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べ、べ!? べつにアンタのことなんか好きじゃないんだからね!?


/3人称視点/


 天内はある程度肉体の回復が済むと、屈伸し背筋を伸ばした。

 沈黙に堪え兼ねた事もあるが、そろそろ帰らねば、香乃やマリアからごちゃごちゃうるさい事を言われそうで合流したかった。

 天内は考えた。

 ボロボロになって戻れば、うるさい小言を言ってくる。

 なので見た目だけでも完全に治癒が済むまで大人しくしようと。

 そして見た目だけ取り繕う事が出来たのだ。


(少々のかすり傷は仕方ない。腹の傷口は塞がっている。このまま治癒し続ければ明日にでも完全に回復できる。それにしても、なんだアイツ?)


 天内は先程からじっと見つめてくる小町に声を掛けた。


「……なんだよ。さっきからボーっと俺の事見つめて」


「え?」

 あたふたし出す小町は狼狽(うろた)えた。

 無意識に視線を移していた事を悟ったのだ。


「もしかして……俺の事好きなの?」


「は? はぁ!? はぁぁぁ!!!???」


「ちょっと静かにしろって。冗談なんだけど」


「な、なに。なに馬鹿な事言ってるんですか!? 

 はぁぁぁぁぁぁぁ!? 誰が誰をですって!? 

 せ、せ、セクハラと痴漢で訴えますよ!!」


「ど、どうした……え? そんな癇に障るような事だったのか?」


「冗談でも全く面白くありません! はぁぁぁ!? キモ! キモ過ぎる! 頭おかしくなりましたか!?」


「そ、そこまで言われるような事なのか!?」


「冗談でも言っていい事と悪い事があるんです! 

 はぁぁぁぁぁぁぁ!? 私が先輩を!? 

 はぁぁぁ!? ないないないない! 

 そんな訳ない! 絶対にない! 

 絶対ある訳ないじゃん! はぁぁぁ!? 

 キモい! キモ過ぎる! 自意識過剰でおかしくなりましたか!?

 べ、べ!? べつにアンタのことなんか好きじゃないんだからね!?」


「わかった。わかった。千秋が起きちまう。

 悪かった悪かったって! そこまで拒絶反応を出されると……ちょっとへこむんだが」


 ・

 ・

 ・

 

 天内は小町を落ち着けるのに苦戦しつつ真実の鏡の世界の実情とマリア・千秋問題を切り出した。


「と、言う訳なんだ。これが今までのあらすじって訳。

 で、小町に頼みたい本題はマリア・千秋問題なんだよ」


「も、もう一回聞いてもいいです?」

 

「だか~ら、俺はいつの間にかマリアの恋人で千秋の婚約者になってるんだって! お前には俺の味方になって、こう何て言うのかな。そこはかとな~く、『違う!』と言いたいんだ。頼む。俺を助けて欲しい。俺の弁護人になってくれ!」


「この摩訶不思議時空の事情の方はおおよそわかりましたが。そっちじゃなくて、弁護? ですか。それが先輩の頼みたい事なんですか?」


「そうだ!」


「えっと……」


「どうした? 突然頭を抱えて」


「……なんかズレてません?」


「なにが!?」


「……き、気付いてないのか」


「なんだよ。そんなうんざりした顔して」


 小町はうんざりした顔をしながら。

「まず初めに、マリア先輩と彩羽先輩の件、どうしてそんな事になったんですか?」


「こっちが聞きたいぐらいだ。もう何がなんだかわけがわからないよ……」


「『わけがわからないよ……』じゃないでしょ! 告白されてるじゃないですか。話を聞く限り」


「な、なんだよ。そんなに怒って」


「怒ってないです!」


「そ、そうかぁ? あの貧乏ゆすりやめてくれない? 癖になるぞ」


「ああ言えばこう言う! それで! 先輩はマリア先輩と彩羽先輩の事をどう思ってるんです!? どうなんです!!??」

 小町は身を乗り出して天内に詰め寄った。


「お、おう。ひ、人としては嫌いじゃない」


「なんなんですか! その曖昧な返答は」


「待て。落ち着け。恋愛感情とかは一切ないぞ。

 俺は恋愛ゲーに興味がない。

 そんな事は俺以外とやって欲しいもんだ。

 俺を巻き込まないで欲しい。

 俺にはやるべき事が、」

 と言おうとして、ごにょごにょと口篭った。


「そ、そうですか」

 小町は、天内の恋愛感情はないという発言を聞き安堵した。


「なんだよ。急に落ち着いて」


「いいです。話を続けましょう。で?」


「だからさ。そのぉ~。小町に間に入って貰って、こう上手い事話をまとめたいというか。俺一人じゃ無理な段階に来てるというか。その怖いというか……」


「なんて情けない男なんだ」

 小声で、『カッコいい時とそうでない時の落差ホント凄いなぁ。さっきまでの気迫はどこに行ってるのやら』、と呟いた。


「う。不甲斐ない」

 天内は項垂れた。

「仕方ないじゃないか。怖いんだよ。アイツらが怖くて仕方ない。俺の魂の記憶が、逆らったら殺されると訴えて来るんだ」


「また訳の分からない事を。まぁ、はい。それは……先輩の味方になってあげますよ。約束ですからね」

 はぁ~。と大きなため息を吐く。


「おお!? 助かる。助かった。あっぶね~」

 胸を撫で下ろす天内。


「それで。むしろこっちが本題だと思うんですが。薄々感じてましたけど、この世界は夢の世界で間違いないんですよね?」


 天内は一呼吸吐くと。

「話の切り替わりが早いな。

 まぁ。そうなんだよね。

 さっきも説明した通り。

 この世界は人の願望を投影する夢の世界」


「人の願望……ですか?」


「そうだ。ああなりたい。こうしたい。この世界に囚われた者が望んだ事を実現する。都合の良い事が引き起こる夢の楽園。それが真実の鏡の世界。マジックアイテム真実の鏡の力」


「真実の鏡。あの魔鏡(まきょう)には人を幸福な夢に(いざな)う力があった……」

 小町は手鏡が脳裏に(よぎ)った。


「そうだな」


「ん?」

 小町は思い出したかのように冷や汗を掻き始めた。

(ちょっと待って。

 洗脳状態が解除されて頭がこんがらがって思考出来なかったけど。

 冷静に、落ち着いて、俯瞰出来て気付いたけど。

 話を聞く限り。

 こっちの世界の先輩は私の願望が生み出した事になる。

 えっと。私とこっちの先輩は……婚約者なんですけど)


 小町は目を回し挙動不審になり始める。


(ヤバいヤバいヤバい。

 この目の前に居る将来禿げそうなダサい先輩にその事実を絶対にバレてはいけない!!)


「どうした顔色が悪くなってるぞ」


「そ、そうですか? 気のせいじゃないですか?」


(えっと。私の願望って、先輩と……)


「いやいやいやいや。ないないない。絶対にない!」


「ど、どうした。突然声を張り上げて」


「うるさい!」


「酷くないか!?」

 天内は小町の理不尽な激怒に困惑した。


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