表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
207/457

決戦⓪ ロキ


 小町はこの世界の家族に別れを告げに行くとの事で一度解散した。

 アジトであるホテルに戻ると香乃に説教された。

 カッコウにはお疲れ様と労われた。

 マリアの奴も深夜だと言うのに俺を出迎えてくれた。

 

 まぁ色々とあった訳だが。

 千秋を寝かせ、俺は自室に戻る前に自販機に立ち寄った。

 

「なんか。色々と勘違いされてる節があるんだよな」

 

 缶コーヒーを飲みながら、なんか色々とマズイ事になり始めているんじゃないかと思い始めていた。俺への期待値とでも言うべきものが恐ろしい事になっている。

 

 俺はこの世界も何とかするつもりだし、全員をハッピーエンドに導くつもりだが。

 

「どうしよう。ちょっと活躍しすぎたか? いつの間にか好感度が上がっている。これを何とかしないと……」


 中二病ムーヴをしすぎた節がある。

 最近は雑魚ムーヴも控えていたせいで、暗躍を通り越して表立って活動し過ぎた節があるのだ。香乃が時間を超えて会いに来たというトンデモイベントもサラッとあった。

 すげぇ淡白にスルーしたけど。

 いつアイツが爆弾発言を投下しないかヒヤヒヤしているのだ。

 俺がちょっとした実力者だと認知してる奴が増えすぎた。

 今も増加傾向にある。

 それはまぁ仕方ない部分もあるが。

 

「やりすぎたかぁ~」

 

 今になって思えばちょっとやりすぎた節がある。

 ヘッジメイズのあれやこれやは仕方ないとしても。


「いや、梁山泊はおかしいな」


 そうじゃない。それもあるが!

 心の友カッコウは口が堅いのでいいが。

 香乃という『極光』の真実を知る者が傍に居るのだ。

 

 こいつウルトラ爆弾なのだ。


 こいつが聖剣とバッティングしたら終わりだ。

 顔を隠して三下ムーヴをやった意味がなくなる。

 『アイツ、天内は極光を裏で操ってた』とか、聖剣にポロッと口を滑らしたら終わりだ。


 『俺、実は世界救ってましたけど何か?』みたいな、”なろう”展開になりかねない。

 

「それはやりすぎなんだよなぁ~」


 モブ雑魚どころか、イチ実力者の領分を思いっきり踏み越えている。

 暗躍計画の破綻である。

 俺の華麗なる謎の暗躍者生活が終わる。

 それにだ!

 俺はなんだかモテる。

 モテるムーヴをした覚えはないが、かなりマズイ事になっているのだ。

 ラブコメの波動をひしひしと痛感している。


「なんか。なんか。ちょっと俺、主人公みたいじゃん」


 ヒーヒーフー。

 ヒーヒーフー。

 一回ラマーズ法で落ち着け俺ぇ。

 俺は深呼吸を繰り返した。  

 おかしい。

 色々と微調整が必要。

 まず、この恋愛イベっぽい茶番をひっくり返す必要がある。


「間男みたいな奴を別途用意するか。金の力で。カッコウに頼むか」


 アイツらの見た目は良い。

 今更、風音とくっつくのは難しいかもしれんが。

 適当な絶倫のイケメンを用意しておけばいいだろう。

 逆ハーレムみたいな展開を脚本に描けばいい。

 複数のイケメンに言い寄られる展開になれば、俺の事なんてゴミを見るような感じになるはず。早くビジネスパートナーに戻らねば攻略に支障が出る。

 今後は熾烈な戦いになるだろうから。

 そこは共闘して欲しい。

 強敵であるボルカーとリリス、恐らく生き残っている貧者を倒し、終末を相手取らなければならない。

 残る敵も少なくなってきた。

 

 攻略は間近。

 俺自身とこの世界の命運を懸けた戦いの終わり(フィナーレ)は近い。


 戦場に恋愛感情を持ち込まれたらたまったもんじゃない。

 こっちは命のやり取りをしてるんだ。

 そこは真剣にせねばならない。

 故に彼女達には早くいい感じの(つがい)を見繕って貰いたい。


「乙女ゲーをやり込んでおくべきだったかぁ~」

 

 俺は(うずくま)り頭を抱えた。


「おや。まだ休んでなかったんです?」


 寝間着姿のカッコウの野郎が声を掛けてきた。


「お前こそ。なんだよ。寝に帰ったんじゃなかったのか?」


「少し喉が渇きましてね」


「あっそ」


「で? これからどうするんです?」


「それはまぁ。後日皆が居る場で話そう。それよりもだ!」


「は、はい!?」


「カッコウ。俺はモテる……のかもしれん!」


「は、はぁ……」


「俺は好感度を下げる必要があるんだ!」

 

「何を言ってるんですか?」


「色々考えたんだ。逆張り。これをしていこうと思うんだ。

 残念ながら色々あって、俺はモテるのかもしれん。そう思うようになった。

 このままではマズイ。作戦が上手く遂行出来ない。

 俺は人知れず手助けする謎の助っ人。

 恋愛ゲーをする気はない。モテてはいけない!」


「嫌味ですか?」


「嫌味? 何を言ってるんだ? 皮肉は大好きだが」


「それで? 何をしようとしてるんです?」


「まず……脱糞する。みんなの前で大便する。戦闘中に脱糞する。

 この戦いが終わり次第マホロに帰ったら女子更衣室で大便もする。

 放尿のオマケ付きだ」


「マジ……ですか?」


「ああ。大マジ。しかも女子生徒が居る状態で」


「社会的に死にますよ」


「やむをえんか」


「……マジですか?」


「だから大マジだって。これで俺は女子人気がゼロになる。

 これで全てがゼロに戻るとは思わんが。せめてのも罪滅ぼし。

 モブムーヴから嫌われ者ムーヴに変遷する。

 少しだけ雑魚っぽくなる。もうそれしかない。

 さらにおまけだ。俺はちょっとずつ謎のムーヴをしていこうと思う」


「謎のムーヴ……もうさっきからイカレタ事しか言ってませんけど」


「俺は次第にフェードアウトする。少々目立ち過ぎた。

 俺は闇に潜むモブ。真なる(いん)の者。

 脚光を浴びてはいけない。絶対にだ。

 その為の幾つかの行動をお前にだけ! 教えておく!」


「は、はぁ」

 

 ・

 ・

 ・


 カッコウに愚痴を告げた後。 

 俺は自室に戻り久々に布団に潜った。

 布団というものは本当に久しぶりだ。

 ケハエールで寝ずに行動し続けた事もあるし。

 最近は立って寝る技を身に付けた。

 今後は右脳を休ませた状態で左脳を働かせるみたいな事も試したいと思っている。

 ケハエールさえあれば即時育毛も出来るし、体力も疲労も回復出来る。

 薬物漬け俺になる。


「口癖も改良していかなくてはな。『俺には時間がない』。うむ。これは採用だな。『ここは任せて先に行け』……は、ちょっと違うな」


 俺は口癖を考えていた。

 ちょっと思わせぶりな感じでミステリアスな雰囲気を醸し出されるやつ。

 それを披露していきたい。

 あと好感度を下げるための言葉も節々で使っていきたい。


「『俺は二次元しか愛せないんだ』これはちょっと今だと普通だな。

 もっとドン引きするやつ。どうすればいいんだ!? 

 戦闘に連れていく編成も考えなければならないし。

 香乃と俺が先陣を切るつもりだが……てか! 寝れねぇじゃねーか!」

 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