では残念ながら雑魚である。

 

 カイウンと言葉を交わす度に俺をイラつかせた。

 とんでもないド畜生だった。

 それでも迷った。

 カイウンをここで倒してしまってもよいものなのかと。

 徐々に疲弊していくカイウンを見ると攻撃を躊躇った。

 だが、こいつは設定上では悪人。

 この世界でもどうやら悪人。

 悩んだ。

 そもそも俺はこいつに恨みはない。

 しかし、倒す事にした。

 迷いを振り切って倒した。特に涙は出なかった。


 ついでに説教(・・)もしておいた。

 だってめっちゃ屑なんだもん。屑に何を言っても仕方がないけど、とりあえず説教系目指してるんで自分。

 カイウンをサクッと処した。

 それなりの技で……な。


 ドロップアイテムという事でカイウンの資産を持てるだけ持って俺はトンズラした。

 カイウンに飼われていたであろうゲームでは登場しなかった者達を解放したところで朝飯は何にしようか考えていた。

「とても……気持ちのいい朝だ。俺は……俺はようやく」

 ようやく二大鬱ヒロインのバッドエンド回避を果たした。

 一仕事終えた気分だった。

 ツキジで寿司でも食おう。

「今日は休日にしよう」

 明日から頑張るわ。

 朝日に向かって伸びをした。バキバキと背骨が鳴る音が心地よかった。

 俺はこれからとりあえず再度修行に入る。

 マホロ学園に入学するにはスカウトされる必要がある。

 設定上では天内はスカウトされる。

 しかし、胡坐を掻いて何もしなかったらスカウトされない可能性がある。

 スカウトされるにはとんでもない技を繰り出す必要があるだろうと、俺は考えている。

 企業の面接と同じだ。

 入念なパフォーマンスとポートフォリオの披露。

 考えているのは更なる魔法の取得。

 基本5属性魔法には派生して複数の魔法が存在する。

 習得が難しいものもあるが有用なものは片っ端から唾を付けておく必要がある。さらなる禁術の開拓の為に。

 武器術ならば演武。最も派手技でいいかもしれない。

 まぁそれも明日からでいいだろう。

 今日は休日なんだから。

 それまで一休み一休み。

 ・

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 ・

/シリウス視点/


 その妙技は天才と言って差し支えなかった。その魔力の潜在性はあまりにも巨大な原石だった。

 こんな逸材を見落としていたとは何たる不覚か。

 学園はなぜこの男を今まで発見できなかったのか。

 なんのためのスカウトなのか。

 私は憤った。

 全く役に立たないではないかと。

 その男を一目見て途轍もない可能性を秘めていると感じた。

 未来の視えない光体の塊。

 一見普通のどこにでも居る青年にしか見えない。

 しかし、その潜在性はもしかしたら世界で唯一の存在なのかもしれない。

 それはこの世界で唯一の希望になるかもしれない。

 故に私はこの男を招きたいと思った。彼の地に。

 世界最高の魔法学府マホロの地へと。

 私は、この男がこの世界の特異点になるのだとそんな淡い期待と予感がある。

 もしかしたらあの邪悪に立ち向かえる存在なのではないかと。

 故に訪れたのだ。

 彼のお宅へと。

 私は平凡な一軒家のチャイムを押した。

 なんてことはない。

 どこにでもある一軒家だ。

 鳥の囀る音が住宅街を木霊していた。

 しばしの時を経て、中からバタバタと音がした後、一人の女性が扉を開けた。

「初めまして。お忙しいところ申し訳ない」

 私は目深な帽子を脱ぎ深々とお辞儀をした。

「あらあら~。どちら様ですか~」

 出てきたのはエプロンを身に着けた10代の女性。

 柔和な笑みを浮かべている。

 その女性はおっとりとした口調で私に尋ねてきた。

「失礼。私はシリウス・A・ロットマン。是非とも我が学園に来てほしいと思い馳せ参じた」

「???」

 女性は疑問符を浮かべた。

 私の悪い癖だ。

 結論から話を始めてしまう。

 仕切り直す必要がある。

「お宅の嫡男。桜井風音さくらいかざねくんにお話がある」


 私は桜井風音に是非ともマホロ学園に来てほしいと勧誘しにきたのだ。


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