寸話 デス・エンジェルの考察
フィリスに高額スイーツの卸しが俺であるとバレていた。
それについて面倒な忠告を受けたのだ。
端的に言えば、『とっとと悪徳商売を止めなければ、大変な事になるぞ! 適正価格に戻せ!』というものだった。
俺は本日の授業が終わり次第、複数の上級生達から校舎裏に呼び出しを食らっているのだ。
「集団リンチタイムか。全く、ワクワクさせてくれるぜ」
フィリスはそんな危機的状況についてわざわざ忠告をしてくれたようなのだ。
俺の事を嫌っていたようだが、根は優しい奴なのだ。
そんな俺は授業受けていた。
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「自然界のサイクル。君らが害虫、害獣と忌み嫌う生き物も自然界の中には必要不可欠な存在だ。この世に不要なモノなどない」
教師は語り始めた。
俺はそれを聞きながら、ボーっとしていた。
生態系は循環で構成されている。
無駄な部分がない。
忌み嫌われる昆虫。例えばハエは、ある種動物の亡骸を掃除してくれる。
そういう役割なのかもしれない。
昆虫は鳥類や爬虫類、同じ昆虫の餌となり成長を助ける。
蜂なんかは植物の受粉の手助けをするし。
いずれ死ぬ哺乳類や昆虫の遺骸を摂取する微生物やミミズのような分解者の役割も大きい。
遺骸を分解し有機物を無機物に変換して土壌を肥えさせる。
肥えた土壌からは植物が芽吹く。
そして植物を糧とする哺乳類や昆虫は栄養素を摂取して成長する……
死んで、新しく生まれる。
これがこの星の循環のシステム。
俺はボソリと。
「ならば、生態系の頂点に居るだろう、惑星を我が物顔をして消費するだけで、この星に何も還元しない人間こそ……」
最も要らない存在なのかもしれない。
「人間の絶滅……それを阻止しようとする俺の方が」
いや、それを考えるのはやめよう。
宗教的に言えば、ヨハネの黙示録の4騎士は……正確には天使達だったはず。
人類に対する神の怒りの代行者。
死の天使達。
メガシュヴァの4騎士はこれらをオマージュしている。
彼らは、度を越した人類を殲滅する装置であり、終局のシステムだ。
「ん? 待てよ」
ダンジョンには未知が多いが、メガシュヴァではダンジョンモンスターは悪魔という設定だった。
マニアクスは魔人という設定。それはこの世界でも変わらない。
終末の騎士は魔人の信仰する神という設定だった。
「……違うかもしれない……」
メガシュヴァのバッドエンドは終末の騎士が顕現し、地獄の穴たるダンジョンの中の魔物がこの世界に解き放たれる。この世界の人類を絶滅に追い込むために。
バッドエンドはそこで暗転して終わりだ。
「神と言う表現は悪神だと思っていたが……違うのか?」
宗教に詳しくないが天使と悪魔は対を成すモノだと思っている。
もし、4騎士が天使なのだと仮定すると。
「矛盾してないか?」
いや、そもそも違う。観点が違った?
山本は魔獣や魔物を召喚し使役する。
あれはダンジョンモンスターだ。
マニアクスは魔人だ。悪魔サイド。これは間違いない。
「マニアクスは終末の騎士と実は異なる存在なんじゃ。人類を殲滅するという目的が一致していた」
魔人の目的は、それぞれの理念はどうあれ人間の殺戮だ。
終末の騎士の目的、それも同じく人間の皆殺しだが、どちらかと言うと『浄化』『粛清』、そんなニュアンスの方が近いんじゃないか?
「じゃあ、マニアクス、ダンジョンの中身、終末の騎士。それぞれ別の属性を持っている? 本当は相互関係がない? そういう事にならないか?」
俺はメガシュヴァの考察でなく、この世界の考察にシフトしていた。