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考査戦⑥ in bloom




 日は沈み、辺りは真っ暗であった。

 キモオタ達がサイリウムを振り回していた。


「あー! よっしゃ! 行くぞ! よっしゃ! 行くぞ! うーはい!」


「「「うーはい!」」」


「うー! はい! うー! はい! えー!? なになに!?」

 コロシアムの中心に立つ1人の少女が聞き耳を立てるポーズを取ると。


「カナみん世界一可愛いよぉぉぉぉぉ!」


「ガチ恋したぁぁぁぁぁぁ!!!」


「愛してるよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」


 クソうるせぇ野郎共がブヒブヒ吠えてた。

 これがお約束っぽいのだ。

 アイドル風の女生徒は禍々しい棘が先端に付いたステッキをマイクのように握りしめている。

 そんな似非マイクを観客席に向かって。 


「命を燃やせよぉ、ぽまえらぁぁぁぁぁ!」

 

「「「うおぉぉぉぉぉぉ!!」」」

 

 熱狂。


 オタク共から湯気が立ち込めていた。

 フリルのドレスを着た地下アイドルみたいな奴が試合前のライブパフォーマンスを披露していたのだ。それに合わせて痛ファン共がオタ芸を披露する。

 

 これから試合なのだ。


 カッコウの相手が相当曲者そうで、俺は内心エールを送っておいた。

 いや、実際曲者だ。

 永遠の17歳。下界の地下アイドル『カナミ ☆ フォーエバー17』さんがカッコウの次の対戦相手。


 この戦いを乗り越えればアイツはベスト32に入着してくる。


 対してカッコウの奴はガタガタと震えていた。

 カッコウに暴言が飛ばされているのだ。

 厄介オタク共が声高らかにカッコウに向かって誹謗中傷を飛ばす。


「カナミ王国の礎になれ! 中二病!! 死ね死ね死ねぇぇぇぇぇ!」


「死ねや! クソボケ! ダサいんだよ! 浮かれてんじゃねーぞ! キモオタ!」

 

「空気読めよ! そこのお前!! カナみんを傷つけたら殺しに行くからな!! お前を殺しに行くからな!」


 殺害予告も飛んでて、ちょっと笑ってしまった。 


 アウェイな空気に包まれるカッコウ。

 カッコウの奴は俺を発見すると、目を見開き目配せしてきた。

 『助けてくれ』そんなニュアンスの目線であった。

 

 そんな顔で俺を見るんじゃあないよ。


「カッコウ……頑張れよ……さて、千秋の奴はっと」

 

 俺は千秋の観戦に向かうため、コロシアムの別ブロックに歩を進めた。

 俺は幻のシックスマンを信じている。

 アイツなら勝てる。


「勝てるはずだ……大丈夫だよな?」

 

 ちょっと不安だな。


 ・

 ・

 ・


「正念場だな」

 虚空に向かって俺は吐息を吹きかけた。


 考査戦は佳境に差し掛かっていた。

 振るいに掛けられ、実力者が出揃い始めた。


 あと一勝で俺はベスト32に入って来る。

 正直、九藤の賭けなどどうでもよい。

 マリアとまつりは乗り気のようだが。


「知った話じゃない。無視しよう」


 俺の次の相手はなんの因果か九藤の側近ゴドウィン。


 あと1勝して早々に退場しよう。

 ゴドウィンをボコボコにして退場しよう。


 ベスト32に入ればモリドールさんの評価も上々だろう。

 それにモリドールさんの疑惑の目も晴れるというものだ。

 なによりメンバー全員ここまで勝ち残っている。

 モリドールさんも最近、めんどくさい拗らせ発言も失墜し始めている。

 

 あと1勝。

 5回戦を勝てばベスト32圏内。

 ここからはメガシュバでも知った顔が出てくる。

 曲者揃いだ。

 この学園でも上位層の連中に当たり始める。

 つまりレアキャラのオンパレード。

 

