密室と蜂蜜
※ なろうラジオ大賞3の開始時刻よりも前に投稿してしまったため、再投稿しています。
感想を書いてくださった方、評価してくださった方、申し訳ありませんでした。
山小屋に閉じ込められた。
外には凶暴そうな熊。
なぜか瓶詰の蜂蜜が置いてある。
しかも大量に。
どうやら熊はこれを狙っているらしい。
熊は10体以上いる。
絶対に逃げ切れない。
密室に閉じ込められた俺は蜂蜜を前に頭を悩ませる。
これを使って熊を誘導できれば、脱出できるかもしれない。
しかし……本当に上手くいくだろうか?
俺は臆病だ。
勝負ごとになると腰が引ける。
ここぞという時に逃げたくなってしまう。
そんな俺に熊をどうにかするなんて絶対に無理。
ここで奴らをやり過ごすしかない。
幸いにも食料はある。
蜂蜜で飢えをしのげばいいんだ。
俺はそう決意して、山小屋にこもることにした。
数日後。
熊は一向に姿を消さない。
それどころか数が増えている。
さっき窓から外の様子を伺ったら20匹はいるように見えた。
状況はどんどん悪化している。
幸いにも蜂蜜はまだ大量に残っている。
水道からは水も出るので、飢えることはない。
ただ……問題は、はちみつに飽きてしまったこと。
どうしたらこの問題を解決できるか。
俺は山小屋に保管されていた調味料を使って、はちみつの食べ方を工夫した。
かんぱんのはちみつ漬け。
ピクルスのはちみつ和え。
チョコレートwithはちみつ。
ソイソースはちみつ。
皮のベルトの蜂蜜がけ。
ありとあらゆる手段を尽くしたが、はちみつは蜂蜜だった。
どうすれば……。
さらに数日後。
熊の数は倍に増えた。
もう……蜂蜜には耐えられない。
限界だ。
俺は一世一代の大博打に打って出ることにした。
屋根の上に登って蜂蜜の詰まった瓶を遠くへと投げ、熊を誘導するのだ。
その隙に何とか……。
どがああああああああああああああああん!
大きな音がしたかと思うと、小屋の壁が外側に倒れた。
「え? え?」
俺が混乱している間に、次々と倒れて行く壁。
あっという間に柱だけになる。
「さぁ……みなさん、お待たせしました。
人間のはちみつ詰めの出来上がりですよ!」
熊がしゃべった。
両手にナイフとフォークを持っている。
「ようやくか!」
「待ちに待ったぞ!」
「おいしそう……じゅるり」
他の熊たちも集まって来る。
これはまさか……。
「すまないね、人間君。
我々はずっと蜂蜜ばかり食べて飽きてしまってね。
たまには変わったものが食べたくなったんだ。
悪いけど、君は本日のディナーになってもらうよ」
舌なめずりした熊が言う。
俺は心底、はちみつが嫌いになった。
もう二度と食べてやるもんか。