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塔に住む兄妹

 生き物の気配が感じられない荒野にぽつねんと一つの時計塔が建っている。この荒野にはかつて巨大な街があり、宇宙からも船が乗り入れる大きな港があったと言うが、今では他星との交流は途絶え街も移転し、時計塔守以外聞く者のいない時報が虚しく鳴り響くばかりである。

 荒野と同化する石の壁は無機質で冷たい印象を与え、鐘を鳴らす時ですらどこか物静かに見える時計塔だが、その内部では常に空気を揺らすような重低音を響かせ歯車達が忙しく動き続けている。

 トゥールは額に浮かんだ汗が揺れるのを感じながら、時計の針を留める数え切れないほど多くのネジを1つ1つ確認していた。錆びているものがあれば新しいものと交換し、緩んでいるものがあれば背丈ほどもある工具を使って強く締め直した。時計塔の管理手順は複雑多岐にわたり、その工程の1つとして失敗の許されないものだが、トゥールは幼い頃よりその手順を徹底的に教え込まれていて、今では数千を超える手順を全て暗記し完璧にこなせるようになっていた。

 最後の作業が終了し、一部止めてあった歯車を作動させると、時計塔は六時を指してゴーンと大きな音を鳴らした。

「スープが煮えたよ」

 下の階からビヨンの声がした。食堂に降りると、二人で使うにはやや大きいテーブルにパンやベーコン、チーズが入ったカゴが1つ、小さな木のお椀と陶器の皿が2つずつ並んでいた。

 トゥールはビヨンの向かいに座って「いただきます」と言うと、籠に添えられたナイフを使ってパンとベーコンとチーズを薄く切り、サンドイッチにして自分とビヨンの皿に取り分けた。

「最近食卓が質素でごめんね」

 ビヨンが言った。

「キャラバンが近いんだ。仕方ないよ。

 僕は覚えていないけど、母さんが生きてた頃はキャラバンがつく前に食料を切らしちゃったこともあるって師匠が言ってた」

 トゥールはそう答えて、薄いスープにパンを浸した。

 時計塔の近くにはキャラバンのルートが通っていて、約2ヶ月に1度の頻度で異なるキャラバンが近くを通過する。ビヨンはその度にキャラバンに同行させてもらい、2週間キャラバンと共に街に滞在して時計塔で生きるのに必要な食料と生活必需品、その他諸々を買い揃え、キャラバンが引き返すのと一緒に時計塔に戻ってくる。

 そのため、時計塔ではキャラバンが近づく時期になるとたまに食料が不足する。

 街で買う食料の他に畑で自給自足している分もあるため、今まで餓死は免れてきたが、それでもかなり辛い目に合うことは何度かあった。

「今度来るキャラバンはアバリク達だ。あいつらなら少しくらい食べ物を分けてくれるだろうから、ビヨンが街に行っている間に僕が飢え死にするなんてことはないよ。このチーズを賭けてもいい」

 そう言ってトゥールはパンからチーズを取り出して食べてみせた。

「食べちゃ賭けられないじゃない」

「問題ないね。なぜならこの勝負は絶対に僕の勝ちだからだ」

 トゥールはそう言って戯けた。

最後まで書き切れるかわかりませんが、ちょっとずつ書いていこうと思います。

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