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超ド田舎学園のぼっちライフ

 


 寮を出ると辺りは真っ暗闇。

 虫の音と木々のざわめきが木霊していた。


「あ~。しくじったなぁ~」

 

 後悔していた。ここに来た事を。


「ここに来るしかなかったけど」


 ヒノモトは素晴らしい国だと再認識したのだ。

 都会ライフを生きてきた俺にとってこの地は中々にキチィのだ。

 正直なんにもないのだ。

 夜の闇を照らす自販機はチラホラ見えるが、それぐらいだ。

 24時間営業のコンビニもないし、ファミレスもない。

 ネカフェもゲーセンも競馬場も闇カジノもない。

 確かにマホロの地も風営法の影響で早々に店は閉まってたが、ネットという現代人の娯楽アイテムがあった。

 この学園、ネットも学園のPCルームからしか繋がらない。

 はっきり言おう。終わってると。


 携帯のアンテナは立っていなかった。

 それを見て大きなため息を吐くと、自販機のボタンを押して炭酸飲料を取り出した。


「娯楽がない。株のチャートも見れない。いや。もうやんないけどさ。腹減ったなぁ」

 

 俺は腹が空くと吉田屋の牛丼、三郎系ラーメン、ドミィノピザを食いがちだ。

 もはや三種の神器ならぬ三食の完全食だ。

 オタク七つの大罪の一つ暴食の罪を犯してきた。

 ビザをピッツァって呼んできたぐらいに。


 それも今や昔。

 俺はシティボーイではないのだから。

 いかんせんこの学園、超ド田舎学園なのだ。

 寮の食堂と、学園の食堂。あとは購買で買った食品を自室で料理の三パターンしかない。

 ジャンクフードなどこの地にはなかった。

 

「手が、手が震え始めた」

 

 禁断症状が出始めていた。

 俺はジャンクフードを食いたくて仕方なかった。

 油マシマシ、ニンニクマシマシの汚い残飯を食いたくて仕方がなかった。

 ドロドロの油そばのスープを血管に注射しないといけない気がした。

 ニンニクの粉末を鼻から吸ってキメたい気分だった。

 

「死ぬ! 死んでしまう! こんなとこに居たら仙人になっちまう!」


 俺は炭酸をがぶ飲みしながら、のたうち回った。

 ジタバタと転がり回った。


 ヘッジメイズは南国の学園だ。元は無人島だった場所を開拓したモブ学園である。

 モブ学園。

 それはメガシュヴァの本編の舞台ではない学園の総称。

 ……まぁ。俺が勝手に呼んでるだけだけど。

  

 そんな学園にシティボーイの俺は転校してきたのだ。

 この学園、ほとんどの生徒がエルフか獣人だ。

 しかもほぼ全員女生徒。男子生徒もエルフか獣人しか居ない。

 種族の違う男子生徒諸君は俺を恐れているようで、話し掛けてもそそくさと去っていた。

 俺をお呼びでないらしい。


 女子生徒の数人は初期に話しかけてきたが、その時の俺はうんこに行きたくて急いでいた。

 前日漁港で食ったイカが原因だと思っている。

 アニサキスが居たに違いない。

 下痢の波が突然押し寄せて来たのだ。しばらくの間、腹が(よじ)れるほど痛かったのだ。

 やせ我慢フェイスで何とかやり過ごしたが、あの時の俺は眉と眼を限りなく近づけていたと思う。

 厳めしい顔をしていただろう。

 そのせいもあって、もうさっさと授業を終わらせたかった。

 なので無下に扱ってしまった。その後女子生徒からも敬遠されるようになった気がする。

 女の結束力は異常だ。

 悪い意味でな。

 俺はよ~く知っている。

 

 今の俺。

 まぁ一言で言うと。

「ぼっち」


 フッと笑った。

 ぼっちライフが始まっていた。

 孤高の学生ライフが開幕していたのだ。

 そもそも入学早々休学をしたのだ。

 再びクラスに戻った際に俺は浮いていた。

 それはもうフワフワと浮いた存在になっていた。

 腫れ物であった。

 向けられる目線が奇異の眼なのだ。


「まぁいいけどね……」

 

 俺はモブ主席を狙うだけだ。

 

「全ては俺の手の平の上よ。フハハハハ」

  

 ・

 ・

 ・


/フィリス視点/


「いい気味だわ。ロンリーウルフじゃなくて迷える子羊じゃない」

 

