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ローンチ



/3人称視点/


 戦場は海上。暗黒の水面(みなも)には色鮮やかな魔術が拡散する。

 本来静寂に包まれる沖に雄叫びと共に轟雷が鳴り響いた。

 

 深緑が巨人の動きを抑制し、緩慢になった標的に向かって放たれる豪炎、迅雷、風塵の数々。

 パトリオットミサイルが如き威力の砲撃。

 それらが間断なく打ちこまれる。


 災厄への撃退。

 

 千にも及ぶ、多くの実力者が華やかに宙を舞い戦場を駆ける。

 

 国を守る為に。


 個々人が作戦級の実力を持つ数多の王国騎士。

 戦略級である強大な力を保有する世界屈指の魔術師二人。

 神速を以って災厄の肉を削り、骨を砕く影法師。

 

 夜通し行われた戦争。

 その中心には災厄の元凶たる黒雨の巨人の姿。


 騎士と魔術師達は意志持たぬ巨大な怪物を徐々に追い詰め始める。


 無限に思えるほどの体力を持ち、瞬時に再生する巨体は少しずつ壊れていく。

 再生が追い付かなくなっていく。

 

「――――Ⅴィァァ■ΝヴァΣゥ△ッ――――」

 

 音にならない濁音の羅列。

 巨人の咆哮。

 生物を畏怖させるそれは恐怖耐性を持たぬ者を怯ませる一撃。

 断末魔が海原を揺らす。

 一部の兵士が意識を失っていく。

  

 少しずつ怪物の体力を削る毎に紅き呪いの雨は少しずつ黒く変色していく。


 酸の雨。恐慌の雨。腐乱の雨。

 死を齎す雨へと変貌していく。


 雨に打たれた者は一滴でも浴びた瞬間、動きが緩やかになり苦しみ藻掻く者が現れだす。

 

「ここまでで十分だ!」


 影法師が光輝く剣を天高く掲げ、叫んだかと思うと。


「凶星は神をも殺す……災禍を撃滅すべし

 神號(カミ)(いかずち)

 領域外から放たれる銀河の一撃を以って。

 ここに……引導を渡そう……」

 

 光剣を指揮棒(タクト)のように巨人の頭上に振り下ろす。

 指し示した先。

 天空から天鵞絨(ビロード)の稲妻が落ちると黒雨の巨人を一刀両断した。


 ・

 ・

 ・ 


 天から落ちた七色の光。

 天鵞絨の光に包まれる騎士に皆、目を奪われていた。

 あれほど苦戦していた巨人を、たった一撃で(ほふ)ったように見えたからだ。


「奇跡なのか?」


「あれは伝説に伝え聞く……」


「極光……」


 何やらよくわらん事を呟きながら王国の騎士達がざわついていた。

 どうでもいい。あれは俺の()()()

 最後のダメ押しで、参戦(ローンチ)させた訳だ。

 光輝く発光を背に、俺は万人の目を欺くが如く。


「ミスディレクション発動」

 

 そう嘯きながらフフフと不敵な笑みを浮かべる。

 ()()()を発動させながら霧魔法を駆使し、黒い水面の影へと溶けるように身を隠した。

 

 ゲームで例えると巨人の残存HP20万以上を一気に削ったっぽい。

 まさしく切り札級活躍。

 全ブッパ系攻撃力。


「流石だな。我が切り札(ワイルドカード)

 片耳に付けたイヤホンに向かって語り掛ける。

「お前はそこら辺を適当に光輝きながら旋回して、出来るだけカッコよく去れ」


 ブザー音のような機械音がしばらく流れと、返答があった。

『カッコつける? 意味不明。どういう意味だ? どうすればいい?』


 わからなかったっぽい。

「そうだな。雲でも切りながら空を2、3回グルグル旋回して、衆目が一番集まりそうなとこで剣を天に向かって掲げろ。その後は適当に発光しながら垂直で天に駆け上がれ」


 機械音が再び流れた。

 思考しているようだ。

『……把握した。しかし、一体何の意味が』


 意味なんてないんだよ。

 その方が記憶に残る。

 謎の騎士が助太刀に入ったみたいな。


「パフォーマンス?」

 俺すらも疑問形であった。


『パフォーマンス?』


「そ、そうだ! とりあえずやれ! それがカッコつけるだ。いいな?」


『思考、思考、データーベースに接続……

 データーベース内データにアクセス、セレクト開始。

 データナシ。インプット開始。

 再度セレクト、確認。データ情報を統合……把握。学習した』


 よし、学んでくれたっぽい。

 これだからロボはいいんだよ。


「あともう一個いいか? どうだった?」


 アイツを打倒出来たのか?

 言葉少なめに俺は切り札に尋ねた。


『アイツ……アレの事か。問題なし。脅威足りえない存在。生命活動が弱まっていた』


「ふむ」

 だいぶ削ってたっぽいな。

 流石だ。

「じゃあ、お前はカッコつけてこい」


『理解。〔カッコつける〕を開始する』


「ああ。行って来い」


 俺は暗闇の中から天鵞絨(ビロード)を拡散させながら天に昇る白銀に輝く甲冑の騎士を見送った。

 

「さてと」


 ここからは非常にイージーだ。

 まだ仕事は残っている。

 黒雨の巨人を倒しても雨が降り続いていた。

 これは自然現象としての、だ。

 魔術的な、もしくは迷宮(ダンジョン)化による呪いの雨ではない。

 

 この雨は時が過ぎればいずれ晴れる

 設定でしかなかったグリーンウッドの豪雨と天鎮祭の生贄設定は事実上終わったようなものだ。

 

「まだ終わっていない」


 故にアイツの気象魔法が必須。

 ほんの少しでいい。

 巨大に発達したこの()()()()を蒼穹に変える事。

 その為にアイツには人身御供になってもらう。

 勿論英雄として。


「フィリス英雄化計画に着手するか」


 




すみません。

ゲームにハマっているので、やや更新速度落ちてます

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