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親の顔が見てみたい と 世紀のアジテーター


/3人称視点/


「地獄に堕ちろクソ野郎ォォォォォォ!」


 中指を立てながら強制退場となったTDR13騎士

 第七席:騒音のDJ山村。

 彼の断末魔の叫びであった。

 この男。

 夜な夜な爆音を響かせ。

 ご近所迷惑をする男。

 そんな彼の最期であった。


 マリアは一言。

「汚い花火でしたわね」

 メイスから放たれた火の粉は徐々に勢いを殺していった。


「強敵でした」

 小町は刀を鞘に納める。


 マリアの友人であるクレアは息も切れ切れであった。

「悪がまた1人粛清されたね」


 クレアの後輩は。

「しかし、見た事のない集団でしたね」


 野球部の厳つい男が。

「TDRの手の者でしょうね」


「TDR?」

 マリアは聴き慣れない言葉に疑問符を浮かべた。

 

 野球部の主将は。

「族共の母体です」


 クレアが所属するお料理研究会。

 そこに助っ人として参加するマリア。

 さらには、剣道部の助っ人として参加した小町。

 野球部を始め手芸部など主種雑多な部活の実力者達が息を切らせていた。彼、彼女らはTDRの魔の手からそれぞれが所有する宝玉を守りきった所であった。


 TDR7席を始めとする13騎士の数人と数十を超えるTDRのメンバーを撃破したのだ。


 四天王を除くTDR13騎士。

 彼らが率いる悪の枢軸同好会は様々な団体に向けてPKプレイをし続けていた。真っ当にゲームクリアを遂行せず、ハイエナのように参加団体メンバーを狩る。

 

 狩った後は宝玉を奪い取る。

 

 そこには騎士道精神なぞ欠片もなかった。

 不意打ち、騙し討ちを得意とするその手口はテロリスト集団のそれであった。


 小町は下剤の入ったスポーツドリンクに目を落とす。

「手慣れた姑息な手口ですね」


 マリアは伏し目がちに。

「ええ。全くです。こんな卑怯な事を考え付く者の親の顔が見てみたい」


 サッカー部のイケメンが。

「にしても、ここまで数が減ったか。無念だ」


「そうですわね」


 最凶の枢軸同好会。否。最狂のギルドTDRとの交戦により、連合とも言える主種雑多な団体は120名から30名に数を減らしていた。


 マリアは感想を述べた。

「卑怯なやり口。絶対に許せませんわ」


「ええ。全くです」


 モブ達はTDRの脅威をそれぞれ口を吐いて述べ始める。


「私はタイマンと見せかけ一対多を仕掛けられました」


「飲食物に下剤や痺れ薬を仕込んでいるわ。今後補給は困難ね。兵糧攻めとは卑怯な」


「用を足す際に襲撃は普通やらないよな」


「それだけではない! 人質を立てる騎士なんて見た事ありません」


「秘密を暴露するのも痛い……俺は明日学校に行く勇気がない」

 

「虚言を吐き。脅迫をし恐喝をする。しまいには賄賂を渡す。一体我々が戦っているのは何なんですかね?」


「命乞いをしたかと思えば隙を見て不意打ちを企てる。下劣な戦法です」


「あらゆる団体にスパイを潜り込ませ情報収集を行う徹底ぶり。僕は誰も信じられないぞ!」

 

「最も恐ろしい戦法は内部分裂の誘導か。

 あるカップルは喧嘩になり。

 ある親友は絶縁した。

 仲間内で疑心暗鬼にさせる煽動技術。

 人心掌握にも長けているな」


 姑息な戦法の数々を仕掛けるTDR達。


 全てはある男が発端の普通のバトル展開ならやらない事の数々。

 

「卑怯者め。族の首魁。その首を必ず狩らねば」

 マリアは歯ぎしりを立てた。


 お料理研究会の部員Aの男子生徒が。

「TDRと言われる不良共の首魁。ボスは不明です」


「次に交戦する際は捕虜を生け捕りにしましょう。必ず首魁は誰なのか吐かせます!」


 弱気そうな男が。

「で、できるでしょうか?」


「やります。絶対に悪を蔓延らせてはいけません! この学園の秩序を保つには族の頭を切り落とさねばなりません!」


「こればっかりはマリア先輩に同意です。しかし、ボスとは一体どんな奴なんでしょうか?」


 マリアは一言。

塵芥(ちりあくた)にも劣る。最低下劣な人間でしょうね」


「「「「間違いない」」」」

 その場に居る全員が同意した。


 ホッケーサークルの筋骨隆々の男が。

「ここは一旦休戦にして討伐戦をすべきにしませんか?」


「そうですわね」 


「それがいい。公正なゲームに戻しましょう」


 彼ら彼女らが一致団結した瞬間であった。


 ・

 ・

 ・


 そう。これは少し前の話。

 彼が学園を去る前の話であった。

 TDRの者が一同に介していた。


「この世にはボケカス共が存在している……」

 天内は目を回しながら言葉を選んでいた。


「革命の話か」


「違いない」


「そろそろ我々も打って出るのか」


「かもな」


 TDRの者達は各々天内を見ながらそれぞれ感想を述べる。

  

 天内は冷や汗を流しながら登壇していた。

 彼は混乱していたのだ。

 正直、TDRが勝手に大きくなりすぎてよくわからないのだ。

 その際周りに求められるのは、『何か話して下さい』なのだ。

 彼にとってははた迷惑極まりなかった。

 天内にとってTDRは考査戦で勝つために作り出した闇金サークルでしかなかったのだから。

 

 天内はカッコウを睨んだ。

 カッコウは『わかってますよ』と言わんばかりに頷くばかりである。

 

 天内はカッコウの『転校する前に一言お願いします』という無茶振りを受けていたのだ。造反が引き起こる、TDRの今後の運営方針に関わるなど、意味不明な戯言を延々聞かされた天内は仕方なく壇上に上がっていた。


 天内はゴホンと咳払いすると。

「君達はこう言われた事はないだろうか? 『お前の代わりはいくらでも居る』。芯を食った反論をすれば『口答えをするな』。相手にとって都合の悪い事であれば『自分の頭で考えろ』とな」


「ありますぞ!」


「ああ。いつだって言われてきた!」


「一体何を言いたいんだ!?」


「聞かせてくれ閣下」


「その卓越した頭脳で我々に答えを教えてくれ」


(一体何を言えばいい? わからない。わからないぞ) 


「つまりはだ! 俺が言いたいのは、一隅(いちぐう)を照らす。という事を胸に刻むべきだと! そう言う事が言いたいのだ」


「どういう事なんだよ!?」


「一体何が言いたいんだ」


「黙ってろ。これから始まるぞ」


 天内はもう何がなんだかわからなかった。

(え? どういう事なのだ? 自分でも何を発言しているのかわからないのだ。教えてくれなのだ。ええいままよ!)


「お前達はモブだが。決して。決して。この世に不要な存在ではない! 安心しろ。今からその理由を語ってみせるぞ!」


 TDRの者達を前に天内の詭弁術が炸裂しようとしていた。


 天内の特技:詭弁。

 彼は思い付いた詭弁を繋ぎ合わせ、辻褄が合わなくなると咆哮や奇声を上げて話を有耶無耶にしたり無理矢理論点をすり替えるという悪癖がある。


 最終詭弁奥義『それってあなたの感想ですよね?』。

 から始まり。

 奥義。語尾に『……知らんけど』。

 など彼独特の処世術が存在しているのだ。

 

一隅(いちぐう)を照らす。昔々ある偉い坊主は言いました……」

 

 天内の詭弁演説ショーが始まろうとしていた。


  

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