 例の転校生。アイツは異常な成績を叩き出し続けているせいで誰も話しかけられなくなってしまったのだ。あまりにも異質すぎて誰も相手にしようとしない。

 場違いなのだ。

 ここに適合していないとも言える。

 妙に女生徒から人気はあるようだけど、いつも寂しそうに1人でウロウロしているのだ。


 演習を早く終わらせ過ぎて、輪から外れて1人棒立ちしている事が多い。

 休み時間に机の上で突っ伏している光景が増えた。

 座学の授業も先生よりも詳しく説明し出すので、遂には先生からの逆質問もなくなった。

 もはや透明人間と変わりがない。


 それ以外は。

 

「わけわかんない本読んでるけど……」

 やけに難しそうな本を真剣に読んでいるのだ。


 読書が友達になっているあの男を見て、いい気味だなと思っている。

 

 それに最近笑った事があった。

 次の授業が教室移動だったにもかかわらず、休み時間に居眠りしていたアイツは誰にも声を掛けられる事がなかったようなのだ。結果、1人教室に取り残された。

 その後、遅刻して来たアイツの顔を見て吹き出しそうになった。


「ざまぁね」


 "よそ者"はとっとと古巣に戻ればいいんだ。


「フハハハハ」


「ゲ」

 居るじゃん。私の嫌いな奴。

 1人で飲み物を吹き出しながら高笑いしている例の天才が居た。

 購買は閉まり、飲み物を買いに来たというのに、アイツと鉢合わせになってしまった。

 アイツと眼が合ったのだ。 

 

 お互い目を合わせたまま、硬直してしまったのだ。


「フィリス・グレイ……さん。だったかな。こんばんわ」

 天内は私の名を呼んだのであった。


「私を知っているのか? 貴様、もしやストーカーか? 訴えたら勝てるな」


「なぜそうなる!?」


「それに破廉恥な視線を感じる。とっとと去ね」


「す、すげぇ性格……してるな……ほぼ初対面の奴に」

 愕然とする天内は額に手を置き、何かを考え始めていた。


「そこをな」

 私はソイツの後ろにある自販機を指差した。


「お、おう」

 天内は横にズレるとアタフタしていた。


「あと汚い。シャツが濡れているぞ。そもそも1人で笑い転げてなにをやってるんだ。

 気持ちの悪い奴だ。お前変質者だったのか。全く予想通りだな。

 天才と持て囃されるには頭のねじが2、3本吹っ飛んでいると再確認したよ。

 これは流布する必要があるな。変人」


「塩……対応」


「シオタイオウ? 訳のわからん事を」

 

 ・

 ・

 ・ 


 という事があったのだ。


「グレイを仲間に入れるのは不可能だっと……

 それは置いといて。

 物資を寄越せ。ジャンクフードを寄越せ。

 三郎ラーメンの冷凍食品を作れ。

 何でも冷凍食品にしろ!

 冷凍食品の専門店を全世界に作るんだ。

 加えて飲食店の三ツ星判定制度を普及させろ。

 世界に食文化、食育の普及に努めろ。

 昨今は昆虫食がいいらしいぞ。

 それとバイオオーツの研究に着手しとけ。

 とりあえず作れ。食で世界を支配しろ。

 食は大事な営みだからな。手始めにグリーンウッド王国から始めろ。

 バイオオーツの作成方法は添付しておく。

 ナンデモ冷凍保存方法の魔術理論も添付しておくぞ。

 ここは飯マズだ。なんとかしろ。早急に! いいな! 

 一週間以内になんとかしろ!

 あと、組織の力を使い、船舶を買収しそこに通信用の基地局を作れ。

 俺専用の人工衛星を打ち上げて欲しい。俺専用の携帯も用意しろ」

 

 出来るのか知らんが、書きたい事を書き殴った後に筆を置いた。

 我が右腕たるカッコウに手紙を書き終えたとこであったのだ。

 半分ネタである。

 カッコウへの無茶ぶりコントである。

 奴は今や時価総額世界第三位の超巨大複合企業TDRの影のトップ……らしい。

 知らんけど。

 

証明終了()


 前世の暗号理論をフル活用し、隠写術(ステガノグラフィー)にて、ここの詳細な住所を書き込んでいおいた。

 

「頼んだぞ。我が相棒」



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