 風音パーティーも順調に駒を進めている。

 風音の野郎は言わずもがなだが、メインヒロインも強化されている。

 恐るべき成長率だ。流石メインどころである。



 そして俺のパーティーメンバー達。

 ぶっちゃけベスト32に入れず負ける可能性があり少々懸念が増えていた。



 千秋は言わずもがな、勝ち残っていた。

 今まで苦戦などしてなかった。本気のホの字も見せてない。

 アイツは学園屈指だ。ベスト8まで行ってもおかしくない。

 そろそろ目立たぬようにわざと負けて途中で退場しそうだが……

 それでも次の相手も千秋同様に、この学園屈指。


 ゲーマーとしてはどっちが勝つかわからない。

 強キャラ同士、雌雄を決する事になる。


監察官(IG)か」


 俺が転入試験を受ける前に会ったアイツ。

 関西弁のアイツである。一瞬で桜を満開(in bloom)にしたアイツ。


「千秋、負けるかもなぁ~。勝ってもらわなきゃいけないから、発破をかけに行くか」

 

 正直IGはわざと負けそうな気もするし、本気で千秋を潰しに来る可能性もある。


「気まぐれなんだよなぁ」

 

 マリアも順当に駒を進めた。

 相変わらず強打者(スラッガー)であった。

 対戦相手は次々と消し炭になった。

 高火力遠距離の魔法は使用していない。省エネ戦法でも十分通用していた。

 やる気十分であった。

 だが、ここからは相手次第で苦戦を強いられるだろう。

 少なくとも次の相手は苦戦するはずだ。

 マリアの次の相手はメガシュバ:メインヒロイン。

 メインヒロイン同士の戦いになる。

 メガシュバの陰の側面を担当したマリアと陽の側面を担当したシステリッサ。


 ここも正直どうなるかわからない。

 攻撃、弱体化(デバフ)型のマリア。

 耐久、強化(バフ)型のシステリッサ。

 どちらもサポーター型、どちらも遠距離魔法の担い手。

 似ていながらも相反する力を持つ者同士の戦い。


 

 小町の奴は善戦してるが、そろそろキツくなってくる頃合いだ。

 1年でここまで駒を進めてるのは異端らしい。

 快挙レベルのようだ。

 だが、流石に上級生との実力差が顕著になり始めていた。

 そして彼女の相手は間坂イズナ。

 俺が入学当初にボコしたイノリの姉貴。

 あの時点での俺は魔術を使用しなかったが、ファルコンのように彼女をワンパンKOは出来ていない。

 俺からすれば弱い事に変わりないが、小町からすれば強敵かもしれない。

  

 そして漆黒の騎士カッコウ。

 奴はなぜか女生徒のファンクラブが出来始めていた。

 モブ臭全開だったアイツは、なぜか女生徒に人気になり始めていた。

 かなりコアなファンを抱えた強キャラとの対戦を今から行う訳だが……

 


「う~む。俺の計算では千秋以外は確実に勝てるはずだが、正直どうなるんだろう」


 レベルは上がっているはずだ。

 ゲームのようにステータスが見れない以上断言は出来ないが強くなっていると思う。

 しかし、絶対的な確証はない。

 

 そんな事を考えながら、俺は千秋の肩を叩いた。


「よっす」


「あー。傑くん。よっす~。応援しに来てくれたんだ」


「まぁね。まだ時間はあるんだろう?」


「あと小一時間はあるかなぁ。どうしたの?」


「作戦会議をしようと思ってな」


「必要ないさ。次に勝てばいいんだろう。一応傑くんの言ってた通りの成績は残せるよ。あくびが出ちゃうよ」


「次の相手は本気を出さねば負けるぞ」


「まっさか~」

 カラカラと笑う千秋は、信じていなかった。

 生徒会に挑戦する前に強者は居ないと思っているようなのだ。


「マジ」

 俺は真剣な顔になった。


「……マジ?」


「ああ。奴は()()魔法を使う」


「相乗魔法???」


 この世界でも担い手は稀な魔法の名であった。



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