天内不在のメガシュヴァ本編 アイツ「時を止める能力者の倒し方は数多ある」
/3人称視点/
それは天内不在の夏イベ本編の話であった。
ダンジョンから魔獣が氾濫し始めたのだ。
カッコウは先程天内に連絡を取り、事態を報告したところ。
『お色気イベも佳境に差し掛かっているか。ここが山場だぞ!』
「お色気? 佳境? 山場って何を言ってるんですか!? ふざけないで下さい!」
『ふざけてなどいない! カッコウ。お前は風音と共にゲイブレットを倒せ。ゲイブレットが元凶だぞ』
「ちょっと。それだけですか!? こっちは大変なんですよ! このままじゃ甚大な被害が」
『それは大丈夫だ。そこにはヴァニラが居る。その点は心配するな。奴は一騎当千。雑魚モンスターなど一匹も逃さん。これは確定した未来。それに、これはお色気イベントのちょっとしたバトルでしかないからだ!』
「何を根拠にふざけた事を言ってるんですか!?」
『いいからお前と風音は心置きなくゲイブレット戦に臨め! お前達なら出来る。俺はこっちで戦っている。今伐採が忙しい……いや。何でもない』
(なんだ? なにかをしているのか?)
『一応こっちでも街に被害が行かないように準備はしておく。
確実に大丈夫だと思うが、万が一があるからな。
最悪俺の切り札で天空からゲイブレットの脳天を打ち抜くか、助っ人を差し向ける。
だが、これは最終手。そろそろ風音自身にも動いてもらわなきゃいけない。
単に俺が不在でも成長しなくてはいけないタイミングが来ただけだ。
これがアイツにとってもカッコウお前にとっても重要な局面なんだよ。
だから何としてもやれ。
チッ! 増殖が止まらねぇ!! クソが! バンブーがランスしてやがる!』
「天内くんは何をしてるんですか!?」
『俺は今、大自然と戦ってる!! ダメだ! このままじゃ。崩壊するぞ! 逃げろ! フィリス!』
天内の切羽詰まった声が通話越しに聞こえる。
地鳴りのような音が聴こえていた。
(本当に何をしているんだ!?)
「天内くん!? どうせ知ってたんでしょ! こうなると! なぜこっちに残ってくれなかったんですか!?」
『俺はお前を信じているからだ!』
「う……」
天内はそう宣言すると電話を切った。
「やるしかないか……」
漆黒の騎士カッコウと風音パーティーは、ダンジョンの門を開き、魔獣を顕現させたマホロ会計ゲイブレットと相対していた。
「貴様らぁぁぁぁ」
「行くぞ!」
カッコウは風音に向かって囁くと、気配を消した。
「ああ!」
風音は満身創痍ながらも力強く返答した。
聖剣の加護により、即死の攻撃を受けてもなお肉体は再生していた。
カッコウは思考を巡らせた。
天内の言葉を思い出すように。
(あれは魔術ではない。彼は武具による異能と言っていた。ゲイブレットには僕は見えていない。ここで畳みかける!)
「世界に選ばれた私が命ずる! 時よ! 我が支配下に跪け!」
ゲイブレットは専用装備:ノルンの指輪の異能を行使した。
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/カッコウ視点/
--天内が学園を去る数日前の話--
「時間停止系能力者の倒し方ってわかるか?」
天内くんは突然そんな事を言ってきたのだ。
いつものようにサウナを2人して訪れ、汗だくになりながら会話が始まったのだ。
彼は突然突拍子もない事を問いかけてくるのだ。
「さぁ? 時を止められたら流石に勝てなくないですか?」
「聡明なるカッコウにしては弱気じゃないか」
「そうですか?」
「方法は数多くある。もはや対策され過ぎて弱いまである。そもそも、マホロに残るお前には時を止める能力者を倒してもらう事になる。風音と共にな」
「随分と強敵が現れるんですね」
「そうかな? まぁ相手は少々強い。生徒会だからな。
奴はマニアクスサイド。暗殺してもいいが。それではダメなのだ。
風音には時空間魔法を覚醒してもらわねばならんからな」
「時空間魔法?」
随分大仰な魔法だ。
そんな魔法聞いた事もないぞ。
「アレを倒さねば覚醒イベントにならんのだ」
「……イベントですか。なんだかチープな言い方ですね」
「そこはツッコむな。話を続けよう。で? なんか考えが出たか?」
「え~」
どうだろう。時間を止める奴が敵に現れるって事だよな。
「同じく時間を止めればいいんじゃないです?」
「それは出来ない前提で勝つんだよ」
「じゃあ。無理ですね」
天内くんは一指し指を立てて、話始めた。
「引っ張っても仕方ない。時を止める能力者にはメタを取れる方法は数多くある。大前提として敵は無限に時を止められない。時間停止有効時間は7秒。次の能力行使までインターバル30秒とする」
「えらく具体的ですね。まるで知ってるみたいじゃないですか」
「ああ。よく知ってるんだよ。俺はね」
「は、はぁ」
彼はホントに何でも知ってるのだ。
「というよりもだカッコウ。手の内さえわかってれば、時を止める能力など造作もないんだよ。初見なら対策は不可能かもしれないが、情報を握ってる時点で勝利は揺るがない」
そんな風に嘯くと。
ニヤリと笑う彼は語り始めたのであった。
1 魔眼と呼ばれる能力無効化の異能を使用する事。
2 生徒会長のような毒魔法や毒の武具によるカウンター。他にも音魔法や重力魔法などを術者の間合いに入った時点で発動する目視不可能な魔法を展開しておく。
3 死霊術や聖属性魔法、金の魔法といった肉体強化を施し、即死を防いだ上での殴り合いで倒す。
4 遠距離広範囲の超級魔術によるピンポイント爆撃。
5 カッコウのような気配遮断、不可視化による認識外からの暗殺。
6 超速攻で、スキル使用前に倒す。
7 操糸術などを戦闘領域に展開し、搦め手で倒す。
8 精神魔法や霧魔法で幻影を作り出し、かく乱した上で倒す。
9 傀儡術によるゴーレム使役や召喚術といった術者が姿を現さず攻撃の加えられる物量戦で攻め切る。
「ざっとこんなもんだが、カッコウがやるべき手は3、5、6のコンビネーションで勝てるぞ」
「ええぇ~」
半信半疑であった。
なんだか批判が入りそうな予感。
時を止める能力者ってそこまで強くないと思ってるんですよね。