東京
/3人称視点/
天内が夢世界に潜り込んでいる同時刻。
現実世界ではとんでもない展開が繰り広げられようとしていた。
生徒会総選挙(仮)が近々行われようとしていたのだ。
ニクブとガリノの2人は悪巧みを開始していた。
「現在、会長も副会長も不在。会計も失脚。という事は?」
「時は満ちた」
ニクブはニチャリとあくどい顔を作った。
「だな」
「各勢力、動きが活発になっているようだ」
「TDRとかいうカス集団。それと四菱グループ。その他諸々。現状生徒会が崩壊しつつある。漁夫の利を狙う野心家の数々。後釜に居座ろうと躍起になっている。我らの敵は強大だろう」
「これ以上、この学園を好き放題させる訳にはいかない」
「間違いない。我らの宿願の為にな。それで立候補の準備は?」
「問題ない。Dクラスの推薦票は集めた」
「精々一枠は確保できるといった所か……」
「これ以上は無理だ。この限られた枠でやるしかない」
「だな」
「俺達の夢の実現。天内とガリノと共に屋上で語った夢の続き。これは絶好の機会だ」
「煩悩まみれの美少女学園計画……か」
「あまり涎を垂らすなガリノよ」
「す、すまん」
「いや、いい。我々の悲願は成就するかもしれんからな」
「そう……だな」
「体育は全てスク水ニーソ。月に一回の猫耳メイド着用義務」
「社会貢献」
「逆バニーの制服化」
「広告効果促進」
「男の娘の推奨」
「全ての性癖は皆平等である」
「タイツの薄さは30デニール以下」
「薄い方がエロいしな」
「太ももが見えるミニスカート着用の実現」
「天内の案も取り入れてやらねば。アイツもうるさいからな」
「男女別更衣室の撤廃」
「男女不平等の是正」
「女子トイレの廃止」
「経費削減か」
「男子生徒の奴隷化」
「……上手い言い訳が出来そうにないな。だがマニュフェストには是非入れたい文言だ」
「MクラスとSクラスの創設」
「女王様クラスの創設もいいんじゃないか?」
「ガリノ、お前天才だな」
「まぁな」
「下着着用の禁止とかもどうだ?」
「制服は薄手にしよう。濡れると透けるやつ」
「いいな。名案だ。早速業者に発注をかけよう」
「天内の野郎が戻って来るらしいしな。仕方ねぇーからアイツを出馬させればいいんじゃないか?」
「口だけは回るもんな。最悪落ちた場合は全部アイツのせいにしとけばいいだろう。俺達は素知らぬふりをしておけばいい」
「だな」
ガリノは勝手に刷られた生徒会立候補の用紙に『天内傑』と書き殴った。
「では、マニュフェストを書き込んでいくか。ハチャメチャな感じにしようぜ!」
「……だな!」
・
・
・
作戦は終了した。
崩壊する瓦礫の中で真マリアの憤怒の業火が放たれたのだ。
香乃と俺らは自爆したように見せかけつつ、カッコウの影に隠れた。
その後俺の超高速により全員を戦線から離脱させた訳だ。
香乃に「随分厄介な仕事を回してくれたもんだ」と悪態を吐かれた所であった。
俺達は戦力を削りつつ闇に溶け込む事に成功した……と思われる。
「最大の障害は……天内くんの偽者です。彼はまだ本気を出していなかった」
「ふむ」
俺の性格まで再現しているのなら、本気ムーヴはここぞという時以外は出してこないだろう。敵の素性がわからない内は情報収集を優先するはずだ。
俺に対して本気ムーヴを出したのは、もしかしたらアイツの本能なのかもしれない。
「アレは究極俺が仕留めよう」
「アレは強いぞ。剣術だけなら……」
香乃はその強さを間近で感じ取ったようであった。
「案ずるな。少し本気を出せばいける」
ビームをぶっ放せる光剣がある。
誰でも使えるビーム放出剣。
最後はビーム攻撃で雑に仕留める事が可能っちゃ可能だと思う。
SF武器は過激なのだ。
「……君の事だ。心配は……してるな。死に過ぎだし」
「ん? なんか言ったか?」
「また時間のある時に話すとしよう」
「?」
まぁいいか。
随分含みのある言い方だが。
さて。ユニーク武装なしの香乃。
こいつ1人と天内´、マリア´、風音´3人の実力と比較した時、やや後者に分がある。
成長した星5キャラマリアと、複数の技を駆使する成長した主人公風音、山本戦程度の戦闘力を持つチート俺。
あれ? こいつら相手に善戦した香乃ってやっぱ強すぎないか?
「お前やっぱ滅茶苦茶強いな。お前主人公でいいじゃん」
「ん?」
香乃は怪訝な顔になった。
香乃……お前ちょっと規格外だわ。
ブラックナイトとタイマンの近接戦ならどっちが強いんだ?
ちなみに俺は既にブラックナイトより弱いのだ。
根絶者戦で活躍した俺のロボ。
誰でも使える夏イベ産のチートロボことブラックナイト。
俺の切り札である最終兵器は強くなり過ぎた。
冒険の中で様々な経験を学習しすぎた。
俺の中二病も伝染した。
本当の意味で中々に痛い感じのロボになってきている。
根絶者戦では。
『我ハ人ガ生ミ出セシ消却式第五ノ矛。文明ノ終局形態二シテ神ヲ落トス遊星機械。人類最大災禍ノ究極的一撃ヲ以ッテ撃滅ノ雷ヲココ二証明スル』
とか言ってカッコつけながら、奴が獲得した攻撃手段の一つ『極光波』で全てを焼き払っていた。
そんな言葉は教えてないのに、中々のフレーズ全開で喋っていたのだ。
と、そんな事を考えていると。
「ちょっとこっちに」
香乃は手招きすると。
「なんだよ? いった!?」
頬を思い切り抓られた。
「とりあえず、これで許しておいてやる」
プイッとそっぽを向いた。
少々機嫌が悪くなったみたいだ。
労ってやるべきだったか。
まぁ後で三郎ラーメンでも奢ってやればいいだろう。
「作戦の第一フェーズは終了した。次に取り掛かるべきは」
「オリジナルの撃破……しかしどこに」
カッコウは唸った。
「あれはきっと」
俺はトウキョウのシンボルに視線を向けた。
「目星がついたんですか?」
カッコウは目を丸くして驚いていた。
「ああ」
メタ視点を持って考えれば予測はつけるべきだった。
簡単だった。
前世と同じであり、この異世界でも同じ。
この夢世界の中心。
東京のシンボルとはなんだと考えれば必然と候補は絞られる。
この世界には、江戸城も皇居もない。
ならば……
「このトウキョウの臍。全域の中心点であり現実と同じ場所」
東京のシンボルであり東京にしかないもの。
それがこの世界の臍でありアキレス腱。
だと思う。
「あそこにある可能性は非常に高い」
カッコウは俺の視線の先を同じく見上げた。
「トウキョウタワー」
「恐らくな」
俺の知る東京タワーと瓜二つの赤い電波塔。
トウキョウタワー。
あれが、あの場所がこの夢魔世界の中心点なのかもしれない。